複雑・ファジー小説
- Re: 心を鬼にして ( No.38 )
- 日時: 2016/10/29 21:29
- 名前: 凜太郎 (ID: uzSa1/Mq)
第10話「先輩の信念!緑鬼誕生」2
「……また、失敗したのか」
戻ってきたクドツに、桃太郎は冷ややかな声で言った。
それを聴いた彼は、しばらく目を泳がせた後で、「すいません……」と言い、頭を下げた。
「……まぁ、良い。もうお前等は、用済みだ」
その言葉に、クドツと、同室にいたキモンは顔を上げた。
それに振り返った桃太郎の口は、裂けたように吊り上がり、言葉を紡ぐ。
「ジーケがもう、帰ってくる」
−−−
待ち合わせの場所から5分ほど歩くと、一つの公園に着いた。
「ここは……」
「ここで先輩と待ち合わせしているんだ。先輩の家は知らないし、この近くにもっと大きな遊具がある公園があるから、子供も来ない小さな公園だ。会話を聞かれる心配もない」
「なるほど!やっぱりそらは頼もしいアカ!」
「ははっ、それほどでもないさ。ホラ、さっさと行こう」
「あぁ」
中に入ると、公園にいたのは二人だけだった。
ブランコを漕ぐ青い髪の少女と、ベンチに座る深緑色の髪の……。
「緑川先輩!」
俺が声をかけて腕を振ると、緑川先輩もこっちを見て「おー」と声をあげた。
「龍斗に氷空」
「こんにちは、キャプテン。今日はわざわざごめんなさい」
「いや、良いよ。それで、用事ってのは……一昨日のことか?」
「……察しが良いですね」
氷空の言葉に、先輩は「だよなー」と言って頭を掻く。
その後で俺たちは先輩を挟む形で座ると、鬼についての説明を一通り話した。
終始無言で聞いていた先輩は、全てを聞き終えたあとで、口を開く。
「つまり……お前や俺の中には鬼とやらが入っていて、それが、桃太郎とやらに狙われてるってことか?」
「はい。できれば、このことはあまり周りに言いふらしたりしないように……」
「了解。でも、危険じゃないのか?桃太郎とやらとの戦いは」
「危険、ですけど……俺たちがやるしかないんです」
「そうか……」
俺の言葉を聞いた先輩は、しばらく考えた後で、ポツリと呟いた。
「俺も戦いたい……」
「はっ……?」
俺が聞き返すと、先輩は俺の手を握って、「俺も戦いたい!」と、さっきよりも強く言い放った。
それを、氷空が「ちょっと待ってください!」とすぐに止める。
「それがどういう意味か分かっているんですか!?先輩だって分かっているでしょう!?桃太郎一行の危険性が!」
「あぁ分かっている!」
「だったら……ッ!」
「でも!」
そこまで言って、先輩はしばらく間を置いた後で、ポツリと呟くように、「でも……お前らが戦っていることを知っているのに、俺一人だけ見ているだけなんて……」と、苦しそうに言った。
それを聴いた俺たちは、顔を見合わせて黙ってしまう。