複雑・ファジー小説
- 第一階層 小さいシルさんとの出会い ( No.2 )
- 日時: 2017/02/06 09:55
- 名前: 姫凛 (ID: gV64xmvp)
デスピル病 別名 闇病——
ゆっくりと音もなく感染者の生命力を奪っていきやがて、
人ならざるバケモノになってしまうという恐ろしい病気。
ある日突然 流行だし感染者続出した。
だがこの病気にかかる原因がわからない。
治す方法も発見されていない。
唯一ある解決方法は
バケモノになる前に断罪者の手によって首をはね 殺してしまう事ことだけだ。
そんなことさせない!
と一人の少年が立ち上がった。
彼の名は ルシア。
トサカの様な前髪をもったお人好しで正義感の強い青年だ。
彼には特殊能力というのだろうか?
不思議なブレスレットを持っていて、そのブレスレットをデスピル病患者の胸の辺りへもっていくと
なんと、人の心中 プリンセシナに入ることが出来るのだ。
プリンセシナとは——
人の心が創り出した迷宮と呼ばれている場所だ。
プリンセシナの最下層にあるシークレットガーデンが心の核
これが壊れた時
人は魔がい物と呼ばれるバケモノになってしまうのだ。
だけど逆を言えば
シークレットガーデンを壊される前に魔がい物たちををなんとかできれば
デスピル病患者は助かり病を完治させることが出来るのだっ!
ルシアは今日も
プリンセシナの案内人 パピコと共にデスピル病患者を助ける為に誰かの心の中
プリンセシナへと入って行く。
だが決して軽い気持ちでプリンセシナへ入るべからず
心とは
人が封じた過去なんてものは
決して気軽に他人が見ていいものではないのだから——
**
『ヒヒ〜〜〜ン』
『メェ〜〜〜』
『モォウ』
「−−−−−ッて牧場!!?」
晴天の空
青々と生い茂る草木
それをむしゃむしゃと頬張る 馬 羊 牛 などの動物たち
「ここはだぶん。いや絶対 牧場と呼ばれる場所だよね…?」
僕はデスピル病で倒れた友達 シルさんを助けるために
シルさんのプリンセシナへ入って来たんだけど、そこは… さっきも言った通り牧場だった。
動物たちが沢山いる…。
生きいきと 生を感じる作りものじゃない 本物っぽい動物たちがそこには沢山いた。
でも触れようと手を伸ばしてみると
スッ
「…あ」
動物たちは煙のように消えてしまった。
やっぱり本物じゃない…。触ることはできないみたいだ…。
「何しているのですか?ご主人様」
「あ、パピコさん」
大きな妖精の羽が特徴的なこの女性の名前は パピコさん。
僕よりも年上のお姉さんで
前に幼馴染の女の子のプリンセシナで初めて会って
それ以来なぜか僕のことを「ご主人様」って呼んで慕ってくれてるんだ。
ちょっと? 変わった人だけど僕の大切な仲間の一人なんだ。
「ささっ♪ この階層のイベントクリアしちゃいましょう!」
「うん。そうだね」
人によって階層の階数は違うらしいけど
一階層にひとつずつイベント と呼ばれる過去の記憶が現れて
それをすべて見終えると次の階層への扉が開く仕組みなんだって
***
広い牧場にポツンと残された僕たちは、とりあえず辺りを探索してみるこにしたんだ。
やっぱり情報って大事だと思うんだよね!
『うんしょ うんしょ…』
しばらく辺りを探索していると
大きなバケツを持った女の子が手前の方向から歩いてくるのが見えた。
重たいバケツなのかな?女の子は右に左にってあっちこっちにゆらゆらしながら歩いている。
女の子が近づいてきて だんだん ハッキリと見えてきた。
白いワンピースを着た女の子だ。誰かに似ているような気がする…。
「あっ もしかしてシルさん!?」
そうだっ あの女の子は小さいシルさんだ! 顔になんとなく面影が残っている。
「何をしているのでじょう?」
「聞いてみよう」
「はい♪」
僕たちは、小さいシルさんに近づいて行き
「こんにちは」
『…こんにちは』
軽く声をかけてみた。
いきなり知らない人に話しかけられて、小さいシルさんは警戒しているみたいだ。
僕は警戒を解くために優しく話ける。
「ねぇ何をしているの?」
『えと…おうまさんたちにあげる おみず…』
「へぇ お家のお手伝い?偉いね」
『…そんなこと…ないよ』
まだ警戒心は解けないみたいだ…。
まぁそりゃそうだよね
いきなり知らない人に話しけかられてすぐに打ち解けたら危ないよね…。
どうしたら打ち解けられるかな…? んー、そうだ!
「僕も手伝うよ」
『…え なんで』
「だってそれすっごく重たそうだよ? 僕が持ってあげるよ」
小さいシルさんは少し考え込んだあと
『‥…はい』
小さな手を差し出しバケツを渡した。
受け取ったバケツは見た目以上に重かった…。
よくこんな重たいもの、あんな小さな女の子が持ててたなぁ…。
「うぅ」
『…だいじょうぶ?』
「う うん。へーきだよ?」
本当は全然平気じゃないけど…。腕と足がプルプルだよ。
「…っ えっとどこまで運べばいいのかな?」
『あっち!』
小さいシルさんは赤い小屋が見える方向を指差し、そこへ向かって走って行っちゃった。
「あっ 待って」
「ファイトです!ご主人様っ」
「う、うん」
なんか安請け合いして失敗したかも…。
ちょっと泣きたくなってきたけど、引き受けたからにはしょうがない。
僕は何度かこけそうになりながらも、赤い屋根の小屋に向かって歩きだした。
「よいしょ…よいしょーーっと!」
数分後なんとかたどり着いた。
『ありがとう、お兄ちゃん』
「はは… どういたしまして」
「お疲れ様です。ご主人様」
つ、疲れた…。
もう体銃がバキバキだ…。今日は筋肉痛確定だな…これは。
『ヒヒーン』
『あ シルビア!』
小さいシルさんの元に白い子馬が近づく。シルビア…そうかあの子が…。
「ま 子馬ですか?」
『うんっ。わたしがうまれたひにこの子もうまれたんだよ』
「じゃあ 君たちは姉妹なんだね」
『わたしがおねえちゃんで、シルビアがいもうとなんだよっ』
『ヒヒーン!』
シルビアは大きな声をあげる。
そうだよって小さなシルさんの意見を肯定してるみたいだ。
二人は本当に仲が良いんだね。
…二人を見てたらフレアを思い出してきた。
競馬大会に一緒に出場した僕の相棒。
最初は生意気な奴で、僕の言うことなんて全然聞いてくれなくて…
大変だった…。
あいつ元気にしてるかな…? 宿屋のおばさんに迷惑かけたりしてないかな…?
くすっ。
『゛−−−゛ご飯よ』
『あっママだ!』
え…? 今
『じゃあね、おにいちゃんたちー ばいばいー』
「待ってシルさっ」
止める間もなくシルさんは走り出し、あっという間に見えなくなってしまった。
「どうかなさいまし?ご主人様?」
「…いや」
今確かに゛−−−”って……聞き間違いだったのかな?
[ギギギギィ]
遠くから次の階層への扉が開くいた音が聞こえてきた。
ちょっと気にはなるけど、今は先に進むしか出来ない。
この場に留まっていてもこれ以上得るものはないみたいだし…。
僕たちは第二階層と書かれた扉を見つけ、扉に手をかざして次の階層へと向かった。
[本当に来たんだ…
五月蠅い邪魔者が…
深層に辿り着く前に始末しないと…ね]