複雑・ファジー小説

Re: 武装シンキ ( No.18 )
日時: 2016/08/08 00:59
名前: JD (ID: SjxNUQ9k)

【第3話 ガーネット】

「お母さん!お母さん!!見て見て!お花積んできたよぉー!」

「あら、綺麗なお花ね」

周りは綺麗なお花畑。
目の前には小さな家。
ここは、私が昔住んでいた場所だ。

中央都市に来る前は私はこののどかな場所で住んでいた。
静かで、風が気持ちよく。
本当に幸せだった……あの事件があるまでは。

そう、それはもうすぐ起こる。
私のトラウマ。
全てのシンキ使いが私の敵に見える理由。

一瞬で草木を吹き飛ばし。
花を散らし、風を熱風に変え。
家を破壊する……。

そして、父親を失い。
私をかばい母を失う。
母親の血を全身に受けた私は大声をあげシンキで暴れた。

全てが終わった後。
私には何もなくなった。

Re: 武装シンキ ( No.19 )
日時: 2016/08/08 09:27
名前: JD (ID: SjxNUQ9k)

「……ん、ここは?」

私はゆっくりと目を開け、周りを見渡す。
どうやらここは私の知っている場所ではないようだ。
ということは、あの金髪に誘拐されたということだろう。

ということはまずは脱出することが先かな?
ドアは一つだけ。
人の気配は……今はない。

「いつまでもここにはいられない。早く出ないと」

「出て何処に行くつもりだい?」

ベッドの横のカーテンを開けて外に向かおうとしたとき。
横から金髪の声がした。
どうやらずっといたみたいね。

私は大きく溜息をつき。

「何?監視してたの?」

「まあね、君に大暴れされたら困るし」

私は野生の動物か何かかしら?

「別にそんなことしようなんて思ってなかったわよ」

「本当かよ……」

どうやら信じてないみたい。
まあ、学校のあの様子を見られたらそう思うしかないわね。

「君に話がある。大人しく着いてきてくれ」

「……嫌だと言ったら?」

「ならば、この子の治療は中断させてもらう」

金髪は私の横のベッドのカーテンを開ける。
そこには胸を打ち抜かれた恵理がぐっすりと眠っていた。

「恵理!!」

「今は安静にしといてあげてくれ」

「ど、どういうこと……」

「当たり所がよかったとはいえ重症だったのには変わりはない」

金髪がカーテンを閉めてもう一度私を見る。
真剣な目で、まっすぐと。

「君に協力してほしいことがある」

Re: 武装シンキ ( No.20 )
日時: 2016/08/08 09:40
名前: JD (ID: SjxNUQ9k)

「協力?何をすればいいのよ」

「まあ、それに関してはみんなが集まってから説明するからちょっと待ってね」

皆。
っと言うことは他にもたくさんの人間がここにいるということね。
今は大人しくしておくことが吉かな?

「もしこの作戦が成功したらの報酬だが、まずは君と恵理君のこれからの安全は確保させてもらう」

「……信用できる?」

「それに関しては信じてもらいたいな」

この金髪は多分嘘を言わない。
だけど、本当に信じていいの?
わからない……だって、彼はシンキ使いだよ?

私の住んでいた場所を壊し尽した。
でも、恵理の安全が約束されるのなら。

「わかった。協力する」

「恵理君の事になると君は素直だね」

「なっ!?べ、別に関係ないわよ!」

金髪はにこっと笑いながら私の顔を覗く。
だって、当り前じゃない。
私の友達なんだから。

「俺たちはシンキを使って色々な事件を起こしている者達を止めるために作り上げた組織の一つ」

「組織名を『ガーネット』と呼んでいる」

なるほど、だからシンキ使いの人間がここに集まっていると言うことね。

「だけど、暴動を起こすシンキ使いも集まり組織化され始めている」

「それを止めるのもまた俺らの仕事の一つだよ」

「ふーん」

「興味なさそうだね……」

まあ、ないわね。

「協力するのは今回だけよ」

「そっか、まあ無理強いはしないよ」

Re: 武装シンキ ( No.21 )
日時: 2016/08/08 10:04
名前: JD (ID: SjxNUQ9k)

「ここだ、入ってくれ」

「私が開けるの?」

「……わかったよ」

金髪は少し呆れた様な顔をドアを開けた。
というか、私客人よね?

中にはソファーとテーブルが置かれていて、まあ割と高そうな感じ。
まあ、一番注目するべきなのは……。

「お?リーダー、そいつが噂のシンキ使い?」

「あーらま、かわいい子じゃない」

青年って感じの人と、それなりに歳の行っているおば……お姉さん。
この二人もシンキ使いなわけね……。

「んで?協力してくれるわけ?」

「ああ、協力すると言っていたよ」

「そう。じゃあ、自己紹介ってとこね」

女は私の前に立ち。
両手を広げてその手に神器を構えた。
どうやら神器は銃。

「私はホーク。相棒は銃よ?名前は『ライトニングホーク』」

「俺はリース。神器はチェーンだ」

「えっと、その神器は名前がないんですか?」

私がふとそう言うと、リースは意外そうな顔をする。
そのあとホークはゲタゲタと笑いだした。

「な、名前ねぇ……」

「『チェーンクロス』とかどうです?RPGとかだとよくありましたよ」

「……んー、じゃあそれでいいや」

というわけで勝手に私が命名しちゃったわけだけど……。
よかったのかな?

Re: 武装シンキ ( No.22 )
日時: 2016/08/08 11:35
名前: JD (ID: SjxNUQ9k)

「早速だが話をさせてもらうぞ」

金髪がテーブルをトントンッと叩き注目を集める。
そして後ろのホワイトボードに何かを書き始めていく。
どうやら敵の組織の状況とアジトの情報のようだ。

「我々を敵対視しているトパーズからの宣戦布告を受けた」

「この中央都市の我々、ガーネットが指揮をとっている場所での抗争が発覚した」

「あのジェットと言う男もまたその一人だ」

ああ、ジェットてそういう感じの奴なのね。
確かに何度かスカウトしに来たけどめんどくさくて追い返していたのよね。(物理的に)

「そして、トパーズの部隊がどうやらこの場所を狙い始めているということも発覚した」

「ぼ、ボス……。それって結構まずいんじゃ……」

「ああ、相当な。ガーネットが納めてる地域に奴らの基地を残すというのは不安要素が高すぎる」

「だからそれを取り除くってわけ?」

「ああ、正解だ。桜花」

敵対しているトパーズも多分多くのシンキ使いがいるはず。
簡単には突破できるはずはないけど……どうするんだか。
っていうか。

「なんで私の名前知ってるの?」

「え?だって廊下で恵理君が君を呼んでいたから」

そういえばそうだった……。

「じゃあ金髪の名前はなんなのさ」

「え?俺?俺はヒカリっていうんだ。よろしくな」

ヒカリは手をこちらに差し出す。
こいつは本当に私を信じているみたい……。
悪い気はしないけど……その手を取りたくなってしまう。

私は手を握り、挨拶を交わす。
だが、それは一瞬だ。
この協力関係は今回だけだろうから。


【第4話に続く】