複雑・ファジー小説

Re: 天使、のち、悪魔、のち、 ( No.3 )
日時: 2016/07/02 13:37
名前: カンパニュラ星鈴 ◆2P6zxky1H. (ID: LaqAx/EG)



aile 1


「あー! 危ない!!」


車道。迫り来る車。帽子を風に飛ばされて走るあの子は、全く気がついていない。


「と、止めなきゃ! アンジュ・ド・ブランシュ! 夢ちゃんの足元に、石よ出てこい!」


ガンッ!


「は〜、やれやれ……」


顔から地面に突っ伏して転んでる夢ちゃん。
痛そうだけど、車に轢かれるよりはマシだからね。
あとは、帽子を魔法で夢ちゃんの方に吹き戻して、と。はい、一丁あがり。


——…あたしはバニ=ブランシュ。
歳は14歳の中学2年生……じゃなくて、天使見習い。
今は、1級試験の真っ最中。
真っ最中っていっても、今日も明日もずっと試験。1級試験は1年もかかる。


さっきのそそっかしい女の子。出灰夢いずりはゆめちゃん10歳。
1年間、あの子について回って、フォローして……、
その年の終わりに「今年は幸せな1年だったね」とか何とか言ってくれれば合格。
とは言っても、これが結構難しい。
天使の姿は人間には見えないし、幸せだったことを必ず「口に出して」言ってもらわなきゃいけない。
毎年何人も落ちるのも、ムリない試験なんだよね。


……特に夢ちゃん。
今も車に轢かれそうになってたけど、『幸せ』以前に不幸を避けさせるだけで精一杯。
今のも「いった〜い!」くらいにしか思ってないんだろうしな……。


「いった〜い! ゆめ、不幸!」


……はいはい。思ったとおりのこと言ってるし。


こんなんで受かるのかな、あたし……。