複雑・ファジー小説

Re: テ・ツ・ガ・ク・ゾンビ ( No.1 )
日時: 2017/01/07 21:02
名前: 電柱 ◆mkc9J3u9MM (ID: jV4BqHMK)
参照: http:/https://kakuyomu.jp/works/1177354054882254138

『この世には、二種類のヒトガタが存在する。

 人間と、哲学的ゾンビだ。

 2つの決定的な違い、それは、
人間にはクオリアがあるが、哲学的ゾンビにはない……ということだ。

 クオリアとは?
 いわば、「主観的質感」である。
 簡単にいうと、「意識」。

 アナタが今この文章を読んでいる、普段、夜空は黒、りんごは赤などと色を認識している、そして、何かを思っている。

 これら全てがクオリアだ。我思う、ゆえに我あり……というわけだ。

 では、哲学的ゾンビとは?

 哲学的ゾンビにはクオリアが存在しない。
 見た目も、行動も、発言も……何一つ人間と変わらない。怒ったり、泣いたり、笑ったりもする。しかし、そこに意志はない。

 見た目も、その中に詰まった臓物や骨肉も人間と同じロボットのようなもの、と考えてくれればよい。


 さあ、アナタの家族、友人、恋人……彼らはどちらだろう?

 人間だとわかるのは本人だけだ。
 それを証明することは誰にもできない。

 怖くなってきただろう? 考えれば考えるほど、周りの「ヒトガタ」が「何なのか」わからなくなるだろう?

 しかし、それを恐れる必要は無くなった。
 疑問の答えは強制的に突きつけられた。

 君が眠りについた、二年前のあの日にね。

 おはよう、泥濘栄瞬(ヌカルミ エイシュン)。

 この腐った世界で、共に己を証明しようじゃないか。

                          from学舎哲(マナビヤ テツ)』


 身体が冷たく、とても気だるい。
 泥のように生ぬるく、とても長い眠りから、目覚めたようだ。

「まなび、や」

 なぜだろう?
 名前の響き、少し鼻につく説明口調……どこか、懐かしい。