複雑・ファジー小説

Re: 星ノ魔法使イ ( No.8 )
日時: 2016/12/18 23:31
名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)

(8)
 教室に帰る楓らはぐったりとしていた。
「長い、長すぎるわ……」
「俺さ、途中寝てたんだけどバレたかな」
 湊の一言に、空気が凍り付いた。
「あーんーたーのーせーいーよー!!」
 知広がぐわんぐわん湊を揺さぶる。
「アンタのせいで、話10分は伸びた! 校長の目の色が変わった瞬間何かおかしいと思ったけど!!」
 少し涙目で訴える。よほど苦痛の時間だったのだろう。
「まあまあ、落ち着いてください」
 やんわりととめに入る夢華。
「もう終わったことだし、もう忘れよう」
 日向はそういうと、目の前まで来ていた教室に足を踏み入れた。
 教室を見渡すと、ある光景が目に入った——担任が堂々教卓に突っ伏しながら寝ている光景が。
「…………。“聖なる光を纏いし守護者よ、我は——”」
「あ、ああああああ! だめです楓ちゃん! 先生が寝てたからって、普通に起こしてあげてください! それ撃つと死にますよ、先生が!」
 途中まで構築した魔法を解除すると、夢華に分かるように指差した。
「残念だったね夢華。もう手遅れ」
「えっ」
 瞬間、二つの魔法陣が交差した。
「“疾風一刃(はやてひとは)”」
  ——風属性中級魔法“疾風一刃”——
「“業火滅鬼(ごうかめっき)”」
  ——火属性中級魔法“業火滅鬼”——
 ズザザザァア!! という音と共に緑と赤の光が逸樹に向かっていく。
「——ったく、人さまが気持ちよく寝てんだから、そのまんまにしといてくれよっと」
 腕を軽く薙ぐとぱかっと時空の狭間ができた。
  ——無属性上級魔法“永遠と絶対(エタニティ)”
 目をこすり、さも当たり前と言わんばかりにその切れ目は放たれた魔法を吸収した。
 “永遠と絶対”は上級魔法でも上位の魔法。普通なら詠唱破棄での発動は難しいはずだ。
「あれ、きかなかったのか?」
「わぁお、逸樹先生あれ流しちゃうか……」
 湊と知広は落胆した、というよりも唖然とした感じだった。
「……ん?」
 楓は教室内に不穏何にかを感じた。
 ——さっき、一瞬だけど殺気が……。気のせいかしら?
 教室内で魔法をぶっ放す&人に向けて魔法を撃ったことに関して2人は注意を受けているようだ。
 この二人以外の誰かが?
「なにぼーっとしてるんだ?」
「え、あぁ何でもないの」
 日向の言葉で思考世界から引き戻された楓。
 学校生活を純粋に楽しむのはまだまだ先なのかもしれないと思うのであった。