複雑・ファジー小説

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.296 )
日時: 2016/10/20 18:23
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

茴香は毎日夜中に家族の元へ帰っていた。

「他の村人に絶対に気付かれないでね」

アイロニー『フェンネル、最近昼休みしか来て無いな』

ミスターH『マーチがいても発言は皆無。恐らく仕事をしながらでもやっているのだろう』

アイロニー『ろくでなしは、完全に来なくなったし』

ミスターH『全くどんどん人が減って行くな』

そしてある日の午後。未那は村人を呼ぶ。

「此処に人間がいるわ」

「まさか、もうバレたのか?」

「未那さんが最初の時、生き返って超能力者だなんて嘘をつくから我々の仲間が気軽に外に出て人間達に存在を知らしめているんですよ」

「それはテストよ。この状況をしっかり飲み込めるかどうかのね。出来ない人間は人間のふりをして適応出来るかどうか見るのよ。それに人間がそんな単純な訳が無い。一人、そんな事に騒いだからって皆、オカルトを信じる訳無いじゃない。特に国とか」

「……それじゃ逆に色々やっても人間側は何も対策はして来ないって訳か」

「ただし、こんな村が人間にバレた場合私達はこの場所から追い出されるのは確実ね。それか心霊スポット。家を荒らされ、脅かされる。さらにそれが、ネットに流出すれば私達の存在はバレてしまう」

「てか、私達って幽霊なの?」

「貴方達は火葬場の黒煙から出来た怨念よ。煙のように消える事も出来るわ。ただ、風の向きによるけどね」

「でも物とか掴めるし会話も出来るぞ?」

「それは私にも分からないわ」

「そんな……」

「それは当たり前。だってこんな存在がいる事自体がおかしいんだもの」

すると、星空がやってくる。

「未那。何やってんだ?」

そして、夜中に人間討伐は行われる。

「少女じゃないか!こ、殺すのか?」

「一人の怨念の存在は構わない。だけど、この村の存在は誰にもバレちゃいけないの。後は協力者もビンに詰めて」

茴香と母親、父親は家から逃げる。

「何でそんな卑劣な事が出来るんだ!私達は少し前まで同じ人間だった!いや、人間とほぼ何も変わっていないんだ!」

「だけど一度死んだ人間は歓迎される事が少ないんだよ。いや、怨念から生まれたんだから歓迎される訳無いか」

「私の娘だけは!娘だけは!」

未那は語る。

「私達の存在はどんどん増えていくわ。やがて、人間よりも。いいえ、私達が殺して増やすのよ。そして私達の存在が当たり前になるまでね」

「……」

「別に死ぬ訳じゃないわ。こうして貴方が言ったように死んでも怨念が残れば人間とほぼ同じになれる。その少女もそうさせるべきよ」

「道徳心が欠落してる」

「私達は不死身よ」

「違うわよ、もう死んでいるの。だけど生きている娘と一緒に住んでいるわ!貴方達も家族の元へ」

茴香の前に星空が現れる。

「我々がこの村に集結する理由は生きる為では無い。ましてや、大切な人に会いに行く為でも無い。未那は規模拡大を狙っているらしいが私はただ復讐の為に集結し行動するのだ。何故なら、我々は怨念で出来ているからだよ。人間と外見はそのままだが、我々の感情は怨念のみの化け物だよ」

「違う、私達のように人間、娘から学ぶことだって!」

両親は未那により消えてしまう。両親が持っていたシャボン玉のみ残し。

「煙を腐らせればただの有害物質よ」

茴香は怯え、身体を小さくさせる。

茴香はシャボン玉の道具を抱えながら殺されてしまう。

後日、遺体は火葬場から発見される。

「シャボン玉消えた
飛ばずに消えた
産まれてすぐに
こわれて消えた

風、風、吹くな
シャボン玉飛ばそ」

両親は歌う。未那は話す。

「悲しい歌ね。貴方達の娘も飛ばずに消えて壊れて消えたのよ。生まれてすぐだろうが、年老いてからだろうが、突然の事故だろうが、消える時は悲しいのよ。風は必ず吹いて来るからね。だけど、今この場に私達がいる。新しいシャボン玉で飛べるのよ。しかも永遠にね」

両親の身体は風により、身体のほとんどが無くなっていた。

やがて、茴香は両親の元へ帰る。割れないシャボン玉を連れて飛んでいく。傍から見れば彼女は幸せだろう。

「いまのわたしにシャボン玉はりかいできません。わたしはただえいえんにおかあさんとおとうさんの元にいれるだけでしあわせです。そうですね、おとうさん、おかあさん」

「……徐々に人間の記憶が失っていくわ。復讐を考えている人達は早く実行しないと駄目ね」

「しかしどういう構造で身体が構築されていくのかが理解不能だよ。血液も動力源も無しに何故我々が起動出来ているのかが」

ただ彼女等にはもう人間の時にあった愛は何処にも、なかった。

三つの煙が入ったシャボン玉は割れずに屋根の上を飛び続ける。孤独でも無い、とても幸福な事である。意図的で無くても。ただ、自分も他人も愛する事が出来ない。願わなければ、死者は死者のまま。生きる屍と同じである。

capture4 鎮魂歌 完

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