複雑・ファジー小説

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.337 )
日時: 2016/11/07 18:44
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

似田は乾の元へ行く。

「石像?」

「はッー!石像ぅ!恐怖体験って言うレベルじゃないよ!」

乾は話す。

「石像ってあの登岐目 海の石像?」

「え?知ってるの?あの石像?」

「うん、咲川博士が調べてたからね」

「……」

似田は落ち着く。

「……あの石像って何?巨大だし」

「あれは……朝日と言う施設が創り出した英雄よ」

「英雄?」

「そう、この施設は戦時中から存在していてその時に活動していた暗殺候補生も一流の暗殺者と共に第二次世界大戦に出動してたのよ。その時にいたメンバーが登岐目 海(ときめ かい)。

妻と息子を置いて戦争に旅立って戦死。此処に帰って来たのは骨だけだった。遺骨は妻が今ある施設の隣に埋めたわ」

「……まあアンノウンの隣は墓地だからね」

「朝日は日本軍の英雄としてこの石像を建てたわ。登岐目の伝説は一人歩きして、登岐目は銃を持つ敵を素手で戦ったとか。

戦争を英雄談にするほど軽くは無いんだけどね。戦国時代とか英雄多過ぎでしょ」

「……」

「でも、如月って人が石像が待ち人なんてどう言う事かしら……まさか……」

似田は立ち上がる。

「僕、戻ります。戻ってもう一度話すよ。乾さん、話に付き合ってくれてありがとう!……僕、如月さんと話し合ったら、乾さんに伝えたい事があるので。此処で待っていてください!」

似田は笑い、石像に向かう。乾は呟く。

「わ、私じゃ駄目だよ……似田」

似田は石像へ辿り着く。如月は石像の肩の上に乗っていた。似田は鍛えられた肉体で石像を登る。

「如月さん。貴方は……幽霊ですか」

「……違うよ。私は女神……」

「え?」

「なんちゃって。正解、成仏出来なかった幽霊よ」

「……幽霊っているんですね」

如月は語る。

「私には夫がいたのよ。そう、彼。英雄に成り下がった登岐目。彼は私に約束をしたのよ」

登岐目は如月に話す。

「絶対帰るから!だいじょーぶ!」

「笑顔で気楽そうに戦争に向かった彼が私の中での最期の姿でした」

「……」

「終戦を記念しても、彼は此処には来ません。約束したのに此処には来ませんでした。私を置いて、待たせて。

私は国の為に死んだ英雄と共に遺骨と埋まりました。それが当時の日本の幸せだったのです。

『国の為に死んだ英雄と一緒に眠れるなんてとても光栄だね。それじゃ英雄に宜しく』」

「……」

「英雄の妻は死んでも誰も悲しみませんでした。英雄の妻は死んでも誰も泣きませんでした。英雄の為に命を捨てた妻として伝説になりました。

何も伝説の為に生きていた訳じゃないんです。確かに私も登岐目と一緒に眠りたいくらい愛してます。だけど、英雄と眠りたいなんて思っていないんですよ。

私の思考能力は幼稚園児と間違えているんですか?ふざけんなって話です」

「……だ、黙る事しか出来ないけど」

「良いんです、一人でも私の思いが伝われば。私は海君の元へ天国へ行けます」

「……う、うん」

如月の身体は消え始める。

「時の流れは恐ろしいです。ただ、私は幽霊なので他人事ですが。それじゃ暗殺者に言うのも皮肉ですが、人の命を大切に!バイバーイ!あ、天国から見守ってるねー!」

如月は消える。

「……さよなら」

似田は呟く。

「頑張ろう。皆の為に」