複雑・ファジー小説

Re: 心を鬼にして ( No.29 )
日時: 2016/08/07 15:43
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

第8話「夏だ!海だ!合宿だ!サッカー部地獄の合宿開始!」1

「ありがとうございましたー」

 いつものようにグラウンドに挨拶をすると、俺たちはすぐに片付けとグラウンド整備に分かれる。
 基本それは週交代で、今週は、俺は片付けだった。
 氷空も俺と仲が良いからと同じグループに入れられ、片付けだ。
 サッカーボールが入ったカゴを押して部室に持っていこうと思った時、突然監督がやって来た。

「あー。ストップストップ。ちゅうだーん」
「そっか。いつの間にかそんな時期か」

 監督の姿を見た瞬間、先輩たちはそう言って肩を落とした。
 一年生は全員首を傾げる。当然、俺もその一人。
 監督に招集されて、俺たちは監督を囲む形で円を作った。
 すると、なにやらプリントが配られ始める。
 そのプリントを見ると、俺は書いてあることをそのまま口に出して読んだ。

「合宿……?」

−−−

 三日後の夜。合宿の準備をしている僕を、アオヤが不思議そうに見ていた。

「何やってるんだ?そら」
「あぁ。明日から四泊五日でサッカー部の合宿があるんだよ」

 僕はそう言いつつ、三日前に配られた合宿の予定や持ち物などが書かれたプリントをアオヤの前に置いた。
 彼はプリントをしばらく見続けると、首を傾げた。

「監督の親戚が、隣の県の海の近くで旅館やってて、毎年そこで合宿やるのが、このサッカー部の恒例なんだって」
「合宿って何だ?」

 アオヤの言葉に、僕は「まずそこからかよ」と苦笑してしまった。
 とはいえ、すぐにアオヤに向き直り、合宿というものについて説明をしてやる。

「合宿っていうのは、例えば僕達なら、サッカーの練習という目的のために同じ場所に複数の人が集まり、寝泊りをともにして、力を高め合うものだよ。あ、目的はサッカーの練習とかだけじゃなくて、そこらへんは人によって変わるものだよ」
「つまり、一つの目的のために一ヶ所に人が集まって、特訓や研修をして親睦を深めるってことか?」

 アオヤの分かりやすい説明に、僕はつい目を丸くしてしまった。
 海での一件から、僕と彼との距離は縮まった方だとは思っていたが、それでもまだまだ知らないことだらけなのかもしれない。
 恐らく彼は、僕が思っているより頭が良い。
 僕は忘れ物がないかの確認を終えると、鞄のチャックを閉めた。

「よしっ。それじゃあ今日はもう寝ようかな。明日は朝早いし」
「そうだな。あっ、電気消しとくよ」
「おー。気が利くね。ありがとう」

 僕がベッドに入るのを確認すると、アオヤは電気を消して、しばらくして僕のベッドに入ってくる。
 僕は明日からの合宿に胸をはせつつ、目を瞑った。