複雑・ファジー小説

Re: 心を鬼にして ( No.23 )
日時: 2016/07/27 11:20
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

第6話「魔の修了式!赤鬼、新しい力!」3

 表彰式の間、俺はただボーッとステージを眺めていた。
 出席番号順で、その番号が苗字のあいうえお順なので、俺は前から二番目だ(ちなみに一番は氷空)。
 しかし、退屈だな・・・・・・。俺はそう思ってあくびをした。
 その時、サッカー部の3年生が出てきた。

「あ、先輩だ・・・・・・」

 緑川先輩は、いつものように凛とした態度で、キリッと表彰状を受け取っていた。
 やっぱりカッコいいなぁ。俺もいつか、先輩みたいな、カッコいいサッカー選手に・・・・・・。
 そう思っていた時、突然、体育館の扉が吹き飛ぶ。
 見ると、赤い髪の男がそこには立っていた。

「キラキラネームッ!」
「龍斗。流石にこのネタ引きずるの止めよう。アレは、クドツ」

 氷空の冷めたツッコミを受けつつ、俺はクドツを睨んだ。
 クドツは俺たちには目もくれず、真っ直ぐ歩いていく。
 そしてステージに立つと、生徒全員を見渡し始める。

「ちょっとそこの貴方!何やっているんですか!」

 その時、眼鏡をかけた少年がクドツに何か怒鳴り始める。
 その少年は、俺に説教をしてきた、松木とかいう少年だった。

「あ!アイツ・・・・・・ッ!」
「貴方のせいで、式は台無しです!それに、貴方ここの教師でもないですよね!扉まで吹き飛ばして、一体何を・・・・・・ッ!」

 彼がそこまで言った時、突然クドツは彼の口に何かを入れた。
 何をしたのかと思った時、突然松木の体がビクンッと痙攣した。
 数瞬後、突然彼の胸元から何か飛び出した。それを見た瞬間、俺の目は見開く。

「鬼・・・・・・?」

 よく見ると、鬼の体は真っ黒で、徐々に膨張していた。
 やがてソイツの目はカッと開くと、一気に巨大化した。

「なん・・・・・・?アイツ、鬼がいたのか?」
「少し違うな」

 クドツはステージから飛び降りると、俺たちの前に立つ。
 しばらく硬直していた生徒達だったが、突然時間が動き出したかのように、皆逃げ回り始める。
 体育館の中を、扉に向かって、一心不乱に走る。その時、クドツが指をパチンと鳴らした。
 すると、全員の動きが止まる。窓から見える空は紺色に染まっていた。

「このキビ団子を人に食べさせれば、その心の中にある、ちょっとした希望や夢を全て一つの信念に変え、鬼にすることができる」
「さらに、桃太郎が犬や猿にあげたように、お供にできるって、わけ?」

 氷空の言葉に、クドツは頷く。
 俺たちはすぐに手の甲の紋様に力を込め変身した。

「一気に行くぞ!氷空!」
「待って!もしもここで戦ったら、他の皆に被害が・・・・・・」
「あぁ、そっか・・・・・・」

 氷空の言葉に納得すると、俺たちはすぐに踵を返し、扉が吹き飛んだままの出入り口から外に出て、グラウンドに出る。
 振り返ると、黒い鬼も来ている。
 俺は刀を構えると、氷空に視線を向けた。一気に決めてやる!

「どぉりゃああああああああああああッ!」

 俺は刀に炎をまとわせ、鬼に切りかかった。