複雑・ファジー小説

Re: 天使、のち、悪魔、のち、 ( No.7 )
日時: 2016/07/10 14:56
名前: カンパニュラ星鈴 ◆2P6zxky1H. (ID: uumkjDES)


aile 2


「……クスクスクス♪ うまく止めたじゃない」


背後から見知らぬ女の子の声が突如聞こえた。


「誰!?」


後ろを振り返ったあたしの目に入ったのは——…大きな羽を持つ女の子。
といっても、あたしのわずかに空色を含んだ白い柔らかい羽とは何もかもが違っていた。黒くて、硬そうで、コウモリの様な羽。
あたしが睨み付けていても、女の子はバカにした様な笑いを漏らすだけ……。


「あんた、誰よ!?」

「あら、人に名を聞く時はまず自分から名乗るものよ♪」

「……っ、あたしは、天使見習いのバニ=ブランシュ!」

「悪魔見習いのルフティ=ノワールで〜す。よろしくね♪ クスッ」


ルフティ=ノワール、悪魔見習い。何なんだこいつは。
相変わらずバカにしたような笑みを見せて、あたしの目の前に浮かんでいる。


「とっさのことだったのに、バニちゃんもなかなかやるじゃない。


 ……私だったら先に帽子を吹き戻すと思うけど」


そ れ が 言 い た か っ た の か こ い つ は。


「ルフティ=ノワール、言ったな。いつから見てたわけ?」

「風が吹き出すところから、全部よ」

「全部……?」


それを聞いて、あたしには思い当たる節があった。


「まさか、最初に風を吹かせたのは……あんたの仕業?」

「そうよ♪ わかっちゃった? フフッ♪」

「あ、あのねぇ……」


悪びれる様子も一切無い彼女に、あたしは怒るよりも先に、全身の力が抜けてきた。


本 当 に 何 な ん だ こ い つ は。


「バニちゃんがあんまり一生懸命でかわいかったからね♪
 こんなことしたらもっと一生懸命になるのかなぁって思って」


はぁ……。何かもう、どうでも良くなってきた……。


「あ、ほら。バニちゃん、あの子行っちゃうわよ」


確かに地上では、夢ちゃんはいい加減起き上がって歩き出していた。
あたしは、彼女に……悪魔見習い・ルフティ=ノワールに何も言わずに夢ちゃんを追いかけた。


悪い悪魔にからかわれた……あたしの頭の中はそんな思いでいっぱいになっていた。