複雑・ファジー小説
- 赤毛のリン ( No.11 )
- 日時: 2016/09/15 19:17
- 名前: 亜咲 りん ◆1zvsspphqY (ID: 9/mZECQN)
私はアン。赤毛だから、アン。けれども、みんなは私のことをリンと呼ぶ。なんでかな。
朝、目が覚めると私はいつもベッドの上にいるのです。なんだかとてもきれいな夢を見た気がするけれど、それを振り払って起きます。リンは良い子なのです。
そして、おとなりで一緒に寝ていたくまさんにおはようのごあいさつをします。ママから誕生日にもらった、大事な大事なお友達なのです。
そうしてリビングに行くと、いつもエルフお姉ちゃんがソファに座っていて、なにか四角いものを持っています。それはぴかぴか光って、面白い。リンも欲しいって思ってしまう。リンはいけない子なのです。
「エルフお姉ちゃんおはよっ!」
「ぐえっ」
ばあっ、とエルフお姉ちゃんに飛びついて、朝のごあいさつをします。お姉ちゃんの長い髪が揺れました。お姉ちゃんの髪は私の赤い髪と違って金色で、とてもサラサラです。美人で可愛くて、リンの自慢のお姉ちゃんなのです。でも、お姉ちゃんは、なぜだか苦しそうに息を吐いていました。大丈夫かな、と思いながらも、リンはくまさんをぎゅ、とします。
「……お、はよ、リン……」
「うん! くまさんも、おはようって言ってるよ」
あ、距離が近かった。リンは1歩下がって、きちんとおじぎします。リンはきふじんなのです。
「おー、リン。今日ははやいな」
「あっ、アルお兄ちゃんもおっはよー!」
リンと同じ赤い髪のアルお兄ちゃんがリビングに入ってきました。すぐさま飛びつきます。ものすごく背が高いのにひ弱なお兄ちゃんは、床に倒れ込みました。リンは力持ちなのです。
お兄ちゃんのお腹の上で、くまさんもごあいさつします。
「ん!」
「うーん、わかったわかった」
お兄ちゃんは笑ってくれました。お兄ちゃんはとってもかっこいい。リンの自慢のお兄ちゃんなのです。
「相変わらず、笑わない子ねぇ」
いつの間にか、ママもここに来ていました。すっごく怖い顔でエルフお姉ちゃんを見ています。いつもいつも、ママはお姉ちゃんにひどいことを言うのです。
「少しくらい、笑ったらどうなの?」
「おい母さん、そんな言い方っ……」
「私はあなたをわざわざ引き取ってあげたんですからね」
「わざわざって……」
「アル」
リビングに険悪な雰囲気が流れます。
「あの人ったら、とんでもない『お荷物』を残していったものだわ」
そう最後に吐き捨てて、ママは出ていきました。
「エルフ……ごめんな」
「別にいいのよ」
お兄ちゃんが震える声で言います。その言葉にふるふるとお姉ちゃんは涼しげな顔で首を振っていたけど、その顔は泣きそうに歪んでいるような気がしたのです。
リンは俯くお兄ちゃんとお姉ちゃんにぎゅ、と抱きつきました。
「ん、リン?」
「……なんでもないよ」
ぼそり、と呟きます。
アルお兄ちゃんは、そんなリンの頭を撫でてくれます。エルフお姉ちゃんも、リンの背中をぽんぽんと押してくれました。
ママの言っていることは、リンには難しくてよくわかりません。だけどリンは、こんな風に、アルお兄ちゃんとエルフお姉ちゃんと一緒にいたい。これからも、ずっと。
「だいすきだよ」
そっと呟いて、さらに強く抱きついてみせます。
この2人はリンが守ってあげるんだ。だってリンは、強い女だから。