複雑・ファジー小説

Re: 心を鬼にして ( No.16 )
日時: 2016/07/13 20:55
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)
参照: http://naop.jp/mondai.html

上手く貼れているかは分かりませんが、今回の話で出てくる問題は僕が自分で考えたものではなく↑のURLのサイトから頂きました
龍斗君が答えられなかった問題の答えなども、調べれば出てくると思います

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第4話「青鬼の復帰!始動する期末テスト」4

「おっしゃぁ!行くぜ!」

 軽くその場でジャンプし、俺はまっすぐ目の前にいるダゴビキの顔を睨みつけた。
 フードを着た男はニヤリと笑い、俺を見る。

「さぁ、テストの時間だ」

 パチンと指を鳴らした瞬間、ダゴビキが動き出す。
 突然紙から文字が浮き出し、俺に迫ってくる。

問.(x+1)(x+2)(x+3)(x+4)−3を因数分解しなさい。

「はぁ!?分かんねぇよ!つか、これ俺が間違えた問題じゃ・・・・・・」

 俺がそう呟いた瞬間、文字が迫ってきて爆発した。
 爆風で俺の体は吹っ飛び、近くの塀に体をぶつけた。

「いってぇ・・・・・・ッ!」
「ホラホラ!悶えている暇なんて無いぞ!」

 顔を上げると、2問同時に問題が来ていた。

問.ab(a−b)+bc(b−c)+ca(c−a)を因数分解しなさい。
問.x4+2x2+9を因数分解しなさい。

「な!?分かんねぇ分かんねぇ!分かんねぇよ!」

 俺は目を瞑り、咄嗟に大きく跳んだ。
 家よりも高く跳び、やったかと思い下を見た。
 そこには、二つの問題が迫ってきていた。
 それと同時に爆発し、俺の体は吹っ飛び、一軒の家の屋根の上に落下する。

「はっははは!情けないなぁ!それでも鬼の覚醒者かよ!ふははっ!」

 嘲るように笑いながら、フードの男・・・・・・いや、今はフードを取っていて、フードではなく金髪の男が、俺の方を見上げて言っていた。
 俺は体の痛みに立ち上がることができず、金髪の男を睨むことしかできなかった。

「うるせぇ!こんな公式なんか、どうせ将来使わねぇんだ!」
「と言っても、今は使ってるじゃないか。言い訳なら、もっとマシなものを考えればいいのに」
「ぐッ・・・・・・ッ!」

 反論できない俺は歯ぎしりをした。
 それを見た金髪の男ははっはっはと高笑いをした。

「さぁ!ダゴビキ!トドメをさせ!」

 男の声と共に、迫ってくる問題。

問.x3+y3+z3−3xyzを因数分解しなさい。

 俺はフラフラと立ち上がり、問題を睨み付ける。

「分からねぇって、言ってんだろ!」

 思い切り叫び、刀を構えたその時だった。

「(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)ッ!」

 聞き覚えのある声が聴こえた。
 それと同時に、問題の文字がはじけ飛ぶ。
 声がした方を見ると、拳銃を肩に乗せた氷空があきれ顔をしていた。

「氷空ッ!」
「一緒に勉強した問題集に載っていた問題なのにさぁ。真面目にやってなさすぎでしょ。ま、龍斗らしいけど」

 そう言ってニッと笑う氷空。
 それを見た金髪の男は、「な・・・・・・」と声を漏らした。

「なんで青鬼の方まで来るんだッ!テストっていうのは一人でするもので、二人で来るのは反則だろ!」
「反則・・・・・・ねぇ・・・・・・?」

 トントンと2、3度肩を拳銃で叩いた氷空はふぅーと息をつき、

「確かにそうかもしれないけど、今はテストじゃないじゃん?」

 目の下に指を当て、舌を出した。

「ぐ・・・・・・ッ!」
「ホラ、もっと問題出してみなよ。言っとくけど、僕同じテスト受けて100点だから」

 指で拳銃を回し、銃口をダゴビキに向ける。
 ダゴビキと男は「ぐッ・・・・・・」と黙った。

「じゃあ僕からも問題。円周率を最後まで言え」
「は!?えっと、3、1429・・・・・・」
「今だよ、龍斗」

 氷空の言葉に俺は頷き、刀に炎を纏わせ一気に駆けた。
 そして跳び、刀を振りかぶる。

「答えは俺らも・・・・・・分からねぇよ!」

 ザシュッと小気味よい音を立てて、紙は切れ、炎で徐々に燃えていった。
 俺はそれを眺めながら、その場にへたれこんだ。
 空が紺色から夕焼け色になった時、目の前に氷空が現れる。

「全く、今日は僕がたまたま間に合ったから良かったようなものだけど、次からはあれくらい答えられるようにならないと」
「うぅ・・・・・・」

 呆れた様子で言う氷空に、俺は目を逸らす。
 しかし、「でも」と続くような声が聴こえた。

「僕知ってるよ。龍斗が僕が寝ちゃった後でも、頑張って勉強してたの」
「え?なんで知ってるんだよ」
「たまたまちょっと目が覚めたんだよ。そしたら、お前が頑張って問題集やってた」

 氷空はそう言ってクスッと笑った。

「今回はダメでも、今から頑張れば、次からはきっと良い点数取れるって!」
「そう・・・・・・かな?」
「あぁ!だから、帰ったら勉強な」

 笑顔で言われた言葉に、俺はピシリと固まった。

「えっと、この後はピアノのお稽古が・・・・・・」
「お前ピアノ弾けないだろ。よーし、ついでに教えてやるよ」
「サッカーの練習が・・・・・・」
「今日散々やっただろ?さっ、お勉強しような?」
「いやだああああああああああああああッ!」

 俺の絶叫は、夕焼けに吸い込まれていった。