複雑・ファジー小説

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.312 )
日時: 2016/10/27 17:29
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

牛瀬は馬庭を説得する。

「俺と一緒に漫画家になろうぜ!あれだ、あれ。何だっけ?同じ様な漫画にあったろ。あの〜バクマ……」

「帰ってくれ。私は将来、画家になりたいんだ。漫画家は素晴らしいとは思うけど絵を評価してくれる人間等いない。評価するのはストーリーだ」

そしてその後、彼等はある事をきっかけに仲良くなるが、省略する。パーウェルは突っ込む。

「何で此処省略するんだ?」

「え?駄目?」

「ターニングポイントは抑えないと駄目だろ」

「でも、ありがちな安い感動モンだよ?」

「それをラストに持っていくなら問題だが、ターニングポイントなら得点は入るぞ」

「得点?」

「ボクシングの話として」

そして、馬庭と牛瀬はとにかく漫画で賞を取る為に、色んな所に応募する。

「こういうのって売り込んだ方が良いよな?」

「僕は人見知りだ。だから他人と話す事は不可能と言った方が良い」

「え〜、他の有名な漫画家は皆売りこみで……」

そして馬庭と牛瀬は20歳になる。

「もう、無理だ。僕は夢だった陸上選手になる」

「何でだよ!これからだろ!てか、陸上選手って何処から湧いて出た!」

「僕の親父が陸上選手で、親父から言われてんだよ」

「そんなの蹴り飛ばせ!」

「無理だ。僕だって陸上選手になりたいんだ」

「そんな……お前には絵描きの才能があるじゃないか。それにお前、絵師になりたいって言ってたろ」

「画家……って言いたいけど、絵師も候補に入っているから言わないでおこう。画家や絵師はあくまで夢の候補の一つ。夢は一つじゃないからね」

「……」

「陸上選手でオリンピックに出る。これも僕の夢だ」

「夢なら友達捨てんのかよ!」

「……応援してくれ。僕も君を応援するから」

「何言ってんだよ!」

馬庭は去る。

この時、馬庭は漫画家を辞めたいが為に陸上選手になりたいと言っていた。






「馬庭(ばにわ)……」

「どうした」

「今度、俺の走りを見てくれ。そうしてから俺をただの夢追い人かどうか見極めろ。牛瀬(うしらい)」

「黙れ。俺はお前に失望した。これから漫画家になって、お前の素晴らしい原作を作画出来ると楽しみにしていたのに。才能と言うのは怖いな。自分がいかに凄いかなんて分からずに、叶わない夢である陸上選手になってオリンピックを目指すんだろ?」

「牛瀬……」

「お前が考えた、『まどろみ』と言う作品は俺のデビュー作にさせてもらう」

「……」

牛瀬は宿り木に戻る。

「……でも、まどろみもボツにされた。そして、俺は馬庭の走りを一度も見ていない」

「見れば良いじゃん」

虫朱は呟く。

「亡くなったんですか?」

「ああ……死んだよ。馬庭は病気だったんだ。どうやら陸上選手になって数年後から発症していたらしい」

「……」

「さっきの会話が俺とあいつの最期の会話だった。フン……漫画家になれば死なずに済んだかもな」

「……?」

「ああ、病気を発症したのは過度な運動とストレスが原因らしい。まあ、それ以外にもあるんだろうけど。親のプレッシャー感じて、無理したんだろうな……」

牛瀬は何かを書く。

「……二人で考えた漫画の主人公だ」

虫朱は本を出す。

「馬は走る 花は開く 人は書く 自分自身になりたい為に」

「……?」

「これは小説家、夏目 礎石(なつめ そせき)が言っていた名言です。馬庭さんはアイデンティティを求めていたんじゃないでしょうか。そして貴方も」

虫朱は花を出す。

「これはマリーゴールドです。花言葉は友情」

幅重は話す。

「綺麗な花だ」

男は後悔していた。前を向いていた友人に対し自分は漫画の様なフィクションしか見ていなかった事に。馬庭を別の道に行かせた事に。

「俺はそんなアイデンティティを持っていない。お前に俺と馬庭の何が分かる。それに名言なんて自分の評価を上げたいが為に付く嘘だろ!」

牛瀬はその場を去る。

「あいつが俺を捨てただけの事だ……」

虫朱は牛瀬が書いた一枚の紙を見る。

「……名前はパーヴェル・幅重。ですか」

牛瀬は昔を思い出す。

「馬庭……」

「誰が言ったか分からないが、こんな言葉がある。馬は走る 花は開く 人は書く 自分自身になりたい為に。この言葉は作者が心の中に秘めていた大切な言葉。死後の手帳に書き記していたらしい」

「それがどーした!」

「僕は僕らしく生きる」

「一人で生きても、自分自身なんて分からねえだろ!」

「……」

「そんな名言にしがみ付いている暇あんなら、俺と一緒に漫画家なろうぜ。俺の生き方はお前と組む事だよ」

「カッコつけるな。ヒモ」

「誰がヒモだっ!」

牛瀬は思い出す。

「あいつ、名言好きだったからけど、面倒であまり聞いてやれなかったな。俺が名言嫌いだったからだけど……」

男は自分の生き方に悔いた。

「俺の生き方はもう腐ってるな」

別の道を歩むからと、関係を断つ事は無かった。互いに極める事に変わりは無い。後悔をする理由も無い。生き方を信じて、今此処にいるのも、今天に昇るのも。その結果であると。

牛瀬の目の前には、パーウェル・幅重がいた。

「……牛瀬。行くぞ」

「……ああ」

牛瀬は宿り木に向かう。宿り木には虫朱がいた。

「花を一つ……」

「お待ちしておりました。マリーゴールドです」











「おい、その描いている絵は何だ?」

「美術室にある石膏像を描いてんだよ」

「それじゃそいつを主人公にしよう」

「は?」

「名前は幅重だ」

「こいつ外国人顔だぞ。なら、パーウェルとかにしとけよ」

「パーウェル・幅重?」

「ハーフか。悪くないな」

「……ああ、これから一緒の道で頑張ろうぜ!」

「そうだな。僕も走れる所まで走ろう」