複雑・ファジー小説
- Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.232 )
- 日時: 2016/09/16 18:42
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
siyarudenさん、霧風赤司さんオリキャラ投稿ありがとうございます。
これからも応援宜しくお願いします。
此処からは本編です。
第十四幕 行決雨雷
時は1874年。明治7年。142年前。戌年。 板垣退助達が民選議院設立建白書を提出した時であり、東京警視庁を設置した時代である。世の中は変わりゆき、北国の地からやってきたアイヌが平民と呼ばれ日本と同化してわずかに3年の事だった。
ザンギリ頭を叩いてみれば文明開化の音がする。しかし文明開化について行ける者は少なくとも存在していた。
「おい、火野〜!火野有理(ひの ゆうり)ぃ!」
ザンギリ頭の男が大きな声で民家に入り込む。
「尾瀬ヶ原 來(おぜがはら きた)。言われなくてもこちらに来ている。一体何の用だ?」
「見てみい。俺っちの頭。流行りのザンギリ頭じゃ」
火野は髷を触る。
「それが南蛮では当たり前って言うザンギリ頭か。ほう、偉い変わってんな」
すると一人の侍が話す。
「髷を結ってこその平民だ。そんな頭では下の身分の奴らに間違えられるぞ」
「熊本の幕末武士が何をいっとる。お前等が時代を変えたんだろ。河上 誠二郎(かわかみ せいじろう)」
「俺はただの侍だ。世話になった上の者に従うのが道理。例え、人斬りでもな」
「今はやってないんだろうな?」
「やる訳がなかろう。時代は変わり、本来あるこの江戸の文化が南蛮の文化に押しつぶされるんだ」
「今、此処は東京だ。後は首都って言ったっけ?」
尾瀬ヶ原は笑う。
「まあ便利になったし、南蛮の文化なら俺っちの弟の病気が直せるかもしれねえからな」
「尾瀬ヶ原、お主、この江戸の医療を馬鹿にしたのか!」
「真面目だな。お前。気楽に行こうぜ」
火野は扇子を見せる。
「今は冬だ」
「……河上!今日もこの東京を俺達が守るぜ」
「俺とお前の仲だ。人斬りなら手を貸してやる。ただ警視庁が我々を悪だと決めつけるだろうがな」
尾瀬ヶ原は笑う。
「とにかく仕事に行くぜ!」
火野と尾瀬ヶ原、河上の仕事は依頼人からの仕事を金で請け負う事。依頼内容はほぼ暗殺。暗殺者と同じだが彼等は金優先では無く道徳優先。つまり世直しの為に悪人を斬る事のみを仕事としている。
「仕事人みたいだな……」
「ただ無料でやるほど甘くは無い。それに金との関係ならば縁も元々無い」
「あくまでも、依頼人と暗殺者だと……」
「俺っち達は正義じゃないからな!」
「闇に隠れ生き続ける。しかし忍者と違い、俺達は自分の意思で悪を偽善を斬る。例えそれが無慈悲であっても」
河上は悲しげな表情をしてその場を去る。
「……さて依頼箱を見てみるか」
火野達に依頼するには、直接依頼する方法と依頼箱と言う箱に依頼内容を書いて入れる方法がある。紙は各自で用意しないといけない。
「報酬は?」
「時価。俺の気分だよ。てか今さら何言ってんだ?」
「俺っちの兄弟の病気を治さねえといけねえからな」
「そうだな。でも利益を求めると貧しい人がますます貧しくなる」
「分かってけど……」
火野は何も書かれていない箱を除く。
「一枚発見」
「匿名、依頼内容は妖怪退治。最近、吉原で同志達が妖怪を見たと言っている。このままだと吉原のイメージが下がり、閉店する店が出るかもしれない。早急に解決してくれ。私の身分では陰陽師に話すことすらさせてもらえない。お礼は一緒に入っている。頼む、私の金を無駄にしないでくれ」
「紙の質は尻拭き並。墨の質は安物。と言う事は平民か」
「恐らく、女に金を貢がせている平民と言った所だなぁ」
「吉原には昔お世話になった店がある。そこに行こう」
「お世話?火野もそう言う店に行くのかぁ?」
「警察の時に上司と無理やり来ただけだよ」
「ああ……すまん」
「何を謝っているんだ?」
「まだ忍者討伐部隊は行動しとるぜぇ。見に行かんのか。親友達が……」
「……俺は幕府の犬じゃないんだぜ」
火野は歪んだ目をして吉原へ行く。
「2名様ですか?」
「千菊姫と話がしたい」
「……関係者ですか?」
「いや友人として」
「それでは付いてきて下さい」
尾瀬ヶ原は話す。
「火野、大丈夫かぁ?千菊姫って誰だぁ?」
「東京の事なら何でも知っている遊女。此処は幕府公認の店で警官も良く通っていた。勿論値段は高いが」
「でも普通、元関係者を通さねぞえ。それにお前は幕府の考えが嫌だから……」
「……まあどうにかなるし、幕府が嫌いだからって東京は嫌いになる訳が無い」
「その割り切り方が妾は好きなのじゃ」
火野は襖を開ける。すると、千菊姫が琴を弾いていた。
「幕府が利益ばかり、性欲ばかり求めての〜。まあ日頃の疲れが溜まっておるんじゃろが。妾達にぶつけてるのはつらいのじゃ。妾だって疲れておるのに」
「……此処らで妖怪騒ぎが起こっているらしいな。幕府は信用していないし、陰陽師は金の匂いにしか敏感じゃないらしいから野放しって訳か」
「お主のような悪党じゃないと無理なのじゃ」
尾瀬ヶ原は周りを見る。
「思ったより……豪華じゃないな」
「……移転したんだよ。幕府公認でも格付けされていて、上の方が豪華。下の方が……」
「ええんじゃよ。妾のわがままのせいでこうなったんじゃから」
千菊姫は嘗て幕府公認の中でも一番の店の支配人だったが幕府のやり方に不満を覚え経営方針を変えた為、店から追い出され格下の店に置かれる。つまり、窓際である。
「堕ちても江戸……東京の情報は知り尽くしておる。これからも何でも聞きい。幕府の奴等もめったに此処のちんけな店には来ない。来るのは借金だらけの平民じゃ」
「それじゃ妖怪の目星は?」
「付いておる。妖怪、野狐。人間に化けた狐が幕府の関係者に悪戯をしておるんじゃ」
「狐……」
「そう言えば、お主、いなりが好きじゃったな」
「そうなんか?」
「ああ、好物だ。そういえば幕府公認の一番豪華な店は狐の像等が多かったし、美味しそうないなりが……」
「分かったかの?可能性が高いのは一番豪華な店の支配人じゃ。彼女が何かしらを企んでおるんじゃ!」
ちなみに、妖怪の存在は一般人には知られていないが知る人は知っている。そして火野と尾瀬ヶ原は店を後にすると、火野の目の前に軍服を着た警官が一人いた。
「貴様は火野だな」
「忍者討伐部隊か。懐かしいなその制服」
「お手合わせ願おう」
警官は刀を抜く。周りは騒ぐ。警官は叫ぶ。
「黙れ愚民共!誰のお陰で生活出来ると思っている!誰のお陰で治安を維持出来ていると思っている!愚か者が!」
「……あいつ、ちゃんと新人教育してんのかよ。馬鹿野郎」
「私の名は伊達 兆途(だて じょうと)!八高 義弓(はちこう よしゆみ)より上に行く為に貴様を捕縛する!」
「俺はまだ何にもしてねえが?」
「罪状等、いくらでも偽装出来る!」
「てめえの地位を上げる為に俺を利用するとは?馬鹿みたいだな」
「悪人討伐数トップの貴様を捕縛すれば私が一番と言う事が証明出来る」
すると、一番豪華な店から煙管をふかした女性が現れる。
「誰に許可してわっちの店の前で騒いでおるのかぇ.....」
「黙れ!女に指図される覚えは……」
「わっちは戯。ただの女と思われたのは心外だね....!」
戯は飄々としながらやる気を無さそうに伊達に向かう。
「幕府公認の意味を知ってそんな口を叩けるか!千菊姫の様になりたいのか?」
「神足通」
戯は店に戻る。伊達は何時の間にか火野の下で血まみれになっていた。
「……おいおい、あれって絶対妖怪の力じゃぞ」
「決まった訳ではないが怪しいな……」
伊達は火野に叫ぶ。
「……何で、忍者討伐部隊を捨てた。後一条さんや細多喜さんが悲しんでいたぞ」
「あいつらは悲しまないぞ」
「なら忍者を野放しにしてて良いのか!忍者は妖刀で南蛮文化を滅ぼそうとしているんだぞ!」
「……分かってるさ。ただ俺が気に入らねえだけ。人斬って、責任取らないのが。別に後一条達が悪い訳じゃない。あいつ等は幕府を中から変えようとしているから」
「火野!」
火野と尾瀬ヶ原は一番豪華な店に入る。
「……火野。銭はどうする?それに予約もしていない」
「なんとかなる」
「無計画かっ」