複雑・ファジー小説
- Re: 精霊狩りとして生きる僕たちは。 ( No.3 )
- 日時: 2017/01/25 17:57
- 名前: こてつ (ID: 3i70snR8)
「さあさ、立ち止まってる暇はないよ。僕たちはあんな奴らほっといて早く逃げなきゃね」
突然背後から聞こえた声に、子供は驚いて振り返る。
「え、あ、あの…」
「さあ、乗って。早くここから逃げるよ」
「で、でも…」
「それともここで死にたい?」
笑顔で圧迫するタイガの迫力に押され、子供はサイドカーに慌てて乗り込んだ。
それを確認すると、ブルっとエンジンをかけそのまま発進する。
「あ、あの!」
「なに?」
「男の人、おいてきちゃって大丈夫なんですか?」
「あぁ、後で迎えに行くから大丈夫だよ。リュウのやつ、ちょっとやそっとじゃ死なないし———」
そう言い終わる前に「何か」がヒュンッと横を通り抜け、目の前の砂山に派手な音をたててぶつかった。
バイクは急ブレーキし、立ち止まる。
飛んできた「何か」の正体はリュウだった。
「う、うぅ…」
うめき声をあげながら、フラフラと立ち上がる。
「え、ちょ、早くない!?まだ一分も経ってないけど?もうちょーっと時間稼いでくれると思ったのに!ただでさえ筋肉馬鹿なんだから、こういうときに活躍してくれないと困るんだけど!」
「ごちゃごちゃうるせえ!これからなんだよ」
ペッと口から血を吐き、ゴキゴキと首の骨を鳴らす。
「これからって、あのねえ」
タイガが文句を言おうとする中、その背後にはあの巨大な精霊が忍び寄っていた。
「っ!タイガ!うしろ!」
「は——————?」
タイガが気づく前に、精霊が拳を振り下ろした。
その衝撃でバイクごと吹き飛ばされる。
「うわぁ!」
ボスッ
一緒に飛ばされた子供はなんとかリュウがキャッチした。
「あ、ありがとうございます」
「お礼はいい」
「タイガさんは…!」
「あいつなら大丈夫だ」
そう言って指をさされた方向をみると、なにやら薄い膜のようなもので覆われたタイガがいた。
「あ、あれは……?」
「防護フィールドだ。あいつの身に付けてる防具のおかげだよ。どういう原理してるのかしらねえけどな」
タイガの目の前に立ちはだかる精霊は、ゴツゴツとした大きな岩が何個も積み重なって、形を成していた。
ウオオオオォォォォッッ
耳をつんざくような雄叫びをあげ、タイガに向かって腕を振り下ろす。
ズウゥンッ
タイガは苦しそうな顔でそれを受け止めた。
「っ……そういうのは、あの馬鹿にやればいいんだよっ!」
そう言ってタイガが腕を押し返すのと同時に、リュウは空中へ飛び上がり、その頭部にむけて拳をぶつける。
バコォンッッ
凄まじい音ともに敵の体がグラっと傾いた。