複雑・ファジー小説

Re: 星ノ魔法使イ ( No.22 )
日時: 2017/06/04 00:13
名前: 綾原 ぬえ (ID: N2Ja7nM7)

 (8)
 どうしてここにあの魔力が近づいてくるのだろう、と校長エリト=フルネミアは顔をしかめた。
 今さっき、軍司令部の元帥、千神礼八郎が帰ったところで、エリトはコーヒーブレイクを楽しんでいるところだった。
 しかし、近付いてくる魔力から察するに、ゆっくりコーヒーを飲むこともできないのか、と彼女はため息を一つつくと、手にしていたマグカップを机の上に置いた。
「失礼します」
 バンっ、と勢いよく室内に入ってきたのはSクラス一の優等生にして問題児——大和楓と、
「ちょ、ノックぐらいしろよ!」
 こちらも異端児にして問題児——菱形湊だった。
「菱形君の言う通りですよ、大和さん。こういう場所に入るときは、ノックぐらいしてください。本当のことをいえば、アポイントメントもとってほしいくらい——」
 楓は、ツカツカとエリトの元まで進むと、机を力いっぱい叩いた。
「それどころではないと思いますよ、理事長。急を要することです」
「まあ、そういうところも、なってないわね大和さん。まずは、ゆっくり深呼吸ね」
 エリトは人差し指を唇に当て、シーとして見せた。
「ですが——」
「まあまあ、落ち着けって。というか、とりあえず、説明な」
「うぅ、そうね」
 楓は、数分前に起きたことの一部始終を話した。爆弾を見つけて、凍結させ、ここまで持ってきたということを。もちろん、知広のことは、除いて。
 楓が話を終えると、エリトは固定電話の受話器を取った。
 フッと魔法陣が一瞬広がったかと思うと、エリトは言葉を発し始めた。
「全教員に告ぐ。今すぐ半径300mの範囲の魔力をサーチしなさい。繰り返します。これは緊急事態です。今すぐ半径300mの範囲の魔力をサーチしなさい。怪しいものがあれば、すぐに私まで伝達しなさい。以上」