複雑・ファジー小説
- Re: 私と晴明の陰陽師記(仮) ( No.2 )
- 日時: 2016/08/08 22:21
- 名前: 白夜 (ID: l/9ga28M)
- 参照: 2016/08/08 19:35 投稿日
白い光が止むと、私は知らない所に立っていた。何か、昔っぽい所。建物は全て和風だし、通行人の服装は、着物らしき物である。もしかして、昔の時代にタイムスリップしたのかしら? いや、昔っぽい世界に行っちゃったってのもあるけれど。
通行人は、私をチラッと見てから何処かへ行ってしまう。それも必ず。嗚呼、こんな場所で白い花柄のワンピースなんて着てたら目立っちゃうなあ。でも着替えとか持ってないし。
……これからどうしよう。お金も持っていない、面倒見てくれる人もいない。水も食物も無い。ピンチ状態なのかもしれない。でも、ピンチ状態のままで、水とか食物が無くても1週間未満は生きていけると聞いたことがある。その1週間未満の内に頑張らないと……。
私は、目的地があるわけではないけれど、とりあえず何処かに向かって歩き始めた。
暫く歩き続けていると、大きな森が見えて来た。森に、もしかしたら何かあるかもしれない。私は僅かな希望を持ってその森へと入って行った。「危険。立入禁止」の看板がすぐ近くにあるとは知らずに。
森の中は鬱蒼としていた。茜色の空からの光が全然届いていなので暗く、不気味だというのが印象だった。とりあえず、暇だし歩いてみようかな。
歩いてみると、中はとても広かった。気付けば、入り口が何処にあるかも忘れてしまった。ついでに、何も無かった。
もう、今からどうしようかな。こんな森に入るんじゃなかったよ。うう……。
「……あれ、そこの人。大丈夫ですか?」
俯いていると、突然上から低い声が聞こえてきた。顔を上げると、長い黄色の髪を一つに括ってその上に笠を被った格好良い男性が私を覗き込んでいた。
「……え、ええ……。……大丈夫じゃ、ないです」
私はありのままの事を言った。すると、男性は少し考えると、ある事を提案してくれた。
「そうですか……。ならば、私の家に来ませんか? 二人で住めるほどの広さはあります。……ああ、迷惑じゃないですよ、寧ろ、一緒に住める人が増えて賑やかになるのは嬉しいですから」
男性は、私の目を見て言った。……確かに良いかもしれない、この人は何故か信頼出来るし、相手も歓迎してくれるし。
私は二つ返事で答えた。すると相手はニコリと笑ってくれた。
「それでは、暫くの間宜しくお願いしますね。私は橘敦政(たちばなあつまさ)という者です」
「敦政さんですね。私は哀川雪菜(あいかわゆきな)です。こちらこそ、宜しくお願いします」
軽く頭を下げてお互い自己紹介をした。そしてそれが終わると、敦政さんと一緒に、この広い森を抜けて行った。