複雑・ファジー小説
- Re: 心を鬼にして ( No.39 )
- 日時: 2016/10/30 22:15
- 名前: 凜太郎 (ID: uzSa1/Mq)
第10話「先輩の信念!緑鬼誕生」3
俺たちが黙ってしまい、静寂が流れていた時、突然空が紺色に染まる。
咄嗟に顔を上げると、そこには電柱のような形をしたダゴビキがいた。
「ダゴビキ?黒い鬼じゃないのか?」
氷空はそう言いつつ立ち上がり、すぐに左手を構えた。
その時、俺はブランコに少女がいたことを思い出し視線を向けるが、そこには誰もいない。
もう帰ったのか……良かった。
「龍斗なにやってんだ。さっさと倒すぞ」
すでに変身した氷空は、そう言って拳銃を抜く。
俺はそれに頷き、立ち上がり、変身した。
その時、先輩が「あれは、夢じゃ……なかったのか……」と声を漏らしたのが分かった。
「先輩……少しだけ、待っていてください。あの化け物を、倒してくるので」
「だったら俺も」
「先輩は!そこで、見ていてください。大丈夫です。俺達強いですから」
笑顔で言って見せると、先輩は困惑した様子で瞳を揺らがせた。
俺は先輩の肩を押して、無理矢理座らせると、まっすぐダゴビキを睨んだ。
「先輩には、指一本触れさせない!」
叫び、強く踏み込み、一気に距離を詰める。
そして、ダゴビキを思い切りぶん殴り、さらにそこから回し蹴りを喰らわせた。
電柱ダゴビキが地面に倒れ込んだのを確認しつつ、俺は刀を抜いた。
「でりゃあああああああああああああッ!」
刀に炎を纏わせ、切りかかる。
すると、何かを切り裂いた手ごたえを確かに感じ、俺はすぐに刀をしまってバックステップで距離を取る。
「早いなぁ……僕やることなかったじゃん」
「へへっ、つい、な」
そう言って鼻の下を擦った時、氷空の背後にダゴビキが起き上がってくるのが見えた。
「氷空、後ろ!」
「ッ!?」
咄嗟に横に氷空が飛んだ数瞬後、そこに深々と石柱のようなものが突き刺さる。
顔を上げると、そこには腕を電柱に変えたダゴビキがいた。
「まさか、効かなかったのか!?」
「龍斗!一昨日やった合体技だ!」
氷空はそう言って拳銃を構えた。
俺はそれに頷き、刀を構える。
そして、氷空が撃った青い双龍を刀にまとわせ、青い炎にし、一気にダゴビキに切りかかる。
しかし、刀が当たるほんの少し前で横から石柱で殴られ、俺は地面を跳ねた。
「龍斗ッ!クッ……」
氷空がすぐに拳銃を構えるが、そこに石柱が振るわれ、氷空の華奢な体が吹っ飛ぶ。
俺はフラフラと立ち上がり、電柱ダゴビキを睨む。
「龍斗……氷空……」
顔を青ざめさせながら、先輩が近づいてくる。
来ないで、と言おうとしたが、立っているだけでギリギリな状態では声なんて出ない。
「せん……ぱ……」
「酷い怪我じゃないか……こんな怪我してまで、お前らは戦うのか……」
そう言って唇を噛みしめると、先輩はまっすぐダゴビキを睨んだ。
すると、彼はゆっくりと歩き、ちょうど俺と氷空を守るように、俺の前に立つ。
そして、両手を広げ、凛とした声で言った。
「これ以上、俺の後輩に手は出させない」
「先輩!逃げてください!このままじゃ……」
「俺は二度と!大切なチームメイトは失いたくない!たとえこの命尽きようとも!俺は、仲間を守る!」
その時、突然先輩の体を竜巻が包み込んだ。
しばらくして、竜巻が消えると、そこには緑色の服に、鮮やかな黄緑色の髪、額からは緑色の角を生やした、鬼が一人、そこにいた。