複雑・ファジー小説
- Re: 陰陽花伝 ( No.3 )
- 日時: 2016/08/09 08:11
- 名前: 白夜 (ID: l/9ga28M)
- 参照: 2016/08/09 08:10 投稿日
敦政さんの家は、森を抜けて数分歩けば着く所にあった。見た目は周りに建っている物と一緒。まだこの世界(時代?)に来てから1日も立っていないのに見飽きてしまうぐらいに同じ見た目の家がある。
「どの家にも個性が無いですよね、私も思います。はは……。まあ、どうぞ入って下さい」
敦政さんは私の思っていたような事を口にして苦笑いした後、扉をガラガラと音を立てて開ける。 そして、家に入るのを促してくれた。なので、遠慮無く入る。すると、狭くも無く広くも無い普通の広さである玄関が目に入る。
履いていた靴を脱いでそこに置く。敦政さんも履いていた、草履を脱ぐと廊下へと裸足で歩いていった。私は付いていく。歩いた廊下はそんなに長くなかったのですぐに、畳の匂いが微かにする和室に着いた。
「さてと、私は今からご飯を作るので其処に座っといて下さい」
私は、敦政さんが指差した小豆色の座布団の上に星座する。
空が茜色になる時間だからそろそろ晩御飯を食べても可笑しくない時間か。
目の前にはちゃぶ台があり、その上には漆塗りのお箸と白の湯呑が乗っている。それを見ただけなのにお腹がぐうぅとなった。その音を聞いたらしい敦政さんはクスリと笑う。うう、恥ずかしいな。 私は自分の顔が少し赤くなっている事が分かった。
恥ずかしいと思う気持ちを引きずったまま何分か待った。
そして、晩御飯が出来たのか、お盆に色々載せてやって来た。
「待たせてすみませんね、雪菜さん。
今日の晩御飯は、豆腐とわかめの味噌汁、白米、アジの塩焼きです」
何と素朴な晩御飯なんだろう。まあ、こんな昔風の世界(昔の時代かも)なんだから当たり前かな。文句は言わない事。
私は敦政さんが向こう側に座った事を確認すると、私達は同時に手を合わせて言う。
「「頂きます」」
私は箸を持ってとりあえず味噌汁から食べ始める。
「ん、美味しい……」
ありのままの感想を言う。すると私と同じように、味噌汁を食べていた敦政さんは微笑する。
「それは良かった。私、料理の腕にはかなりの自身があるんですよ」
なるほど、そういう事なんですね。と相槌を打った。会話はそれだけであり、その後は食べ終わるまでずっと無言だったけど不思議とその雰囲気を嫌だと思う事は無かった。
「ご馳走様でした。敦政さん、美味しかったです。……私、次は早速歯磨きしたいなと思っています」
手を合わせて言った後、要望を言う。歯磨きがあるのかは知らないけれど。
「歯磨きですか。それならこちらへ」
歯磨きは此処にあった。
敦政さんがある所——今でいう洗面所だろう——へと私を連れて行った後、歯磨きをしようとしたが、全くやり方が分からなかったのでそれを教えてもらった。
見た事無い道具を使う必要があったので少し時間がかかった。
そして次は「湯屋」という、公衆浴場に連れて行かれた。
敦政さんが湯屋で私の分の料金まで払ってくれた後、浴場は男女別なので一旦別れた。
そして、浴場でさっさと体を洗って何分かお湯に浸かった後、そこから出て脱衣場で着替えると、私は待合所へと行った。
暫く其処で待っていると、赤髪の白装束を着ていて私と余り歳が変わらない感じの男が脱衣場から出てきた。周りの人は、その人に声をかけていた。有名な人なのだろうか。
赤髪の白装束は私の事を数秒じっと見ていたかと思えば、後で遅れてやって来た敦政さんの方を振り向いて思いっきり睨んだ。
その時、敦政さんも赤髪の白装束を睨んでいたけど、結構怖いと感じた。
睨み合いが終わると赤髪の白装束はささっと湯屋から出てしまった。変な奴。
「待たせてしまってすみません。ってご飯の時も言ったような気がしますね。とりあえず、帰りましょう」
敦政さんは私の目を見て言うと、湯屋から出て歩き出した。
……その時には、赤髪の白装束を睨んでいた敦政さんが怖かったことが、どうでも良くなっていた。
そして暫く歩いて家に着いた。その後、用を足して寝巻に着替えた後に、敦政さんが敷いてくれた布団に早速潜って寝転ぶ。
今日はホントに色々あったな……。
そう思いながら、すぐに暗闇へと意識を落として行った。