複雑・ファジー小説
- Re: イエスタデイ・ワンスモア【オリキャラ募集中】 ( No.427 )
- 日時: 2016/12/27 15:14
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
土井と大木は互いに銃を構える。
当然、弾の予測なんて事は出来ない。とにかく先手必勝。二人は今まで過ごした実践を思い出す。サバイバルゲームの様に障害物はほぼ無い。道路の真ん中に正面向いて銃口を互いの心臓を狙う。頭、足、腕、銃、心臓と言う選択肢から彼等は心臓を狙う事に決めた。土井と大木の互いの武器はその拳銃一つだけ。つまり拳銃を壊してしまえば確実に勝利を掴む事が出来る。見事に暗殺成功。全ての過去に終わりを告げる。だか彼等はあくまでも心臓を狙う。殺人鬼とは違う事。それは自分の仕事に誇りを持っていると言う事である。大木は死体を背負い、土井は死体を蹴落とす。その違いで暗殺に影響が及ぼす事は無い。彼等は決して正義の味方では無いし、スパイアクションの主人公でも無い。人を殺すと言う事にどれだけの罪を背負い生きていくか。何を守って生きていくか。互いに人生を失いながらも二人はこの道路で殺し合う。それにどれだけの価値があるのか。彼等は勿論、誇りを持っているが決してその誇りを自慢しようとは現時点、大晦日では思っていない。互いの価値を知り、直、けじめの為自分の価値の為にかつての自分を殺す。
空は真っ黒だった。彼等は何をしようとも何も変わらない。
世界が救われる訳でも無い。
世界が終わる訳でも無い。
この世には最初から何も無い。
彼等に隠れる所は無い。
朝は寂しい。昼は人がいる。夕方は蒸発しそう。
明日はどうでもいい。昨日の自分を彼等は見ていた。
彼等はクズだ。人殺しだ。殺人鬼だ。死んでも良い人間だ。ゴミ以下のゴミ袋だ。金があれば良い。
だが、彼等には誰も理解されない生きる所がある。死に場所がある。
空の下、電灯が消えた夜。
全てを互いに知る赤の他人は互いに銃を向ける。
先に動いたのは土井だった。
土井は引き金を引き銃弾を排出させ勢い良く大木に発射される。
その銃弾は今までのどの弾丸よりも重い。
大木は銃弾の予測をし身体を少し避け致命傷を避ける。そして大木は同時に銃弾を撃つ。
その銃弾は土井の思いより少し軽い。
土井は足を撃たれる。
互いに銃弾は肉の中に入り血が吹き出る。
何も変わらない最終決戦は終わりを迎える。
「暗殺者は無駄撃ちが大嫌いでね」
「……お前もか」
互いに銃弾は一発しか込められていなかった。
銃弾の重さは殺意。
土井は足から血を吹きだしながら大木を殴る。大木は肩から血を吹きだしながら土井を殴る。
歯も折れる程の殴り合いの末、勝ったのは大木。
「うおおおおおおおお!!!」
「……!?」
大木はガードレールからネリチャギ(かかと落とし)をする。
「土井……」
「お前、殺す気無かったろ。暗殺者の……恥め。俺を殺せ!」
「けじめの為にかつての俺の身体を殺す訳無いだろ。それに……お前も仲間に入ってんだよ。俺を変えてくれた人に」
「……今までごめんな。この体で勝手に好き勝手してよ」
「俺こそすまないな。ネリチャギして」
二人はタバコを吸いながら、新年を祝う為酒を飲む。
それ以来、彼等は会う事は無かった。
静かなる最終決戦は終わる。
次回、多分最終回。
ベリーベルは土井を見る。
「……このままハッピーエンドなのかね……」