複雑・ファジー小説

Re: 精霊狩りとして生きる僕たちは。 ( No.4 )
日時: 2017/02/22 14:55
名前: こてつ (ID: 3i70snR8)

タイガはその隙を見逃さず、子供をさっと抱き上げ、バイクを立て直しエンジンをかける。

「逃げるんですか!?」
「逃げるんじゃなくて一時避難!僕がそんなカッコ悪いことするわけないでしょ」
「でもリュウさんが…」
「ガキかばいながらだったら、十分に戦えないだろ!」
「ッ……」
「…怒鳴って悪かったけど、今は切羽詰まってる状況だってわかってね。僕だって、子供相手に怒鳴りたくないんだからさ」

ブルンッブルンッ

バイクは大きな音をたててその場を立ち去った。
それを確認するとリュウはにやっと笑う。

「さあ、こっからが本番だぜ、デカブツ」

ガッと両腕を地面に突き立て、思いっきり飛び上がる。
そしてそのまま両腕を大きく振りかぶった。

「まずは———いっぱぁっつ!!」

しかし敵もそれを察知し、腕を横に振るう。

「ぐっ!」

それをもろに受け、リュウは砂上に吹っ飛んだ。

「てっめっ…!」

血を流して悶えるリュウにお構いなしに、敵は足でリュウを踏みつぶそうとする。

ずどおおおんっ

振り下ろされた足を、間一髪でよけるリュウ。

「っ…調子に乗るんじゃねえ!」

そしてそのまま、振り下ろされた足に向かって拳をぶつけた。
ばこおおおおぉぉんっという凄まじい音とともに砕け散る足。そしてその破片はタイガの運転するバイクまで飛んでくる。

「あんの馬鹿!こっちまで飛ばさないでよ!」

そう言いながら、防護フィールドを展開するタイガ。そのおかげで、バイクにはまったくといっていいほど影響がない。
子供はぐっと黙ってサイドカーにしがみついていた。


バランスの取れなくなった的は、そのまま倒れこんだ。リュウは飛び上がり、片方の拳に力をこめる。

「じゃあな、デカブツ」

勢いよく拳をぶつけると、そのまま派手な音をたてて敵のカラダは砕け散った。
そしてその破片はもちろん、タイガの方向にも飛んでくる。

「だぁかぁら!こっちに飛ばすなっつってんじゃん!」
「タイガさん、前!前見て運転してください!」

するとバイクにリュウから無線が入る。

『こちらリュウ。無事に精霊を殲滅。向かえに来い』
「せ、精霊…」

その言葉を聞いて、子供が少し困惑した表情になった。
タイガはなに食わぬ顔で…いや、誰がみても怒っているとわかる顔で返答する。

「誰かさんが飛ばしてきた石の破片で無線が壊れたので、なにも聞こえませーん。とりあえずこのままかえりまーす」
『なっ、てめ』
「ぶちっとな」

強制的に無線をきるタイガ。

「あ、あの!」

突然、子供が大きな声をあげる。

「え、なに?どうかした?」
「間違ってたらすみません!その、もしかして、タイガさんたちって…」

少し怯えた表情で子供はタイガを見つめた。

「『精霊狩り』……ですか?」