複雑・ファジー小説

Re: 朗らかに蟹味噌!【短編集】 ( No.86 )
日時: 2021/05/21 21:32
名前: ヨモツカミ (ID: r9WvvYgW)

♯60 さよならアルメリア

 星になりたいの。わたくし、星になりたいの。

 汚らしい鳥が何の用だと雲雀が笑う。カササギも駒鳥も、皆同じ目をして、わたくしを見ております。

 星になりたいの。わたくし、お星様になって、空でなら輝けるのではないかと、そう思いますの。

 ギイギイと品のない声。鷹のように気高く羽ばたくこともなければ、白鳥のように美しき翼も持たない。その歌声すらも耳障り。と、するならば、確かに星にでもなって、誰にも迷惑をかけぬよう、夜空の隅で瞬くのが良いだろうと、小鳥たちが嗤った。

 星になりたいの。ねえ、わたくし。星に。

「あらシンデレラ。お掃除がまだ終わってないじゃない!」
「残念ね、シンデレラ。王子様が開いた舞踏会には連れていけないわ。でも、ドレスもないのに連れて行ったところで、恥をかいただけかしら?」
「だとしたら、私達とても優しいのではなくて? 素敵な姉たちに恵まれて、あなたは幸せ者ねシンデレラ!」

 窓の外から見える、大きなお城を見つめます。今夜は、美しく着飾った女たちが、色とりどりのドレスを身に纏って、華々しく舞踏するのです。そこで輝く、一つの星になりたいだなんて、烏滸がましい願いだったでしょうか。

 わたくしが星になったなら。皆、美しいと手を叩いてくれるのでしょうか。一際輝く一等星。憧れることさえ、過ぎたことなのでしょう。

 嗚呼。わたくし、星になりたいの。

「カムパネルラ。僕達どこまでも一緒にいこうねえ」

 近くを通った少年が囁いたのを、確かに聞きましたの。


***
リハビリ。