複雑・ファジー小説

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.311 )
日時: 2016/10/26 20:29
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

「馬庭(ばにわ)……」

「どうした」

「今度、俺の走りを見てくれ。そうしてから俺をただの夢追い人かどうか見極めろ。牛瀬(うしらい)」

「黙れ。俺はお前に失望した。これから漫画家になって、お前の素晴らしい原作を作画出来ると楽しみにしていたのに。才能と言うのは怖いな。自分がいかに凄いかなんて分からずに、叶わない夢である陸上選手になってオリンピックを目指すんだろ?」

「牛瀬……」

「お前が考えた、『まどろみ』と言う作品は俺のデビュー作にさせてもらう」

「……」

牛瀬は急に老けこんで、花屋にいた。隣には男性がいた。

「こいつは牛瀬。20歳の時漫画家になると言って未だにデビューすら出来ない34歳。こいつの漫画はハッキリ言って面白くない。単調の話、ありがちな展開、ご都合主義による強引打ち切りハッピーエンド。パンチラと胸の谷間でしかエロ展開を書けない。全く俺の方が面白く書けるぜ」

「アシスタントのパーヴェル・幅重はばかさね。良いから、適当に感動的な花言葉に合う花探して、パパっと感動させろ!」

「分かってる」

「ゆとりが、ちんたらしやがって……」

「牛瀬は売れない漫画家。これまで五つの作品を考案するがいずれもボツ。

多くの矛盾をしている(勿論、漫画の矛盾も面白さの一部ではあるが牛瀬は自分の矛盾を認めていない)超能力を書いてバトルにする漫画や取ってつけたような知識で書き込むスポーツ漫画等。

いずれにしても、何処かで見た事がある物語だ。

漫画家や小説家は誰も見た事が無い、誰も予想していない事を書く為に書いているんじゃないのか?」

「金だ!金の為だ!漫画家はボロ儲け出来るんだ!一つでも適当に売れれば、金が何もしなくても入って来るんだよ!」

「反吐と涙が出る。ちなみに俺はアシスタントと言う職業をしている。漫画家になろうとは思っていない。こうしてアイデア探しをしている時に花屋、宿り木を見つけていた」

「此処が花屋?花屋のくせして敷居が高いじゃねえか」

「まあ相談所だから現実と隔離させたいんだろう」

「何言ってんだ?漫画じゃあるまいし」

幅重と牛瀬は虫朱の元へ行く。

「相談は何でしょうか?」

「漫画が売れたい。俺は才能はある。だが周りが馬鹿でついていってないんだよ。簡単に言うと、生まれる時代を間違えた天才だ」

「そう言う事を言うのは才能が無い奴ってお約束だよな」

「漫画家になる経緯を教えて下さい」

「金の為だ」

「そうなんですか?」

「本当の所を言うとだな、かなり前に見た漫画を見て衝撃を受けたんだ。俺もこんなの書きたいってな」

「良い人ぶってるのか?」

「……相談って言うからにはきっちり聞かせてくれよ」

幅重は気付く。

「そうか、この宿り木の設定を今度の漫画のアイデアにするつもりか。だから……」

「俺の相談をどんな風に解決してくれるのか。楽しみだよ〜」

「しかし、牛瀬さん。何処かで会った事ありませんか?」

「無いね。虫朱君。俺の娘の彼氏って言う設定並に無いね」

「……まあ、置いといて。貴方の悩みはまず、漫画家になりたいと言う経緯を正直に話す事から始まります」

「俺の物語は単純だ。そう、それはある友人との出会いっ!」

「何か語り始めたぞ。34歳の良い歳こいた人間が」

牛瀬は小学校の漫画クラブで初めて漫画を描く。小学四年生にして漫画デビューを果たすのだ。しかし小学四年生。持っているのは鉛筆かシャープペン。まだ何のペンで漫画を描く事すら知らない彼に漫画を描かせるのは正直酷な事と捕えるべきだったはず。

「ポ○モン、サ○シがいく、さいきょうの冒険」

廊下で幅重と牛瀬、虫朱がいた。

「其処から入るのか。もっと中学生とかにしたらどうだ」

「俺の牛瀬ストーリーは此処から入るんだよ、馬鹿」

「だから漫画売れねえんだよ。自重しろよ」

牛瀬は中学の時、同級生である馬庭と出会う。馬庭は美術部に入っており、腕前は当時としてはプロレベルだった。

「牛瀬君?」

「俺と一緒に漫画家目指そうぜ。ペンネームは決まってんだよ。生卵って言うんだよ。良いだろ?」

「ペンネームがパクっててアウトだと思うし、僕はまだ君に返事を出していない」

「何でだよ!」

「初対面だからだよ。初対面で一緒に漫画家になろうとか馬鹿だろ」

幅重は牛瀬を見る。

「同時から馬鹿なのか?」

「黙れ、うるさい!」