複雑・ファジー小説

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.295 )
日時: 2016/10/19 19:41
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

capture4 鎮魂歌

フェンネル『私はフェンネルです。12歳です。女性です。宜しくお願いします』

アイロニー『そんな固くならないで良いよw初心者?w』

茴香は孤独だった。寂しさをチャットでしか解消出来ない程に。

「でもぜんぜんわたしはさみしくないですよ。だってたくさんのはながわたしをかこむんですから」

茴香は押し花を始める。親戚は冷たい目で見る。

「後で捨てておくよ。邪魔でしかないから」

茴香に与えられたのは、シャボン玉を作る為のストローと枠、バブルガン。これは交通事故により亡くなった両親が事故直前に買っていた玩具。つまり形見と言う事になる。

アイロニー『シャボン玉が好きなのかw』

フェンネル『違いますよ。シャボン玉の歌って本当はすごく悲しい歌ってお父さんはいっていました........』

アイロニー『童謡?シャボン玉とんだ〜屋根までとんだ〜屋根までとんで〜こわれて消えた〜♪だっけ?んー、情景は日常的で何も悲しくないけどねw』

フェンネル『お父さんが言ってただけで私にもあまり分かりません』

茴香はストローでシャボン玉を飛ばす。

「.....さみしくなんかありません。わたしはげんきです。おとうさん、おかあさん」

茴香は夜中一人で散歩を始める。町の明かりが付いている為、孤独を感じる事が少しでも減らせるからである。勿論、親戚には内緒である。

するとモクモクと夜空が揺れ始め星を消していく。正体はすぐに分かっていた。火葬場から噴出される黒煙である。茴香は火葬場へ向かう。町の明かりが消えていく中、茴香は黒煙と向かう。

「ほんとうならおかあさんとおとうさんはおはかのなかにいるのに、おとうさんとおかあさんがもえたあのばしょに....いるきがする」

茴香は口調等は大人ぶっているがまだ幼かった。死の理解が遅かったのである。それに少なからず恐怖もあった。だが両親があそこにいるかもしれないと言う期待が彼女の足の動力源となる。

「ぜ、ぜんぜんこわくないですよ、こわくなんかない.........」

色名頁いろな火葬場。現在はあまり使われていないはずの火葬場である。理由は直ぐ近くに火葬場が存在しているから。名前は卯敷うずき火葬場。茴香が住んでいる町の隣村、其処こそが星空が住んでいる卯敷村であった。

すると、火葬場から二人の男女が現れる。

「おかあさん.......なの?どうしてそこにいるの...........?」

「百子?」

「おとうさんも.......」

「ど、どうして此処に.....とにかく来ちゃ駄目だ!」

母親は父親を止める。

「何をする!こんな事が未那にバレたら百子が殺される」

「....で、でも」

茴香は涙を流す。

「おとうさん、おかあさん、いきていたんだね......ずっとずっとひとりぼっちでさみしかったよ」

母親は茴香に抱きつくが、身体が透き通る。父親は持っていたシャボン玉を見せる。

「百子、私達は死んだんだ。そして成就されなかった念があの火葬場から盛り上がる黒煙に乗り移り、私達は新しい人生を歩む事になった」

「未那と言う女性に超能力って説明されたけど私は納得できなくて、問いただしたら私達は幽霊に近い存在だって....」

「なんのはなしをしてるんですか?いま、はなせているならそれはいきているのとおなじです。もう、ひとりぼっちはいやなの......」

「百子.....」

父親はストローを吹く。だがシャボン玉は出ない。

「お父さんは煙。自ら呼吸をする事は出来ない。つまり、百子と違ってシャボン玉を吹く事は出来ないのだよ。お父さんは死んでいて新しい人生を歩んでしまっているからだ。百子もお父さんとお母さんの事を思い出して、新しい人生を歩むんだ」

「あなた、何言ってるのよ!百子を一人ぼっちにさせる気!私の、私達の唯一の娘、宝物なのよ」

「分かってるけど、どうすればいいんだ!」

「.....バレなきゃ良いのよ。他の村人達に」

「俺達の居場所はあそこ以外無いんだぞ。超能力者だと思ってる奴も人間適応実験後、未那により回収され検体として処理されるんだぞ」

「なら、百子をこのままほっとけって?私には出来ない!」

「俺だってしたくない!」

大人の会話は茴香には理解出来なかった。いや理解しようとするのを諦めた。

「おとうさん、おかあさん。あたらしいおうちはどこ?いっしょにいこう!......ね?」

茴香は煙で出来た持てない両親の手を持ち、村の方まで歩く。

母親は呟く。

「こんなに嬉しいのに涙は出ないのね」

「.....」

そして茴香は両親と約束をする。

「此処は百子の家だけど一緒には住めないの。夜中になったらこっそり来てね」

「....うん」

「この事は誰にも話しちゃ駄目だ」

「うん」

「良い子ね。それさえ守れれば大丈夫よ」

遠くの方で、未那は茴香の家を見る。

「人間は歓迎出来ないわね。私達の存在を知られると害と見なされるから。人を食ったり、人を殺したり、人を私達の仲間にしたりなんてしないのに。私達にも果たすべき願いがあるのよ。だって私達は憎悪の塊なんだから」