複雑・ファジー小説

Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.41 )
日時: 2016/07/19 17:15
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

道ノ里は、家に入り込む。靴は、外に置く。


「先生として貴方の自殺を止めます」


「……いや、冗談で」


「冗談でも死ぬなんて言わないで下さい」


「……え〜と」



地獄門は苦笑いをする。


「あはは……。不良が熱血教師によって更生するドラマのDVDを見せたからかな……!」






道ノ里は叫ぶ。



「後ろ向きに過ごしている貴方は見たくありません。ちゃんと前向きに生きて下さい。誰だってずっと絶好調で生きている人間なんていません。挫折を乗り越えないと駄目なんです。人生は物語は貴方が生きている限り終わりません」



「道ノ里先生……」





二人は抱き合う。



「せんせ〜い!」

「黒姫……」




道ノ里はバッテリー切れを起こし倒れる。



「……え?先生!先生!」




地獄門はタバコを吸いながら道ノ里の所へ向かう。



「ごめんね?ちょっとお邪魔するよ」




地獄門は道ノ里を運ぶ。


「最近バッテリー切れが激しいね。メンテナンスが必要かな?」



黒姫は驚く。



すると、タバコの煙で火災報知機が作動。スプリンクラーが発生。家は水浸しになる。




地獄門は舌打ちをする。


「ウサミミ族のような獣じゃないくせに何やってんだい?」



「え?」


地獄門は道ノ里を連れ去る。





黒姫はスプリンクラーの水を浴びる。

「あ、ちょっと!目が痛い……。やっぱ、自信無くしそう……」



黒姫はいじけて水浸しになったままぼーっとする。






その様子を、道ノ里を追いかけていた白咲が見る。




「……いけないな。そんな事をしては。差別する者は全員火葬してあげないと」



すると、白咲の後ろに細多喜が現れる。



「兎ごときが騒がないで貰いたい」


「……何の用で?」



「実は……」















地獄門は道ノ里を運び香具師達がいる車庫へ行く。








香具師は何かを書いている。




望月は手を上げる。




「え〜……我々のチーム名は月兎組つきうさぎぐみ!」



「妖怪が出て来るゲームで読みは違うけど同じ漢字の組織名がいるので却下」




一人の女性が手を上げる。



「はい、宇曽羅うそら



「簡単ね……。我々の組織の名前なんて一択しか無いわ。


それは……



ムーンラビット」


「英語訳しただけだね。却下」





にのまえは答えを考えるが悩む。



「もう少し良い名前が出そうなんだよな!」












すると地獄門が道ノ里を運びながら車庫の中に入る。


「ごきげんよう、弱き兎共」





細多喜は地獄門の目の前に行く。


「何の用だ……。俺達はこの車庫に傷一つ付けていない……」


「知ってるよ。てか当然だよ。


まあ、身分不相応にロケット開発なんて馬鹿みたいな事が出来る訳無いと思ったら、ウサミミ族でも特別扱いされている一が入りやがるからちょっとね……」



「それよりお前……何で濡れているんだ?」


細多喜は地獄門が濡れている事に気付く。




「いや、それはあれだね。あの〜事情があって……」



「お前等……ご主人様にタオルを」



「あ〜……いや、その」




「俺達は貴方のおかげで生きてる。これからも宜しくご主人様……」


「……ご主人様って呼ぶな。調子狂うよね?」





細多喜はパンフレットを持ち出す。



「一が此処に来たおかげで、月面ロケットが完成しそうだ……。これで我々は人間の迫害から逃れられ、月で生活出来る……」



「いや、僕も人間だよ?」



「人間がこんなに優しい訳が無い。

地獄門は立派なウサミミ族だ……」



「……あははあははは!……もうやる気無くなるよ〜!少しはさ、僕を疑えよ!何で疑わないんだよ〜!」







一は地獄門と話す。


「相変わらず優しいな!俺も自慢出来る親友だ!」










一方、細多喜は白咲と話していた。




「そのウサミミ……ククク、まさに俺が求めていた完璧な耳だ」


「……?」



「前から思っていたが素晴らしい」


「それじゃ何故無視をしたんだい?」


「馬鹿か?貴様。こんなウサミミに平気で平常で話しかけられる訳が無いだろう?」





「……どうするつもりだい?」



「簡単だ。剥製にする」



「……!!?止めろ!」





細多喜は白咲の耳を斬り飛ばそうとする。



その時、水浸しの黒姫が現れる。


「寒い……風邪引く……」



白咲はウサミミを駆使し、黒姫を包む。



「ウサミミはね。人を助ける為にあるんだ。君の私利私欲の為にあるんじゃない。


ウサミミをなめないで欲しいな」




「……まさに、パーフェクトだ」














そして、僅か一日にしてウサミミ族は月面ロケットを完成させる。燃料等は、細多喜や地獄門の支援もあり問題はクリア。





白咲と一と香具師達ウサミミ族はロケットに乗る。





道ノ里は白咲を見る。



「私は……」



「今度地球に戻ったら、餅ピザを食べても良いかい?」



「はい……」











ロケットは月へ向かう。






元々強靭な身体を持つウサミミ族はロケットの環境にも直ぐに慣れる。



「さて、月には酸素が無い。だが我々は真空状態でも生きられる。絶対に月を開発させ……。





愚かな地球を滅ぼすのだ」









香具師と一と白咲はそれに反対するが……。













キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。






神荷学園のチャイムが今日も鳴る。


其処にはウサミミの人々はいなかった。


日本中にも世界中にも。


全員、ロケットで月へ向かったのだ。




そして、あるべき普段の日常が戻る。


そして、人々は想うのだ。



「あれは夢ではないのか?一日で月面ロケットを造った事も、兎の耳をした人間がいたのも、我々人間がウサミミ族を迫害した事も、月にロケットで向かうと言う事も」














しかし、決して夢ではない。何故なら……。





道ノ里は教室に入る。手に持っていたのは古文の教科書。そして、兎の耳をしていた。





「それでは授業を始めます」














第二幕 月兎 完