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複雑・ファジー小説
- Re: 星ノ魔法使イ ( No.1 )
- 日時: 2016/12/09 23:45
- 名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)
序章
(1)
木々のざわめく音が響いた。
「そこ!!」
木の葉の隙間から半液状化したどろどろとの物体が姿を現した。
声の主が、素早く銃口をそれに向けると、紅と黄金の魔法陣が浮かび上がった。
「“紅光烈火(こうこうれっか)”」
魔法陣を突き破り飛び出した弾は、どろどろとした物体を散らすには十分すぎるほどの威力を持っていた。
≪レベルBクリア レベルBクリア≫
そんな機械アナウンスと共にこれまでそこにあった風景が崩れた。
真っ白になってしまった空間に残っているのは、先ほど銃をぶっ放した人物——大和 楓(やまと かえで)と愛銃“紅姫”だけだった。
「紅(こう)、来ていいよ」
銃に向かって優しく声をかける楓。傍から見れば、ただ独り言を言っているだけの不思議な人だ。しかし——
「っほい! やっほーかえちゃん、この姿ではひさしぶりー!」
真っ黒なハンドガンが、6、7歳くらいの女児に変化した。
「久しぶりって言ったって、毎日話しかけているでしょ?」
楓が、紅にそう言うが、
「僕は寂しかったの! かえちゃんなかなかこっちの形にしてくれないんだもん」
長い長い燃えるような赤髪、鱗のついているしっぽ、そして黄金色の瞳を持つ幼女は、少し拗ねたようにそっぽを向く。
「はいはい、ごめんなさい。今、時間があったから呼んだのだけど……、お昼ごはんでも一緒にどうかしら」
「食べる!!」
一転、機嫌を直す紅。飛び跳ねて喜びを全身で表している。
どんなに怒ったり、拗ねたりしていても、食事で機嫌をうかがう。これが、紅とのうまい付き合い方だと楓は確信した。
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