複雑・ファジー小説
- ムカシバナシ『本物』 ( No.14 )
- 日時: 2016/10/09 19:16
- 名前: のあ ◆chbMkOQ7W6 (ID: RQnYSNUe)
夕雨さん
コメントありがとうございます!
更新は遅いと思いますが頑張ります…!
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4/4 PM12:20
独side
今のは夢か何かだったのか?
目が覚めると、数分前までにいた食卓に座っていた。
テーブルには食べつくした食事と、居た堪れない空気で座っている俺も含めて6人の高校生が座っていた。
「あのさ。いつか話そうと思ったんだけど…皆の過去、奪われてもらった能力とか、話そうよ。」
最初の口を開いたのは暁先輩だった。その話には賛成だった。他の5人も静かにうなずく。
「どうする?誰から話す?」
友邪先輩も口を開く。先輩はさっきのことがあってからか、少し顔色が悪い。
「それじゃあ、私話すよ。かなり昔の話だし…あ、それとも友邪話す?」
「いや。渚から話していいよ。その方が分かりやすいと思う。僕は次に話すよ。」
この二人は昔から何か関係があるのか…?
「分かった…じゃあ話すね。」
渚先輩が話し始めた_
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6歳の私は、山奥の小さな村に住んでいて、外見も今のような金髪ポニーテールでもなく、茶髪で髪の毛はぼさぼさしていた。
そんな私でも、一人、仲のいい男の子がいた。
「ねえねえらい!おにんぎょうさんごっこしよう!」
「いいよ!じゃあぼくじぶんのにんぎょうもってくるからちょっとまってて!」
彼の名前は南雲(なぐも)雷(らい)。私と同じ母子家庭で、家は隣同士だった。まあ今の現代風の家ではないけど…。
そして私の持っている人形は確か…凪(なぎ)だったきがする。凪は今の私と同じ金髪のポニーテールだった。
私と雷は毎日のように遊び、人形ごっこはほぼ毎日、かくれんぼや鬼ごっこでも遊んでいた。
『ねえなぎ。かくれんぼをしないかい?』
『いいわよ×☓。わたしがおにね!』
親同士でも仲良しだったため、夜の寝る時間以外はずっーと遊んでいた。
そんなある日。事件は起こった。
いつもどおり雷と人形で遊んでいると、少し離れたところでパアン!という鋭い音が響く。なんと、それは銃声だった。
私と雷は近くの木へ登り、緑の茂みの所へ隠れた。
木の高さはけっこう高く、かなり広い範囲が見える。離れたところに、人だかりができていた。いや、人だかりは周りだけで、中央には縛られている村人の姿があった。…察しの通りその中には、私と雷のお母さんもいた。
「っおかあさ…」
「しずかにしてなぎさ…!みつかったらぼくたちもひとじちにされちゃうよ…。」
人質にされた村人たちの周りには、マフィアやヤクザなどの分類に入ると思われる人たちがたっていて、村人たちを助けるのは不可能だった。
人質にしたと思われる一人が、大きめの声を上げた。
「あーあ。あと一人、人質になってくれりゃあ、助けてあげるのになぁ!」
その言葉を聞いて雷は上っていた木から、大声を出そうとする。
「やめてらい…!ひとじちになりたいの!?もうあえないかもしれないんだよ!」
「たくさんのひとがきえるより、ひとりだけきえるほうがいいでしょ?だからぼくは、ひとじちになる。ぼくがやつらをおびきだすから、きみはやまをくだってにげるんだ!」
「そんなのだめだよらい…。それならわたしが…」
私の言葉を遮るように、雷は木の上から手を振って声を上げた。
「そこのおとこども!!!ひとじちならここにいる!!!ぼくがおとりになるからほかのむらびとたちをかえせ!!!」
「…らい!」
私は思わず大声を上げるが、あちらの人には聞こえていないようだ。男たちはゆっくりと私たちに近づいてくる。
「さぁて、囮になるのはそこの坊やか〜い?」
「ひっ!」
怯える私とは裏腹に、雷は真剣な目で話す。
「うん。ぼくだよ。ぼくがおとりになるから、ひとじちにされているむらびとたちをかえせ!」
そういうと男はげらげらと笑いだした。
「はっはっはっ!笑わせるね!でもなぁ、おれらは人質を解放するなんて言ってねえんだよ!俺らは今捕まっていない人間は人質にしないっていう意味で言ったんだ!まんまと騙されたな!(笑)」
「っ!?」
「ら、らい!にげよう!」
私は雷の手を引く。だが、直ぐにその手は男たちによって引きはがされてしまった。
「んーまぁ折角申し出てくれたしぃ?このお嬢ちゃんは逃がしてあげてもいいがなぁ。た・だ・し!おめぇは人質行きだ。」
男は雷が逃げないようにがっちりと押さえつけ、戻ろうとする。
「いや、らい、いかないでぇ!」
雷は歩みを止めてこちらを振り向き、
「なぎさ。やくそくしよう。ぼくはかならずいきてみせる。どんなてをつかっても。だからきみもいきるんだ。またいつか、かならずあおう。」
そういって雷は再び歩き出す。雷の頬を涙が伝う。私の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「ぜったいあおうね!だけどいかないでよぉ!らいいいいっ!!!!」
この時の声は、雷には届いていたのだろうか。私はそのまま地面に倒れ、気を失った。
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目覚めた場所は、サーカス会場だった。なぜか周りには人がおらず、ステージの真ん中に仮面をかぶったピエロがいるだけだった。
「やあ、君が渡部渚ちゃんかい?」
「そ、そうだけど…だれ?」
私は怯えながらも返事をする。
「そうか。僕はヨル。見ての通りピエロなんだ。ところで、君の持ってるその人形は、名前があるのかい?」
人形…凪のことだ。
「な、なぎっていうんだ。わたしの…たいせつなにんぎょう…。」
「そう。ところで渚ちゃん。ゲームをしないかい?」
「ゲーム…。する…。」
この時の私にとって、ゲームはやりたいと思っていることの一つだった。やりたくても村には知っている人がおらず、説明が下手な私では何もできなかった。
「そうか。じゃあルールを説明するよ。この世にはね。ボクと同じようなピエロが4人いるんだ。君はその中のランというピエロにあることをしてほしんだ。君の命が尽きるまでにあることを行えたら君の勝ち。あることというのは…そのうちわかるさ。そのあることができなかったらピエロ…ランの勝ちっていうことでいいかな?」
「いいよ!」
今思えばあることというのは、殺せということだったのだろう。この時の私は考えもしなかった。
「あともう一つあるんだ。渚ちゃんは、今この服装、外見じゃ、この先心配でしょ?」
「?うん…。」
私はよくわからないまま頷く。
「だからね、君とその人形、凪ちゃんの外見を入れ替えようと思ってね。君に物と自分を入れ替える能力を与えよう。でも、このことは誰にも秘密だよ?」
「よくわからないけどわかった!」
そう、私が奪われたのは本当の自分の姿。そして、自分を人を入れ替える能力を貰った。
要するに、人の性格や体格などを自分と入れ替えるということだ。
私は人形と外見を入れ替えた。そこで今の私の外見がある。
目が覚めたのは、病院だった。特に目立った外傷はなく、直ぐに退院し、独児院へ入れられた。そこで友邪とも出合った。
後から聞いた話だと、あの後村人たちの行方は分からず、私の証言だけが頼りに捜索をしているらしいが、結局のところ、何も手がかりは掴めていないらしい。