複雑・ファジー小説
- 第二階層 ”——” ( No.3 )
- 日時: 2017/02/03 11:35
- 名前: 姫凛 (ID: 13XN7dsw)
第二階層?
もう目を開けなくてもわかる ここがどこだなんて
だって
暖かい日差し 動物の鳴き声 青々とした草木の香り
「また牧場だね」
「そうでございますね」
やっぱり第二階層もまた牧場だった。
ここはシルさんにとってとても思い出深い場所、という事なのかな?
それにシルさんのお母さんが言ったあの言葉…。
ちょっと不思議に思いつつも シルさんを探しにまた牧場を探索しようとしたら
『きゃああ!!?』
『だ、誰かたすけてくれー!!』
「「っ!?」」
女の人の悲鳴と男の人の助けを求める声が聞こえてきた。
声はそう遠くない、すぐ近くだ!
「パピコさん!」
「はいっ!」
僕たちはすぐに声がした方へ走って行った。
「あれは魔がい物!?」
魔がい物
プリンセシナに巣喰うバケモノ。
黒い人の形をしているけど目は真っ赤で 口からは紫の液体がダラダラチ垂れ流しで
食べる事しか頭にない生き物? なんだ。
あいつらがなんなのかは僕にもわからない。
でもあいつらはプリンセシナ内で暴れまわり 最後にはシークレットガーデンを壊す危険な存在だ。
一体の魔がい物が農家のおじさんのような格好の男の人とその奥さんらしき女の人に襲いかかろうとしている。
『た…たすけ』
『…ぁああ』
「グルル」
あの人たちを助けないと! 僕は考えるよりも先に剣を抜き
「はぁぁぁ!!」
「グギャァァァ」
気づいたら魔がい物を真っ二つに切り裂いていた。
魔がい物は「グガカ」と断末魔をあげたあと
黒い煙となって消滅した。表現としてあってるのかはわからないけど、゛消滅した”
って言うのが一番合っているような気がする…。
「はぁ…はぁ。 大丈夫ですか?」
『ぁ…ありがとうございます』
『た…助かったのか…私たちは…』
農家さんのご夫婦は 緊張の糸がほつれたみたいで安堵の表情をしている。
良かった二人共 怪我とかはないみたいだ。
そうだ。あの二人ならシルさんがどこにいるのか知ってたりしないかな?
「あのすみません。 シルさんがどこにいるかご存知ないですか?」
『シル…さんですか?』
二人とも首をかしげている。
シルさんって言ったから伝わらなかったのかな…?
じゃあ、別の言い方ならどう?
「えっとあそこの牧場の女の子なんですが…」
『あぁ。″−−−″ちゃんのことね』
あ…まただ
またあの違和感を感じたような気がする。
『なんだ。あんた知らないのかい?』
「?」
農家のおじさんが呆れた顔をしてる。奥さんが続けて
『あの子、少し前に行方不明になったそうなんですよ』
「えっ行方不明!?」
『ええ。今は森緑の騎士団の方々が探しているらしいけど…』
『まだ見つからないらしいよな』
「そんな!?」
僕が知らない間に、第一階層と第二階層の間でシルさんは行く屁不明になってしまったになってしまったみたいだ。
いったい 二つの階層の間でなにがあったんだ!?
シルさん、どこへいってしまったんの? とにかく第三階層へ早く行かないと!
いや先に行くべきは 第一階層と第二階層の間の階層?
う〜〜ん、僕だけじゃわからないや
ここはパピコさんに相談してみよう。
「教えてくださってありがとうございました。
じゃあ僕らはこのへんで…」
『あ?あぁ。助けてくれてありがとよ』
『本当にありがとうございます』
農家さんのご夫婦と別れて、僕はすぐにパピコさんに聞いてみた。
「ねぇパピコさん。
第一階層と第二階層の間に あった出来事って見ることはできないのかな?」
「…できないことはありませんよ」
「えっ そうなの!?」
パピコさんは思ってたよりもあっさり答えてくれた。
良かった! ならすぐにでも見に行こう!
と僕は思ったけどパピコさんの表情が浮かない。
「もしかして…絆度が?」
「はい…。
この記憶はシルさまにとっては最も見られたくない記憶の一部なのでしょう。
ですから内容が全てカットされていたのです」
「そっか…」
僕はまだシルさんに信用してもらえてない。
絆度が足りない今の状態ではここらへんが限界ということなの…か。
「でもでもぉ、絆が深まればこっちのもの♪
意図的に消された、幻の扉も出現するというものです」
「幻の扉?」
パピコさんいわく
幻の扉とは本来は存在しないもの / ありえないもの らしい。
深い絆で結ばれた者同士だけだ出現させて、開くことができる扉らしい。
「ささっご主人様。お帰りの時間でございますよ」
「うん…わかった」
体が光に包まれていく。
「シルさまとご主人様の絆が深まり、幻の扉が出現しましたらまた 愛のラブコールにておせらせ致しますね〜♪」
と言っていたパピコさんの言葉を最後に僕の意識はプツンと、電池の切れた機械のように 途切れ視界は真っ暗になった。
[やっと帰ってくれた…
でもせっかく魔がい物を用意してあげたのに
あんなにもあっさり倒されたらつまらないな…。
次は—
ってボクはなにを考えてるんだろ?
彼が此処に来ることなんてもうないのに
だって—
あいつとアイツの絆が深まるなんて
ありえないもの——]