複雑・ファジー小説

Re: 心を鬼にして ( No.25 )
日時: 2016/08/03 21:01
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

第7話「鬼と人の絆?青鬼、新しい力!」

「ふむ・・・・・・」

 僕は顎に手を当てつつ、テーブルに置かれた赤い刀を眺める。
 今まで普通の刀だったのに、今の刀は刃が深紅に染まり、よく見ると、赤の濃淡や、オレンジや黄色を少しずつ使って炎の模様を細かく彩られていた。

「なぁー。それが何なのか分かるか〜?」
「さぁ・・・・・・分からないな。というか、ちゃんとした機械があるわけじゃないのに、細かいこととかが分かるわけないだろ?」
「氷空でもダメかぁ〜・・・・・・」

 龍斗はそう言って肩を落とす。
 ちなみに、龍斗の格好は鬼の姿だ。刀を出すためだけに変身してもらった。
 僕は刀に手を伸ばし、刃を指でなぞってみた。

「おいおい。指とか切るなよ〜?お前たまに鈍くさいんだから」
「酷い言い方だなぁ。注意していればそんなことあるわけ・・・・・・」

 龍斗に返事していた時、指を切ってしまった。
 割と傷は浅いが、血が出てくる。

「あーもう、何やってるんだよ!」

 龍斗は慌てて絆創膏を持ってくる。僕はそれを貼った。
 少し絆創膏が赤く染まったが、その後は特に何も無い。

「そらはドジだアオ」

 その時、背後から声がしたので振り返ると、手乗りサイズの青鬼が宙を漂いながら僕を見ていた。
 僕はつい、ムッとしてしまう。

「なんだよ・・・・・・?いつも餌の時間以外はロクに話さないのに、妙に僕のこと分かったような口叩くじゃん」
「別に、今の状況見れば誰でもそう思うアオ」
「ぐ・・・・・・ッ!」

 思えば、生まれて初めて論破なんてされたかもしれない。
 僕達とのやり取りを龍斗とアカトが苦笑いしながら見ている。
 その時、どこからか階段を上がってくる音が聴こえた。

「母さんか!?なんで・・・・・・」
「ちょっ、龍斗!早く変身解いて!僕はアカトと、えっと・・・・・・とにかくこいつら隠すから!」

 僕は龍斗に指示を出しつつ、速やかにアカトと青鬼を回収し、背中の後ろに隠す。
 龍斗は慌てて「鬼は外、服は内」と呟いた。

「龍斗〜?声聴こえたけど、誰か来てるの〜?」

 それとほぼ同時に、龍斗の母親が入ってくる。
 綺麗な茶髪の長髪に、整った顔立ち。
 僕の記憶ではそこそこの年齢のハズだが、それを感じさせない若さ。
 ふむ、相変わらず龍斗の母親は、美人だ。

「あ・・・・・・お邪魔してます〜」
「あら〜!氷空君お久しぶり〜!元気にしてた?」
「えぇ。おかげさまで」
「母さん!勝手に人の部屋入ってくるなよ〜!」

 龍斗の言葉に、龍斗の母は「あらあら」と、おばさんみたいな声を出した。
 いや、年齢的におばさんではあるのだろうが、見た目が若すぎてそれを忘れてしまうのだ。

「それじゃあ、少し寝てからまた出るから」
「はいはい。分かったよ」

 龍斗母が出ていくのと同時に、龍斗はハァ〜とため息をついた。
 僕はすぐにアカトと青鬼を放す。

「全く、いつも帰ってこねぇくせに、なんでこういう時だけは帰ってくんだよ・・・・・・」
「それが母親ってものじゃない?」

 僕の言葉に、龍斗は「たしかになぁ」と同調した。

「寂しい時は帰ってこねぇくせに・・・・・・」

 その時、僕にとってかなり聞き捨てならない言葉が聴こえた。
 寂しい時?龍斗に、寂しい時なんてものがあるのか?あの龍斗だぞ?

「へぇ〜?龍斗にも寂しい時なんてものがあるんだ?」
「んなッ!?ちが・・・・・・ッ!さっきのは・・・・・・ッ!」
「それじゃあ、刀の調査を続けようか。ホラ、変身して」
「んがぁッ!」

 龍斗の奇妙な声に、僕は笑い声をあげてしまった。
 その時、妙に視線を感じた。振り返ると、青鬼が僕のことを見ていた。

「ん?何か用?」
「え?・・・・・・いや、なんでもない」

 青鬼はそう言うと目を逸らした。

「・・・・・・変な奴だな」

 僕はポツリと呟いた。