複雑・ファジー小説

Re: 心を鬼にして ( No.28 )
日時: 2016/08/06 18:02
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

第7話「鬼と人の絆?青鬼、新しい力!」4

「ガハァッ!」

 岩に背中を打ち付け、僕の口からは息が漏れた。
 当たり前とでも言うべきか、僕はあの鬼に敵うはずもなく、それでもなお立ち向かおうとしている。
 そんな僕は馬鹿か?あぁ、馬鹿だ。勝てるわけがない敵に、本気でぶつかるなんて、馬鹿で阿呆でしかない。
 でも、仕方がないだろう?逃げることもできないし、戦うという選択肢しかないのだから。
 僕はなんとか立ち上がり、拳銃を向ける。

「無駄無駄無駄ァッ!」

 しかし、なんとか僕が撃った銃弾は弾かれ、顔面をぶん殴られた。
 僕の体は吹き飛ばされ、砂に塗れる。

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・うぐッ・・・・・・」

 それでもまた、なんとか立ち上がる。
 顔を上げると、黒い鬼が金棒を担いで近づいてきていた。

「おォ・・・・・・らァッ!」

 僕はなんとか突進し、体を鬼にぶつける。簡単に言えば、体当たりだ。
 もちろん弾き飛ばされ、さらに砂浜を転がった。
 顔を上げると、そこに鬼の金棒が飛んできていた。
 顔面を殴られ、ついには海に突っ込んでしまった。

「さっさと諦めて倒されてくれりゃいいのによぉ」
「そうしたら・・・・・・お前は僕の鬼を、殺すんだろ!?」
「まぁ、そうだな」

 ニヤリと笑って言うキモンに、僕はすぐに立ち上がり拳銃を構えた。
 しかし、その拳銃は金棒で弾かれ、砂浜を転がる。
 慌てて引き寄せると、そこにはヒビが入った拳銃があった。

「ッ・・・・・・クソッ・・・・・・」

 僕は唇を噛みしめる。
 ただでさえ絶望的な状況だったのに、これじゃあもう・・・・・・勝てないじゃないか・・・・・・。
 目の前には、巨大な、漆黒の鬼。拳銃は、二丁の内一丁はヒビが入った上に、引き金がいかれて銃弾がでない。

「こんなの・・・・・・勝てるわけ・・・・・・」

 弱音を吐きそうになった時だった。
 突然目の前に、小さな影が躍り出る。
 僕は咄嗟に顔を上げた。青鬼だった。

「なんで・・・・・・お前が・・・・・・ッ!?」
「そらには絶対、指一本触れさせない!」

 青鬼の言葉に、黒い鬼は一度金棒を止めた。
 しかし、すぐに動き出し、青鬼を殴ってしまった。
 砂浜をバウンドする青鬼に、僕は慌てて駆け寄った。

「おいっ!何やってんだよ!龍斗は・・・・・・ッ!」
「りゅーと達は、すぐ、来る・・・・・・でもッ!そらは下手したら、もうすぐ倒されちゃうじゃないか!」

 青鬼の言葉に、僕の胸は痛んだ。
 僕が弱いせいで・・・・・・彼に無理をさせてしまった・・・・・・。
 僕に、龍斗みたいな力がないから・・・・・・ッ!

「ごめん・・・・・・ッ!弱くて・・・・・・ごめんなさい・・・・・・ッ!」

 僕は青鬼の小さな体を抱きしめた。
 その時、僕と青鬼の体の間に青く光る。

「これは・・・・・・まさか!」

 その光は僕の拳銃を包み込み、やがてその拳銃は、青いものに変わる。
 僕は一度青鬼を砂浜に寝かせると、黒い鬼に向き直る。

「まさか・・・・・・新しい力か・・・・・・ッ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 僕は叫び、拳銃を向けた。
 引き金を引くと、銃口からは青い光が放たれ、やがてそれは空色の龍へと変わる。
 二匹の龍が黒い鬼を包み込み、やがて大きな氷の塊が出来上がる。
 僕が拳銃をしまうのとほとんど同時に、それは砕け散った。

「氷空ッ!」

 その時、背後から声がした。
 振り返ると、龍斗とアカトがこちらに向かって走って来ていた。
 僕は慌てて「鬼は外服は内」と呟き、変身を解くと、青鬼を抱き上げて、龍斗の方に向かった。

「氷空!大丈夫か?」
「あぁ。僕も、多分コイツも大丈夫かな」

 僕はそう言いつつ、青鬼の体を目の高さまで持ち上げて、龍斗に見せる。
 その時、青鬼はハッと顔を上げた。

「あれ・・・・・・ここは・・・・・・?」
「あ、目覚めたんだ。おはよう」

 僕の言葉に青鬼は僕を見て、キョトンとした。
 その後、僕は自転車を引きながら、頭に青鬼を乗せて、帰路につく。

「でもさー、あの黒い鬼倒せたってことは、お前の新しい力手に入れたのか?」
「あぁ、うん。こいつのおかげでな」

 龍斗の言葉に、僕は頭の上に乗せた青鬼を指さしながら言った。
 その時、ふと思う。結局、コイツの名前聞いてないな。

「そういえば、結局お前の名前、なんなんだ?」

 僕が聞くと、青鬼はしばらく黙った後で、「・・・・・・ヤ」と呟くように言った。

「え?なんて?」
「アオヤだよ!何度も言わせるな!」
「いやー。だって声小さかったし〜」

 僕が茶化すように言ってやると、アオヤは照れたように僕の頭をポカスカと殴る。
 それを見た龍斗とアカトは笑う。
 アオヤはそれが恥ずかしかったらしく、すぐに僕の濡れた髪の毛を掴んで黙った。
 僕はそれが面白かったので、彼の体を軽くつついてやった。