複雑・ファジー小説

ムカシバナシ『左手』 ( No.11 )
日時: 2016/10/02 12:11
名前: のあ ◆chbMkOQ7W6 (ID: RQnYSNUe)

4/4 PM??:??
独side

「ようこそ!孤独サーカス団員の皆さんと、新人団員さんたち!」

何でお前がここにいる?

何で先輩たちも此奴のことを知っている?

孤独サーカス団員?

お前は何がしたいんだ?

そもそも、俺は何でこいつを知っているんだ?

******

3年前

俺な好きな人が死んだ。いや、死んだというより「動かなくなった。」

皆泣いてた。遥瑠も泣いてた。俺は泣き叫んだ。

彼女_山内(やまうち)密葉(みつば)が植物になってしまった原因は、交通事故。

その事故に遥瑠も巻き込まれ、左眼が失明した。

俺は信号を無視した運転手を恨んだ。一時は遥瑠も恨んだが、どうにもならないとわかって辞めた。

彼女のいない世界なんて、耐えられない。

中学に入学した俺は、もう何もかもがいやだった。小学校からの友達とも距離を取り、独りで殻にこもる。

もう死にたい…そうだ、何も変えられないなら、自分が消えればいい。

とある廃墟ビルの屋上に腰掛ける。俺が死んだら、皆どんな顔をするだろう。

誰も…悲しまないよな。

悲しまないと思うからこそ、簡単に死ねるんだ。

_じゃあな。世界中の人間共。

勢いよく飛び降りる。風が全身に染み込んで気持ちいい。

これで楽になれる…そう思っていたんだ。



_目覚めた場所は、サーカス会場だった。

俺は何をしていたんだっけ。あぁそうだ。廃墟ビルから飛び降りて…。

それじゃあ、ここは天国か?それとも地獄か?

いろいろ考えてると、目の前にピエロが立っていた。

「!?なんだよお前!」

俺が思わず後ずさると、ピエロはクスクスと笑う。

「君が独君だね?…ボクはヨル。見た通りピエロさ。きみは確か飛び降り自殺未遂をしたよね?」

声的に男性だろうか。少なくても俺より年上に見える。

服装は普通のピエロの姿だ。顔は仮面なのでよく分からないが、仮面の頬の部分に三日月のマークが描かれていた。

というか、自殺未遂?確かに俺は死んだはずだ。

「君は飛び降りた後、ぎりぎり一命を取り戻した。ただし、左手を失ってね。」

「…は?」

何言ってるんだ此奴は。左手をなくした?何言ってるんだ。

「君に選択肢をあげよう。一つ目は、このまま君のお望み通り死ぬこと。二つ目は、条件付きで君を左手のない状態で生き返らせること。」

そんなの…

「そんなの…死んだ方がいいじゃないか!」

ピエロはため息をつき、

「そういうと思ったよ。でもね。君は誰も悲しまないと思っているだろうけど、実際には皆悲しんでいるんだ。両親や親戚、クラスメイトまでもね。そしてここで君が死ぬことを選んだら、ボクにチェーンソーで殺されることになるけど?」

そういうとピエロ…ヨルはチェーンソーを取り出した。かなり大きい。こんなもので殺されると思うと背筋に汗がつたった。そして俺は…

「っ…!わかったよ…。で、その条件っていうのは?」

言ってしまった。生きるって。俺が言うとヨルはチェーンソーをしまい、

「わかったよ。それでその条件なんだけど…。君は左手を返してほしいだろう?そこで、ゲームをしよう。ルールは簡単。君がボクを殺せば君の左手は返してあげる。制限時間は君が死ぬまで。君がボクを殺したら君の勝ち。ボクを殺せずに君が死んだらボクの勝ち。どうかな?」

ルールは実に簡単だが、かなり残酷なゲームだと思った。俺は返事を返そうと口を開けようとしたが、強い光に飲み込まれた。

次に目が覚めたのは病院。左手を見てみる。そこは綺麗に肩から下がなくなっていた_