複雑・ファジー小説

Re: 最強の救急隊 ( No.5 )
日時: 2018/12/15 20:48
名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: YGRA.TgA)


 「クソガキ……。テメェ出張云々より八つ橋とか菓子に目が眩みすぎだろうがよ……」
「そ、そんなことないよ雪ちゃん。お偉いさん方の機嫌も損ねてないし今後についてもちゃんと聞いてきたし金閣寺にも行ってきた。あっ!」

 成葉は自分の失言に思わず口元を手で押さえた。
 大入道による事件も無事解決し、成葉を始めとした3人は自らの仕事場——本拠地である浅草、雷門通りの一室に帰っていた。
 この場所は、部屋が横に広がる和風の大きな敷地であり、ほぼ、3人の住居地でもあった。
今まで出張に出ていた成葉の丸々と太ったリュックを整理していると八つ橋、せんべい、味噌、和菓子など上げたらきりの無い食材の面々に思わず雪丸は彼女の頭を片手で掴んだ。

「……繋ゥ!」
「へい!」
「……繋、図ったな……!」

 思わず口を滑らせた成葉がしゃべり終わると同時に、雪丸は繋に向かって呼ぶ。
 即座にやってきた彼によって、成葉は分厚い布団の簀巻きのされてしまった。













「流石京都だな、菓子はうめぇ。甘すぎないからな」
「茶、入ったぜ若」
「全部食べないでよ! わたしも食べるから! あっ! ひよこサブレは止めてください!!」

 モグモグと涼しい顔で茶菓子を頬張る雪丸に、時間が経ってから簀巻きから解放され、書類整理をしている成葉は大声を上げた。
 繋が「残してやるから集中しろお嬢」と言ったため、菓子の行方が気になりつつも、書類の最後の1枚にサインした。
因みに彼女が書いていたのは始末書だ。先程の大入道の様に事件の詳細、被害者、破壊範囲など結構きっちり書かなくてはいけない。これは第一補佐官の仕事である。

「あ、そうだ。聞いてくれ2人とも」
「頑張って書類を終わらせた偉大なわたしに何の用でしょう」
「うるせぇ。テメェが余計なもん壊さなきゃそんなことになってねぇんだよ」

 ふと、思い出したかのように繋は言う。
畳に突っ伏したまま言葉を並べる成葉に雪丸の辛辣かつ的確な言葉が飛んだ。

「今朝入ったことなんだが……。来週辺りに1人新入りが来るらしい」
「嘘でしょ、まだ2話目だよ」

 繋の言葉にあからさまに嫌な顔をする成葉。
何も言わないが隊長である雪丸も同様の表情を浮かべていた。
理由は簡単。第7隊のことを説明するのが至極面倒くさい。それだけである。

「どうせあれだろが……。女だったら繋狙い、男だったら無駄にクソめんどくせぇ下剋上狙ってくんだろ……。月9ドラマ並みにめんどくせぇだろうが」
「もしそういう女が来たらわたし精神的に消されるぅ……」
「若、お嬢。そういう波風立てるような発言は止めてくれ」

 はー、と何もしていないのに疲れ切ったため息を付きながら胡坐をかく雪丸。
兄の言葉を聞いて成葉は顔を真っ青にして震えながらもみじ饅頭を食べ始める。
 月9ドラマと何があったんだ、と言いたげな繋は思わず冷や汗をかいた。

「一応証明写真と履歴は乗ってるんでしょ? どう、有能そう?」
「有能っちゃ有能なんだが……」

 彼女の問いに繋は何とも言えない顔つきで手に持っていた書類を床に置く。
それを雪丸が拾い上げる。成葉はそっと邪魔にならないように顔を覗かせた。
 写真を見ると、薄い金髪にくっきりとした目鼻立ち、そして手足も長い。
 そして第一に思った感想はこうだった。

「バイリンガルってやつか」
「結構なイケメンだね」
(……そこか……)

 繋は雪丸兄妹の微妙な発言に思わず眉を顰めた。