複雑・ファジー小説

Re: どうせ余命同士——【ここは空】*短編集 ( No.4 )
日時: 2017/09/10 19:00
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: Dscjh0AU)

 

【02:ノーセンス】


 「EYE・EAR」


 女の子と女の子はおんなじ服の、色のちがうものに身を包んでいる。おもちゃは二つ買えばいいし、お菓子は半分こすればいい。どうしても一つしかないものは、代わりばんこで使えばよかった。

 そうもいかなくなったのは、そんな二人が夜に見た夢を、信じて以来。


 「君は目が見えないね。君は耳が聞こえないね。ふつうの人になりたいとは思わないかい? 一ついいことを教えてあげる。どちらか一人がそれらを素直にあきらめればいいのさ」


 どんな声色だったかはもう定かでないけれど、二人はおなじ夢を見ていたらしい。その日の朝は興奮して目が覚めた。
 はじめはよくわからないまま朝を迎えてしまっていた。けれど、何日もまたおなじ夢を見たら、幼いながらに理解を深めていった。


 「わたしはどうすればいい」
 「わたしはどうすればいい」


 二人はしばらく、ぐるぐる悩んで、ようやく答えを見つけ出した。


 「わたしがあきらめればいい」


 布団にもぐってまぶたを閉じた。するといつの間にか、ただ広いだけの世界に二人、浮いていた。


 「君は目が見えないね。君は耳が聞こえないね。ふつうの人になりたいとは思わないかい? 一ついいことを教えてあげる。どちらか一人がそれらを素直にあきらめればいいのさ」
 「わたしがあきらめるわ」
 「いいんだね?」


 二人は目も耳も失った。
 あきらめると言ったのは、耳の聞こえない子だった。


                          END



 ※雑談スレに掲載していたものの再掲載です。