複雑・ファジー小説
- Re: 星ノ魔法使イ ( No.2 )
- 日時: 2016/12/10 23:52
- 名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)
(2)
自宅の中にある訓練室を後にした楓と紅。訓練室に楓が入ったのが昼過ぎだったが、時計を見るとすでに六時を回っていた。
紅にだっこをせがまれ、抱きながら長い長い廊下を歩く。
「今日の晩御飯は何かしら?」
「くんくん……、あ! 今日は親子丼だね!」
紅に言われて、楓もにおいを探った。
「ぜんっぜん分からないわ。紅は鼻がいいわね、台所まで結構距離があるのに」
「えっへん、僕をなめてもらっちゃこまるよ」
そこから少し歩くと、二十畳ほどの和室に入った。
大和家は平屋造りなうえに、すべて和室のため一見してどの部屋がどの部屋かよく分からない。しかし、彼女たちが入った部屋は妙に生活感あふれる部屋である。
「お嬢様、お疲れ様でございます。本日は、紅様もご一緒なのですね」
部屋で待っていたのは、二十代後半の美しい女性——春咲 千影(はるさき ちかげ)だった。彼女は、大和家に住み込みで働いていて、炊事に洗濯、その他いろいろをそつなくこなす使用人である。
「まあ、本当に親子丼だったのね」
千影が部屋に用意していた夕飯は、親子丼とお吸い物に小鉢だった。
「はい、良い鶏肉と卵が手に入りましたので」
柔らかく微笑む千影。
「申し訳ないわね、突然紅を連れてきてしまって。紅には、私の分を分けるから、用意しなくていいわ」
「やったー! かえちゃんといっしょだー!」
「静かにしてないと、渡さないよ」
「うぅ、静かにしてる……」
「よろしい」
楓は紅を降ろして座布団の上に座ると、自分の膝の上に乗せた。
「はい、あーん」
そっと親子丼をすくいあげると、紅の口元に運ぶ。
「んー!! おいしい!」
「そう、それはよかった」
楓も一口。
「千影、これすごくおいしいわ」
「ありがとうございます」
千影はそう口にすると、楓に質問を投げかけた。
- Re: 星ノ魔法使イ ( No.3 )
- 日時: 2016/12/11 21:37
- 名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)
(3)
「そういえば、お嬢様」
「もぐもぐ……、なに?」
「明日から新学期ですのでお部屋のほうに制服をかけておきました」
「あー、そういえば明日からだったわね。うーん、もう高校二年かぁ。クラス誰と同じかしら」
「クラス分け、今からでもご覧になられますか?」
千影は、すでに楓のクラスを知っているようだった。
「僕気になるぅー!!」
「はいはい」
紅の頭をポンポンすると、
「遠慮してく。明日の楽しみに取っておきたいし」
笑顔で言うと、千影は「さようででございますか」と同じく笑った。
「お嬢様らしいです。明日からは寮での生活に戻りますし、必要なものがあれば何なりと申し付けください」
「ええ、分かったわ」
「かえちゃん! もっとごはん食べたいよー!!」
「はいはい、分かった分かった」
千影との会話は中断。楓は先に、紅の食事を終わらせることにした。