複雑・ファジー小説

Re: 心を鬼にして ( No.33 )
日時: 2016/08/10 15:44
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

第9話「正体がばれちゃう!?鬼の決断!」1

「さぁ、今日は合宿最終日。明日はもう午前しか練習はできないからな!今日一日、頑張ろう!」

 緑川先輩の言葉に、俺たちは「おー」と賛同する。
 とはいえ、緑川先輩の体力がすごいだけで、俺たちはほぼ全員が疲労困憊と言った様子で、ほとんど気怠そうな声だった。
 それに先輩は嘆息し、手をパンパンと強く叩く。

「ホラ、お前等そんなんじゃ全国優勝できないぞ〜。俺たちは、これから全国の猛者を相手にするんだからな!それに、大阪の暑さはこんなもんじゃねぇぞ〜」
「えっ。今年の全国大会って大阪でやるんですか?」

 二年生の誰かが聞くと、緑川先輩は「あぁ」と大きく頷いた。
 話を聞いてみると、全国大会の場所は毎年変わるらしく、去年は北海道だったらしい。

「沖縄とかに比べたら楽だろうけどな〜。さっ、話は終わり!練習始めるぞ〜」

 先輩の言葉に、俺たちはダッシュを始めた。

−−−

「今回も、ダメだったのか……」

 クドツの一言に、キモンは肩を震わせる。

「それどころか、新しい力の覚醒に手助けをしたとか?」
「それは……ッ!」
「まぁ、あの鬼ガキどもの動きなんて、想像もできないからな」

 クドツがそこまで言った時、突然、部屋の扉が開く。
 そこには、彼らの主君である、桃太郎が立っていた。二人は慌てて跪く。

「も、桃太郎様ッ!?なぜ、ここに……ッ!まだ休まなければ……」
「お前達のほぼ毎日続く戯言の会話がうるさくて、眠れないんだよ……」

 桃太郎の言葉に、二人は慌てて口に手を当てる。
 それを見た桃太郎は窓の所まで歩いていき、小さく呟くように言った。

「雲は……良いよなぁ」

 ゾワリ、と、跪く二人の背筋に寒気が走る。
 桃太郎は静かに続けた。

「自分の力だけで、何も考えずに、ただのんびりと動くことができる。俺だって本当は、自分の力で鬼を倒しに行きたいっていうのによぉ……」
「あの、桃太郎様……」
「なぁ?俺の力が回復するまでに鬼を退治してくれるって言ったのは、一体、誰だったかなぁ?」

 ギョロリと目玉だけを動かすように自分たちを見る桃太郎の姿に、二人の背中に悪寒が走った。
 そしてすぐに、「必ずや」と言うと、クドツは立ち上がり、ドアの方に向かった。

「まぁ……お前らが頑張る必要性はもう、ないんだけどな」

 その時、ボソッと聴こえた呟きに、キモンは顔を上げた。
 そして、桃太郎のニヤリと笑う顔に、彼は顔を青ざめさせた。