複雑・ファジー小説

Re: 上京したら変態に憑かれました*住人募集中* ( No.16 )
日時: 2016/10/24 10:21
名前: 雪姫 (ID: z5NfRYAW)

№008



朝とお昼の境目くらいの時間。
ルンルン気分で出かける準備をする。服はなにがいいかなー。清楚に可愛くワンピース?それともワイルドにヒョウ柄?髪型とかメイクも考えないと。

「ふっふん〜」
「ずいぶんと上機嫌デスネー」
「まぁ〜ね」

なんてったって、今日はあの二ノ宮くんとデートなんだもん。
しかもお家デート!二ノ宮くんのお部屋に招待してくれるんだって!!キャ〜。

「デートって…。内職の仕事の手伝いを頼まれただけデショ」
「そんなことないかもよ?この間だって、びんちゃんが邪魔さえしなければ、二ノ宮くんと…ぐふふ〜」
「………」

二ノ宮くんって高校の時からかっこよかったんだよねー。
高校参年間奇跡の同じクラスでー、役員とか組み分けとかで一緒になれるように努力したっけ。
ライバルが多かったから、蹴落とし合いで大変だったなー。とくにうさぎが。
あいつ、男子からはウケが良かったけど女子からは嫌われ者。わたしも大っ嫌いだったよ。連絡先も交換しないくらいに。

「って、やば!もう時間じゃん。じゃあ、行って「ボクも行くから」は?」

当然のようにびんちゃんも出かける恰好をしてて、靴まで履いて玄関で立って待ってるよ…。
はやくはやくっ、怒られちゃうよと言いたげな表情で手招きしてる。

「なんで?」
「なんでんなんで?」
「ついてこなくていいよってこと」
「ちーほが、オオカミ食べれたら大変だから見張ル!」

いやそんなドヤァ顔で言われても…。
びんちゃんがいたらたとえ甘い雰囲気になっても台無しになっちゃうじゃない…。
なんとかして追い払わないと…。あーでも、時間が!
しょうがない、追い払うのは後!今は二ノ宮くん優先で!

びんちゃんの腕をつかみ玄関を飛び出し、鍵をきっちり閉めて忘れ物がないか二度確認して、ダッシュで二ノ宮くんの家へ向かう。

「は、ハヤイ〜〜目がまわる〜〜」





〜二ノ宮家二階 雄輔の部屋〜


「……。大丈夫か、汗ぐっしょりだぞ?」
「はぁ…はぁ…だ、大丈夫…です」
「ボクはだいじょばない〜」

急いで来たおかげで時間には間に合った。汗だくになっちゃったけど。
それにしても…

「ギターとか音楽関連の物が多いね」
「だろ?」

二ノ宮くんは得意げに笑う。カッコイイのに可愛く見えるのはなぜ?ふしぎー。

高校時代軽音部で、バンドを組んでた彼はギターボーカルを担当してて地域では結構な人気者だったの。
小さなライブ会場でライブをさせてもらった時には、入りきらないほどのお客さんが来てて、見れないお客さん達の悔しそうな顔は今でも覚えてるよ。
お友達優先待遇をされたわたし達は最前列で見れてよかったぁ。

高校生の時も部屋にお呼ばれしたことあったけど、その時と変わらず二ノ宮くんの部屋には音楽系の物が多い。
誰かは分からない、外国人のポスター。
高校の時から使ってるっぽい、懐かしのギター。
どでかいコンボにどでかい複雑そうな機械。
音楽にそこまで興味がないわたしにはよくわからない世界だぁ。

「どーかん」

隣で大人しく出されたアイスコーヒーを飲みながらびんちゃんは言う。
そのまま大人しくしててね。なにもしないでよ?

「それはフリですか?」
「違います」
「なにが違うんだ」
「えっ?あ。ううんっなんでも?」
「ふぅ」

あぶない。あぶない。声に出ちゃってた。びんちゃんはふつうの人には見えない存在らしいから、話してるところを見られたら、独り言ブツブツ言ってるおかしな子だと思われちゃうよ…。

「アッテルノジャ?」

キリッ

「ぅ」

言うとボロが出るからもう態度で、睨みをきかして黙らせる。

Re: 上京したら変態に憑かれました*住人募集中* ( No.17 )
日時: 2016/10/25 12:33
名前: 雪姫 (ID: lU2b9h8R)

№008-2




「あ、あっそういばまだバンド…イタッ」
「お前、何しに来たんだ」
「…ぁ」

そうだった…。内職のお手伝いをしに来たんだった…。
びんちゃんが邪魔だったから、忘れちゃってた…。てへ。

二ノ宮くんの無言のあつが怖いので作業を開始する。

目の前に用意されたのは、ピーズで作られた可愛いクマさんのキーホルダーと透明で小さな袋。
作業工程は、キーホルダーを袋に入れてリボンでキュッと絞めるだけ。
手伝いに来いって言うくらいだからもっとめんどくさい物だと思ってたけど案外簡単な物なんだ〜。ふーん。

とか思いつつ、無言で黙々とクマさんのキーホルダーを袋に入れてゆく。
緑とか紫色のクマさんが多いな。来月から梅雨だから、それに合わせて?あ、この子、カッパ着てる。可愛い。
クマさんたちは一体、一体、個性があって違う物になってるの。着てる服とか、つけてるアクセサリーとかがね。

「あ。この子たち」

二匹のクマさんがペアになったキーホルダー発見!
一匹がタキシードでもう一匹が純白のウエディングドレスを着てるー。

「六月はジューンブライドだからな」
「そっかーなるほど」

やっぱり六月にちなんだ格好をしてるクマさんたちなんだぁ。

「可愛いね!」
「………。女は可愛い物好きだよな」
「うん!大好きだよ、あと可愛い服とかも!」
「可愛い服って…。お前、この間実家から大量に送られてきたんでおすそ分けでーすって、持ってきたときの恰好高校時のジャージじゃねぇーか」
「ぅ!いいしょ、ジャージが一番落ち着くんだから」
「デモ女子力はナイよねー」

うっさい。ビシッと肘でびんちゃんの脇腹を強めに突く。びんちゃんは苦しそうな声をあげて床に横になった。

「あっははそりゃそうだ!俺も寝巻はジャージだし」
「えっ!?そうなの!?」
「あぁ。っとゆうかガキの頃からだけど」

知らなかった…。てってきりふつうにパジャマ着てるのかと。でも…こんなところにジャージ仲間がいて嬉しいなぁ〜。だいたいの人からは引かれたし…。

「高校の時といえばさ、あいつら覚えてる?俺と軽音部でバンド組んでた「カナジュリー!!」そうそうあいつら」

”カナジュリー”は奏那(かなた)先輩と珠里亜(じゅりあ)くんの二人をセットで呼んだ愛称。

奏那先輩はわたしたちの一個上の先輩で、当時軽音部の部長さん。
背が高くて顔もイケメンで頭も良くてスポーツも万能、親は実業家でお坊ちゃま。
誰もが憧れるすごい人なんだけど、一つだけ欠点?があって…。
奏那先輩は体は男、心は乙女な、いわゆるオネェと呼ばれる人なんだよねぇ。
女子力が女子よりも高くて、誰よりも女の子って感じで、姉御肌タイプの性格でお姉様って慕ってる女の子が沢山いてファンクラブなんてものあった。

珠里亜くんはわたしたちの一個下の後輩でよく二ノ宮くんをアニキーって呼んでちょろちょろ後を追いかけてた姿が可愛かったなぁ。
男の子なのに珠里亜って名前なのは、女の子が欲しかった両親の強い思い(呪い)からなんだって。珠里亜くん一人っ子だし。
まぁその強い思いが叶ったのかどうなのか、珠里亜くんは女の子みたいな見た目に育っちゃったんだよねー。
栗色の肩ぐらいまであるサラサラストレートヘアで、くりっくりっの可愛いおめめで、背はわたしよりも低くて華奢で小動物みたい。
そんなだから、男子たちの間で隠れファンクラブなんてものが設立されてて、二ノ宮くんが目の敵にされてて…。

「ぷぷっ」
「なんだよ」
「あ、いや?べつに〜」
「チッ。実はさ高校卒業した後もあいつらとはつるんでて、今もバンド活動やったんだ」
「そうだったんだ」
「あぁ。今は武道館ライブ目指して頑張り中」
「おぉーーすごい!プロだね」
「まだまだだ」

高校の時でも近所の小さなライブ会場だったけど、ライブがさせてもらえるくらいにすごかったのに、まだまだだなんて…。
夢に向かって走り続けてるなんてすごいな。やっぱり二ノ宮くん、カッコイイ。

「あ。話してたら手止まってた。ごめん」
「別にいいよ。足手まといなのは最初からわかってたし」
「え?」
「じゃあナンデ呼んだんだっヨー」

確かに…それは同感。

「足手まといでもいないよりかは、いた方がいいんだ」
「えっそれ…」

高校の時にも言われた…言葉。もしかして二ノ宮くん。

「六見さんや希じゃ、足手まといどころかやりもしねぇーからな。それにくらべたら、お前のボケくらいどうってことない」
「…あっそうですか」
「ハハハハハッ。期待してヤーノ。ウギャ」

なんか恥ずかしくなって、つい、びんちゃんを殴っちゃった。
…そうだよね。二ノ宮くんがわたしなんかに好意をいだいてくれてるなんてありえないよね。夢見過ぎだよね。

「…ぁの…お前さえ……ょかったら………また「ピーーーンーポーーン!!」」
「「ッ!!?」」


「スッケさーん、ゴハンの時間ですよー」
「おなかすいた」
「えっこの声って遊馬さんとのんちゃん!?」
「うるせぇぇぇ!!近所の迷惑考えろぉぉ!!」
「スケさんが一番大きな声出してるよ」
「うん。めいわく」
「ぐぬぬ…」

窓を開けて遊馬さまとのんちゃんに抗議した、二ノ宮くんだったけどすぐに論破されちゃったみたい…。

「あの二ノ宮くん。さっき何を言いかけて「お前も今日家で晩飯食ってけ!」あっ、うん。ごちになります」
「わぁ〜〜い!ひさびさのマトモな食事だー!ヤッター!!」

びんちゃんはばんざーい、ばんざーい、と喜んでいる。
おっかしいな…耳まで真っ赤した二ノ宮くんがなにかをボソボソ言ってたような気がしたんだけど…気のせいだったのかな?








つづく…☆





∽あとがき∽
登場 貧乏神

貧「あとがきに正式登場の貧乏“神”ダヨ〜ン♪
  うぷぷー。ってワラッてはみたモノノ今回ボク出番少なすぎない!?
  殴られ役ばかりダヨ!ボクはちーほのサンドバッグじゃありまっしぇーん!!
  どちらかといと、結婚を前提にお付き合いしてる恋人?いやむしろダンナ様?

  今回新たに判明コーナー
 【ちーほとヨースケは以外と結構仲が良かったみたい。
  カナジュリーと呼ばれてた、カナタとジュリアって奴と高校の時から飽きずにずっとロックバンドをやってるらしい。
  ボクの能力でちーほには乙女ゲーみたいな甘々なリア充イベは起こらない設定】

  だそうですニャ。ボクもパンさんに負けないようにキャラ付けガンバラないとっ!
  それじゃ、また次回 バイニャラ☆」