複雑・ファジー小説

Re: 心を鬼にして ( No.13 )
日時: 2016/07/04 21:31
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

第4話「青鬼の復帰!始動する期末テスト」1

「あっはははは!カッコつけて2回も出動して、どっちもダメでやんの!」

 腹を抱えて笑うキモンに、クドツのこめかみの辺りからブチッという音が聞こえた。

「今回は計算が狂っただけだ!次こそは・・・・・・」
「次こ、そ、は?おいおい。人に偉そうに言っといて、自分には次があるとちゃっかり思っちゃってんのかよ!」

 キモンはさらにゲラゲラと笑うと、真顔になり、自分の首に自身の人差し指を当て、軽く横に弾いた。

「俺等はなぁ?あくまで、桃太郎様の部下でしかねぇのよ。分かるかな?」
「・・・・・・」
「あくまで報酬が貰えるから一緒にいるだけ。役に立たなきゃすぐに、くびにされちまう。今はジーケが別の所で活動してるから、まだ多めに見てもらえてるだけなのかもしれねぇ。でも、もしアイツが帰ってきたら、失敗続きの俺等なんざぁ、すぐにお払い箱だ」

 ジーケ、という言葉に、クドツの眉はピクリと動く。
 それを見たキモンはニヤリと笑い、「嫌だよなぁ?」と言って、ククッと喉を鳴らした。

「んじゃ、失敗続きのクドツ先輩は休んでてくださいよ。今回は、俺が行きますから」

 ソファから立ち上がったキモンはそう言うと、スタスタとドアのところまで歩いて行った。
 クドツはその中で、俯いたまま微動だにしなかった。

−−−

「今日からサッカー部で一緒にプレイすることになりました。蒼井 氷空です。サッカー歴は小4から中3までですが、最近ちゃんとプレイしていませんでしたので、足を引っ張ってしまうこともあるかもしれませんが、その時は、厳しく指導してやってください。よろしくお願いします」

 長ったらしい挨拶を終えた氷空は、そう言ってぺこりと頭を下げた。
 それを見たサッカー部の皆は、パチパチと拍手をする。もちろん、俺も。

「じゃあ新入部員も増えたことだし、これから県大会に向けてもっと厳しくしていくからな。みんな覚悟してろよ?」

 監督はそう言って、ニカッと無邪気な笑みを浮かべた。
 ついに氷空とサッカーができるんだ!と、俺の体は喜びに震えた。
 監督からその他諸々の指示があり、ついに練習は始まった。

 氷空は、正直に言えば本当に引退してから自主練習以外まともなプレイをしていなかったのかと思うほどに上手かった。
 1年のディフェンス陣をいとも簡単に抜き去り、シュートの威力も鋭さも、中3の頃から衰えてはいなかった。
 イケメンで勉強もできて、しかもサッカーもできるなんて、と最初は主に1年が嫉妬の念を込めた視線を向けていた。
 しかし、氷空は気配りもできて、他の1年生たちにもしっかりと、それも分かりやすいアドバイスなんかもしていて、次第にその嫉妬などは薄くなっていた。

「いやぁ、氷空はすげぇな。マジ完璧」

 練習が終わって、グランド整備をしながら俺はなんとなく氷空に話しかけてみた。
 氷空は恥ずかしそうにはにかんだ。

「そんなことないさ。ただ、練習とかを頑張ってただけ」
「でもさぁ、その辺の1年とかよりも断然上手いもん。これは、今の3年が引退したらレギュラー入りもできるんじゃね?」
「おいおい。俺を忘れられたら困るぞ」

 その時、後頭部をバシンと叩かれた。
 見ると、健二がやってやったぜみたいな笑顔を浮かべ、そこにいた。

「何すんだよ」
「お前らがなんか面白そーなこと話してるから来てみれば、その辺の1年って俺も含まれるんだろ?参っちゃうね〜。入ったばかりの新人君に負けてるなんて言われると」
「でも、事実だし」
「ストレートに言うなぁ」

 ははは、と苦笑する健二。
 でも、ハッキリ言えば事実だ。氷空は、健二なんかよりもずっと上手いしな。
 その時、ちょんちょんと肩をつつかれた。見ると、氷空が笑顔を浮かべていた。

「龍斗さぁ、サッカーも良いけど、大事なこと、忘れてないよね?」
「ん?何がだ?」
「そりゃ最近忙しいけどさぁ・・・・・・

 ・・・・・・明後日、期末テストだけど、勉強してるよね?」