複雑・ファジー小説
- Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.130 )
- 日時: 2016/08/19 15:13
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
香川と恋色羽は椅子に座る。
「その手帳の中は……」
「セクハラだ!きゃあ!」
「……」
「余計な事を話さないで」
「今回の訪問者で確実に霊能力とか言うフィクションは終わらせる」
「私は貴方の言う事もこれから来る訪問者も信じない。私だけが霊能力者。だからこんな事しないで私を調べたら良いのに!」
「私も君なんか信じる訳無いだろ。ただ権力者は話す価値だけはある」
「私は輪廻転生を操作出来るの!」
「黙れ。訪問者が来る」
「お前の頭は教科書で出来過ぎなんだよ。頭カチカチ大御所の映画監督か!」
「……別にこだわってねーよ!何処のラーメン屋の店主だよ!てかお前馴れ馴れしいわ!」
「……は?分からず屋なんかと私だって関わりたくないよ」
すると屋上に訪問者が現れる。
「今回の訪問者は、日本最大の新興宗教、マザー教の香具師 剣兎さんです」
香具師は信者達を連れて行きながら香川の元へ行く。
「今回は呼んで頂きありがとうございます……」
「こちらこそ。では話しあいましょうか。貴方のそのインチキについて」
信者達は香川を見て呟く。
「咲いた、咲いた〜♪」
信者達は不気味な笑顔で手拍子をしながら歌い出す。香具師は香川を見下だすように話す。
「私は透視、見えない物を霊的なパワーで見る事が出来るんですよ……」
信者達は拍手をする。香川は笑う。
「透視は不可能だ」
「では実践しましょう」
信者達はかけ声にあー、と奇声を上げながら持ってきた紙袋を用意する。
「我々はこの中にこの三つの物体のどれかを入れます。そして香具師様はその物体を当てて見せましょう」
「へぇ〜……いや、どうせインチキだ。見せなくて良い。とにかく話し合いをしよう」
「そうですね。私は本物ですが彼女は偽物です」
信者達は怒る。
「偽物だと!香具師様は数々の殺人事件を解決した経験があるのだぞ!」
「それがどうやったら、こんなカルト教団を生み出すんですかね〜。しかも貴方達の格好って……」
信者達の格好は、ちゃんちゃんこを着たゲゲゲの妖怪や妖怪時計に出てくる自縛猫のコスプレをしていた。
「これはマザー教を布教させる為により強いインパクトを残そうとした結果です。香具師様とは関係ありません」
「成程、私が有名人だからその有名人が霊能力を認めたら一躍、マザー教は有名になるからな」
「その通り。だからあえてこの高感度高めのオシャレなファッションをしているんです」
「逆にインチキ臭いよ。馬鹿かよ」
そして香具師は30分、透視をする。
「長ぇよ」
「……」
「……もう少し何か面白い奇声とか発しないのかな?」
「知らない。ちょっとスマホでゲームして良い?」
「飽きるなよ」
香川はタバコを吸いながら腕時計を見る。信者達は奇妙に笑いながら天を仰ぐ。
「今、霊界との通信をしています。さすがクロエ様!」
そして香具師は叫ぶ。
「中に入っているのは花だ……!」
信者達は紙袋の中から花を取り出す。
「お見事です!」
香川は驚く。
「……恋色羽。見たか?あれ、凄いぞ?」
「打ち合わせしてたに決まってるじゃん」
恋色羽は鼻で嘲笑う。信者達も花で嘲笑う。
「当たり前だ。こんなのインチキだ」
「そうですか。まあ話し合いましょう。貴方なら分かってくれると思いましてね」
「……」
香具師は席に着く。
「私は過去を透視する事が出来るのです。まあ、これをやってしまうと……個人的に嫌なので」
「何故だ?」
「私……俺は悪い、辛い過去しか見る事が出来ないから……」
信者達は焦りながら香具師を励ます。
「いやいや!貴方の能力でこの頭カチカチ山、讃岐うどんさんを見せつけましょう!そうすれば、マザー教はもっと……」
恋色羽は笑う。
「香川さん、今日から頭カチカチ山、讃岐うどんって言う名前で良いですか?」
「……心外だ。私が本気になればマザー教を批判し、お前等を社会的に抹消する事等簡単だぞ。あまり私をなめるな」
「貴様!マザー教は全ての光、全ての闇を照らす月ですぞ!」
香具師は戸惑いながら香川を見る。
「俺……私は、全てに救済を施す為に」
「はいはい。で?結局救えてんの?」
「……」
信者達は叫ぶ。
「当たり前だ!」
「それでね。今、尾崎って言う奴がマザー教に潜入してるんだ。意味分かるよな」
「……?」
「尾崎!」
屋上に狂いかけの尾崎がよだれを垂らしながら、化物を語りそうなコスプレをしながら現れる。
「明らかに酷い洗脳を受けているとしか見受けられないが?」
「……知らない」
「さらに入会金10万。月の支払い15万。大学生にはキツイな?」
香具師は戸惑う。
「俺には分からない……」
「これの何処が救済なんだ?」
香具師はその場から逃亡する。信者達も後を追いかける。
「……やっぱりインチキだったのね」
香具師は逃げる際に血まみれの紙を落としていた。香川はそれを読み上げる。
「……!」
香川は香具師の方を向く。
「……すまない。今日はもう終わりだ」
「え?何言ってんの?次のインチキが」
「……」
「分かったよ」
香川は紙を見る。紙は血でほとんど読めなかったが、あるたった4文字の単語のみで全てを理解した。そしてわずか数時間後、香具師は自殺。遺書には、『俺は何も救えてなかった』。その後マザー教は救いを失った信者達が分裂をして新たな宗教を立ち上げている。
「……インチキって言ったから」
恋色羽はさすがに責任を感じていた。
「香具師は単に人々を救いたかっただけ。それを漬け込んだのがあの信者達だったと言う事だ」
「つまり、香具師自体は本物の霊能力者で、金儲けの為に操られていただけって事?」
恋色羽は泣き始める。
「ようやく分かり合える人が現れたのに、私は……」
「……お前は孤独じゃない。私がいる」
「香川さんじゃ不安です」
「……え〜……いや、其処は……」
「それじゃ」
恋色羽はその場を立ち去る。
「……さて次の訪問者を決めないとな。その前に尾崎を元に戻さないと」
香川のポケットの中には血まみれの過去が入っていた。