複雑・ファジー小説

Re: 心を鬼にして ( No.42 )
日時: 2016/11/02 17:50
名前: 凜太郎 (ID: uzSa1/Mq)

第11話「夏の出会い!8月に咲く恋の花!?」2

 陽炎揺らぐ炎天下。
 俺は一人、部活の荷物が入ったカバンを背負い鼻歌を歌いながら帰路をテクテク歩いていた。

「ダ〜ゴビッキの〜犯人どっか〜にお〜らんかね〜♪」

 適当に作った歌を歌いながら、俺は右手の人差し指と親指の先をくっつけて丸を作り、それを右目に当てた。
 そして左目を閉じて、辺りを軽く見渡す。
 こんなことをしても見つからないのは分かっているが……気持ちの問題だ。

「ん?」

 そこで、俺はかなり離れた距離の所に見覚えのある少女を見つけた。
 華奢な体に、背中まで伸びた長い青髪。
 少し考えて、以前、緑川先輩が覚醒した時に公園にいた少女であることに気付いた。
 ダゴビキの戦闘に巻き込まれてはいないとは分かっていたが、元気そうで何よりだ。
 実は少しだけ気になってたんだよね〜。もしかしたら怪我とかしてたんじゃないかって。
 ダゴビキは急に現れたし、もしかしたら公園に来る前に攻撃されている可能性もなくはなかったからね〜。
 良かった良かった。

「……おっと?」

 そう思いながらもう一度丸を作った右手を覗くと、唐突に少女の体は揺らぎ、やがてその場に倒れてしまった。

「……」

 俺はしばらく足を止め、一考する。
 これは。つまり。非常事態?

「うわぁぁぁぁああああッ!?」

 俺は焦る。
 こういう時、どうすれば良いのかなんて分からない。
 咄嗟に俺は少女に駆け寄り、彼女の体を抱き起す。
 彼女は汗を流し、「うぅ……」と声を漏らした。
 ええい!これは非常事態だ!
 俺は少女の華奢な体を抱き上げ、すぐに近くにあった木陰にあるベンチに向かった。

 さて、ひとまずベンチに腰掛け、俺のカバンを枕替わりに寝させたのは良いが、これからどうすればいいのかが分からない。
 救急車か?いや、流石にそれは大げさかもしれないし……いやいや!大袈裟でも命にかかわる可能性もある!
 俺はスマホで119番に電話をかけ、なんとかたどたどしく要件を伝えた。
 しかし、救急車が来るまで何もしないべきだろうか?
 少し考えた末に、俺は氷空に電話をかけた。

『プルルルル……———プルルルル……———』

 ……だめだ、かからない。
 そういえば、アイツ今病院にいるんだっけ。
 俺は唇を噛みしめ、次に先輩に電話をかけた。

『プルルルル……———プルルルル……———』

 クソッ!こっちもか!
 いや、先輩だって康平先輩と勉強だって言ってたし、図書館にいたとしたら出られるわけがない。
 俺は舌打ちしながら、救急車を待った。

 しばらくして、赤いランプを光らせながら白い箱型の車が走ってきた。

「熱中症で倒れたというのは!?」
「こっちです!」

 俺が少女のもとへ案内すると、男の人たちが担架を持ってきて、それに少女を乗せる。
 俺はそれを見てホッと息をつき、帰ろうとした。
 しかし、カバンを持ったところで呼び止められた。

「あぁ、君。ちょっと一緒に来てもらえないかな」
「な、なんでですか?」
「現場とかを知っている人間がいたほうが良いんだよ」
「分かりました……」

 まぁ、どうせ暇だし別にいいかと嘆息し、俺も救急車に乗った。