複雑・ファジー小説
- Re: 心を鬼にして ( No.37 )
- 日時: 2016/10/28 20:48
- 名前: 凜太郎 (ID: uzSa1/Mq)
第10話「先輩の信念!緑鬼誕生」
「ぐぬぬぬ……」
問題集と睨めっこすること、実に50分。
ダメだ……数式が全く理解できない。なぜ皆はこれが解けるというのか……。
そこまで考えていた時、机の上に置いていたスマホがバイブを鳴らした。
俺はそれを手に取ると、耳に押し当てた。
「もしもし龍斗でーす」
『あぁ、僕だけど』
「僕って誰だよ。僕僕詐欺だったらお断りで……」
『殴るよ?』
「悪い……」
俺が謝ると、氷空は「よろしい」と言い、続けた。
『一昨日のこと、覚えてる?』
「一昨日……あぁ、緑川先輩に俺たちの正体がばれたやつか」
『そ。それでさ、あの後先輩は他の先輩たちと話してたから説明できなかったし、昨日は帰る準備とかで忙しかったから話せなかっただろ?それで、折角今日休みなんだし、もし先輩が暇なら話すべきじゃないかって』
「でも俺、今勉強してるんだけど……」
『……先輩の件が終わったら教えてやるよ』
「マジっすか」
ちょうど分からないところだらけだったので、俺は二つ返事で承諾した。
そして寝間着のシャツと半ズボンから私服に着替え、外に出た。
−−−
「悪い、待ったか?」
「いや、僕も今来た所だからちょうどいいよ」
俺が行くと、氷空はすでに待っていたらしく、デートなら百点満点の返答を返した。
よく見ると、手には何かお土産屋さんとかに置いてありそうな形状の箱を持っていた。
「氷空、それは?」
「ん?あぁ、さっきそこの駅で買ったんだよ。もしもの時は先輩を賠償するために」
「もしもの時って……」
「大体、りゅーとのあの行動は軽薄すぎるアオ!」
その時、氷空の着ている薄いパーカーのフードの中から顔を出したアオヤは、そう言ってムッとした。
それを聴いたのか、アカトも俺の肩の上に乗ったまま、「すまないアカ……」と言った。
「オイラがちゃんとしていればこんなことにはならなかったアカ……」
「いや、合宿には二人は付いてきていなかったから仕方ないよ。僕の方こそ、もっとちゃんとしていれば……」
「氷空は充分頑張ったアオ!拙者こそ、もっとりゅーとのことを気にかけていればこんなことには……」
「ごめんなさい俺のせいです皆さんのせいじゃないですだからその謝罪のし合い止めて!」
罪悪感半端ないよ。何この子たち怖い!
俺が謝ったのを見て皆うんうんと頷く。
ぐぅ……悔しい……。
「じゃあ、行こうか。先輩待たせてるし」
「えっ、それ早く言えよ!さっさと行こう!」
俺がそう言って走り出したとき、後ろで氷空が苦笑したのを感じた。