複雑・ファジー小説
- Re: 精霊狩りとして生きる僕たちは。 ( No.2 )
- 日時: 2017/01/23 22:31
- 名前: こてつ (ID: 3i70snR8)
「もうすぐくるぞ、タイガ」
「なにが?」
「精霊だよ、精霊!てめえ、何年この仕事してんだよ。死ね」
「やだなあ。僕が死んだら、全国の女の子が泣くよ?」
「……っ」
もう、何も言わない。
耐えるんだ、耐えるんだと自分に言い聞かせ、リュウはグッと拳を握り締める。
二人が待ち構えている先には少し盛り上がった砂山があった。
風がふぶいていて、今日はやけに視界が悪い。乾ききった風が、二人から水分を奪っているようだ。
しばらくすると、ビリビリと大気が震え、地鳴りが響き始めた。それと同時に砂山のむこうから走ってくる人影。そしてそれを追いかける黒く巨大な物体。
「…子供か」
「なんだってこんな砂漠に出てきたんだか。おとなしく街の中にいればいいのにね〜」
目標を確認すると、二人は戦闘準備に入る。
リュウは鉄製のグローブをつけ、タイガは指輪を三個、右手の薬指、中指、人差し指にそれぞれつける。
「…いつも疑問に思うんだがな」
「なんだい?」
「てめえのその指輪は、どうやって戦闘で使うんだ」
その問いかけに対して、一瞬、ほんの一瞬、タイガの表情がこわばった。しかしすぐにいつもの余裕の笑みに戻る。
「えー、僕と何年も一緒に任務こなしてきてるリュウちゃんのセリフとは思えないね〜」
「ちゃん付けするな」
今にも殴りかかりそうな勢いでタイガを睨む。
「僕の指輪は身体強化の指輪。自分だけじゃなく、他人のカラダの一部でさえも、強化する」
「だから、その原理と使い方が…」
「リュウちゃんは脳筋バカなんだから、そんなことに頭使ってる暇があるなら目の前の敵バンバン倒していきなよ」
「なんだとこら…」
「ほらほら、きたよ」
敵—————精霊は約10メートル手前まできていた。
「てめえは子供の方にいけ。俺はあいつをやる」
「はいはい。強化は足だけでいいよね」
「ああ」
ガシっと手を合わせ、気合を入れるリュウ。タイガはしゃがみこむとそっと右手でリュウの足に触れた。触れた部位がほのかに光る。
リュウはそれを確認すると、勢いよく精霊に向かって走り出した。
「おらあぁっ!」
叫び声をあげ、リュウが大きく飛び上がった。太陽の日差しを背中に背負い、ニヤッと笑う。巨体な精霊の頭上ど真ん中、そのまま腕に力をこめて振り下ろす。
ズドォンッッ
大量の砂埃が舞い、さらに視界が悪くなる。
「う、うぅ、な、に?」
追いかけられていた子供は、泣きじゃくった顔で後ろを振り返り立ち止まっていた。