複雑・ファジー小説

Re: 心を鬼にして ( No.8 )
日時: 2016/06/15 21:47
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

第2話「冷静沈着?青鬼誕生」4

「わ、なにこれ・・・・・・」

 僕は自分の格好を眺めて呟く。
 龍斗が来ている学ラン風の服の青バージョンに、腰には鎖でつながった二丁の拳銃が提げられている。
 なんだ、これは・・・・・・?しかもなんか、額からは青い角が一本生えてるし。

「おー!氷空の鬼が覚醒したー!」

 地面にへたりこんだままの龍斗が目を輝かせながら言った。
 鬼の覚醒?よく分からない。でも、友達を守るためなら!

「これが鬼の覚醒というやつか・・・・・・まぁいい。やれ!ダゴビキ!」

 ダゴビキと呼ばれた謎生物は、カニ歩きで僕まで迫ってくる。
 僕は咄嗟に横に飛んだ。

「うおお!?」

 どうやら身体能力も上がっているらしく、かなりの速度で飛んでしまう。
 慌てて地面に足を付けると、砂埃を巻き上げてしばらく滑る。
 摩擦で足の裏が熱くなるかと思ったが、不思議とそんな感触はない。
 その時、目の前にはすでにハサミが迫ってきていた。

「わ!?」

 僕はそれを軽く横に飛びかわし、かわしたときの回転に合わせて回し蹴りを放つ。
 すると、足は謎生物の甲羅にめり込み、数瞬後謎生物はぶっ飛んだ。
 それを見て僕は呆然とする。

「何これ・・・・・・」
「今すぐ必殺技を使うアオ!」

 その時声がする。見れば、小さな青鬼が僕に向かって叫んでいた。

「はぁ!?必殺技って・・・・・・」
「拳銃を取り出して、化け物への怒りとかをこめて撃てば良いアオ!」

 今はもう、リアリティを求めるべきではないのだろう。
 僕は拳銃を構え、怒りを込める。
 親友を傷つけた罪・・・・・・償ってもらう!

「はぁぁぁぁあああッ!」

 僕は叫び、引き金を引いた。
 拳銃から飛び出した二つの青い水の塊は、一瞬で氷の刃に変わり、凄まじい速度を持ち化け物の体に吸い込まれていく。
 やがてそれは突き刺さり、一瞬で化け物の体を凍らせた。

「これで、終わりだ」

 僕が拳銃をしまうのと同時に、化け物の体は氷ごと崩れた。
 僕はそれを見届けると、その場にへたり込んだ。
 それと同時に、さっきまで暗かった空が明るくなっていく。

「すげーじゃん氷空!かっこよかったぞ!」

 興奮した様子の龍斗が、目を輝かせながらそう言ってくる。
 僕はそれを苦笑いで返し、フゥ、と息をつく。
 そういえば、この服装ってどうやって戻るんだろう?

「なぁ、龍斗。この服装ってどうやったら戻るの?」
「え?俺も知らん」

 当然のことと言わんばかりに彼は言う。
 知らんって・・・・・・前回はどうやって戻ったんだよ。

「これだからりゅーとは・・・・・・まぁ前回はオイラが解いてやったからな。いいか?「鬼は外、服は内」って唱えれば戻るぞ」
「お、鬼は外服は内・・・・・・?」

 僕が赤鬼の言葉を復唱すると、変身は解け元に戻った。
 それを見て龍斗も真似して言って、変身が解けてまた騒いでいる。
 僕はそれを横目で流しつつ、鞄を持った。

「あ、そうだ。氷空。折角二人で鬼になったんだから、この際だから二人でサッカー。やろうぜ?」

 突然、龍斗がそう言ってくる。
 僕はそれに一瞬、「いいよ」と言いかけたが、それが許されないことを思い出す。
 まだ。まだ、ダメなんだ・・・・・・。

「・・・・・・やめておくよ」
「んな!?なんでだよ!俺たち鬼仲間じゃねえか!」
「じゃあその、鬼?もやめておく。一人で、頑張って」

 僕はできるだけ感情を込めずに言っておき、鞄を持ち、その場を立ち去る。
 胸の中に、重たい感情を抱きながら。