複雑・ファジー小説

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.314 )
日時: 2016/10/28 18:06
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

一人の男性は職場にいた。

「そんな……」

「君には辞令が出ている」

「……」

「新しい環境に行けば、君もいつかは役に立つ時が来るよ。ああ、この言い方だと、まるで君が役立たずの給料泥棒って言い方になるね」

「すみません……」

「地方でも頑張ってくれ。そしてまた……此処へ成長した姿を見せてくれよ?はっはっは」

男性は職場で語る。

「僕の名前は織戸カヲル……。僕はもう人生が嫌になった。これまでパワハラを受けていた僕は」

辞令について話していた上司が織戸の前に行く。

「お前は無能だ。社会の歯車にもならない鉄屑だ。ゴミ以下のゴミ袋だ。使えない馬鹿は地方の田舎で雑草喰ってろよ」

周りの人間は織戸の方を冷たい目で向く。

「僕は……」

ある日、大量の歯車が廻っている中に人がいた。その人は一つの花のみを持ち歯車の中にずっといた。

「狂いたい。だが狂えない」

人は次第に衰弱し始める。居場所の無い彼は花を持ったまま頭の上に大量の何かに、押しつぶされそうになっていた。

虫朱は本を読む。客が話す。

「それは……何ですか?」

「ああ、これは馬庭(ばにわ)さんと言う人が描いた小説ですよ。牛瀬さんと言う漫画家からお貸しした物です」

「……馬庭さんは有名な人なんですか?自伝を書くんですから」

「ああ、違いますよ。馬庭さんが個人的にえ〜と、小説を書きこむサイトで書いていたそうです」

「んー、良く分かりませんが……」

「タイトルは、狂わずの歯車。全てに負けた男が歯車の運命を辿る物語です」

織戸は重い足を上げながら歩く。

「どうして僕ばかりが……」

歯車と共に生きる人は花を見る。

「私は何もしていないのに、負けている。勝負すらしていないのに負けている。何がそんなに駄目だったのか。何で私は……」

織戸の目の前には上司が現れる。

「お前が不良品だからだよ」

「……」

客は内容を見る。

「随分とネガティブな内容ですね」

「ええ、ただ考えによっては死んでも負けていないのかもしれないですけどね」

「……?」

歯車の中で人は空を見上げる。

「私には、道が無い。まっすぐと続く道が無い。私には、空が無い。まっすぐと続く空が無い」

織戸は呟く。

「僕にはもう……」

「今の状況を見れば、私は可哀想な人だと思うだろう」

人は笑う。

「僕は世界一不幸な人間だ」

「ただ、私には一つだけ保っていられる理由がある」

「……」

人は花を持ち上げる。

「この花の名前はガーベラ。花言葉は希望、常に前進」

織戸はドアを開ける。

「……」

目の前には、大量のガーベラがあった。

「織戸……」

客は上司だった。

「さて、待ち合わせの暇つぶしにはなりましたかね」

「はい」

織戸はガーベラを見る。上司は呟く。

「何してる。ポンコツ。行くぞ、最後の晩餐だ。はっはっは!」

織戸は呟く。

「この花の名前は何ですか?」

「ガーベラ。花言葉は希望、常に前進です」

「……」

人は話す。

「希望を持っていれば、こんな状況でも私は此処にいる事が出来る。例え、利用されていても。むなしくても。私には後悔等無い。これまでも、これからも」

人は希望を持ち、無機質な歯車の中懸命に笑う。

織戸は上司に話す。

「僕は……新しい職場で頑張って必ず戻ってきます」

「……!お前じゃ」

「それじゃ僕は……」

織戸はその場を去る。

「なんだ、あいつ気持ち悪い……」




人は、結局何も出来ず死んで行く。花だけを残して。