複雑・ファジー小説

第三階層 オークション会場 ( No.5 )
日時: 2017/02/03 11:42
名前: 姫凛 (ID: 13XN7dsw)



ん…ここは?

次に目を開けた場所は牧場じゃなかった。

「会場…?」

大きくてドーム型になっている会場?

中央に舞台があってそれを囲うように観客席らしきものがある。

お客さんらしき人達は高そうな毛皮や装飾品を付けて、顔にはなぜか仮面もしている。

会場は薄暗い…。灯りは点々とまばらにあるロウソクの炎しかない。

僕とパピコさんはどうしてか、観客席に座っていた。

辺りを見ていると急にドドドッと太鼓の音とラッパ? とかの音楽が鳴って、パァァッと中央の舞台にライトが当たって明るくなった。

舞台の真ん中には中華民族風の衣装を着た

黒髪ポニーテールで糸目の長くて一つにまとめているヒゲを生やした男の人が立っていた。

『ハーイ、ミナサン見てラッシャイ! 寄ってラッシャイ!
 今日もキュートでラブリーなペットちゃんが揃ってるネ!』

ペット…?

動物の事かな? 魔女の怪しい儀式みたいな風景だったから、なにかと思ったけど…。

なんだ、ただの動物を売ってるだけなんだね。

「…そうでしょうか?」

「パピコさん?」

『ホッホッホ』

「こちらお金持ってそうなご老人が多くありません?」

「…うん …たしかに。 みんな変な仮面つけて顔を隠しているし…」

やっぱりただのペット屋さんじゃ…ない?

『ハーイ!デハ最初の商品ハー』

「「おぉぉぉう!!」」

「…ぇ」

『世にも珍しイ、森の国のさらに奥地にアルとされる隠れ里ナンカデ暮らしているという
リリアンの娘デース!歳はまだ十代の未熟な果実!』


舞台の上に現れたのは僕と同い年くらい

十八歳くらいのウサギの耳と尻尾が生えた女の子だった。

首と手には分厚く冷たそうな鉄の鎖と手錠がかけられているっ。

「動物ってまさか!!?」

『どうしたのかね? 少年、そんなに身を乗り出しては他の客の迷惑になるぞ?』

「…ぁ」

隣の席に座っていた白いサンタさんのようなヒゲをはやしたお爺さんに怒られた。

あっそうだ。このお爺さんなら、ここがどうゆうところなのかわかるかも!

怒られついでで訊いてみよう。

「あのここで取り扱っている商品って…」

『商品? あぁ。ここの品ぞろえは実にいいですなぁ。
 リリアンなぞ珍しい種族、他ではそうお目にかかりませぬぞ』

「はぁ…はぁ…?」

『それにコワレタラ廃品回収までもしてくれる。
 本当に良い店だ。さすが、天下のドルファフィーリングだ。
 この店はわたしのお勧めだよ、少年』

「壊れた…?」

どういう意味だろう…?


(              壊れる / コワレル
 あまりにも酷い 肉体労働 惨い仕打ち 拷問 地獄の様な日々 自害の失敗
 それらを繰り返すことによって 人の脆い精神は簡単に / 粉粉に
                コワレル )



『続きマシテの商品はー』

次に舞台に上がって来たのは…あの子はっ!?

『……』

『山の国から連れ帰って参りマシタ! マダ齢六の幼女。
 どのように育てるも(コロスも)アナタ様しだいでゴザイマース!』

「シルさんっ」

「あの山賊どもっ、シルさまを売りやがりましたねぇ!!」

「パピコさんっ!」

「はいっ!?」

「一生のお願い、お金貸して!!」

「えぇー!?」

本当は力づくでもシルさんを助けたいっ。…けど今は派手な行動は控えた方がいいと思う。
さっき隣のお爺さんが叱ってくれなかったら、僕は…
観客席の袖で待機している黒いスーツと黒いサングラス 手にはライフルを持った あの黒服達に撃たれてただろうから…。

「ご主人様…お気持ちはわかりますが…」

「時間がないんだっ!!」

そう僕たちにもシルさんにも時間がない。

見ててわかったんだけど、ここはオークション方式でさらわれた女の子は売買されているみたい。

今もシルさんにかけられた値段が 百万単位で上がっていく。

このままじゃ、誰かに買われて 助けられなくなる!

「はやくっパピコさ『その娘、わたしが三億で買った!』…あ」

『『さ、三億だとぉ!?』』

ざわっ ざわざわと会場がよどめわきたつ。

『他にイナイネ? ハーイ! パクホー伯爵の落札ダヨー!』

カンカンッと落札の合図のコングが鳴らされる…。オークションが終わった。

『悪いね、少年。
 オークションとはせりを見極めるのが重要なのだよ。次は頑張りたまえ ホッホッホ』

シルさんを買ったのは、隣の席のあのお爺さん。


負けた。

僕は初めてのオークションで

せりにかけられた友達を救う

絶対に負けっちゃいけないオークションで

負けた。




[ ……。
  え? ボクは誰なんだって? そんなこと知ってどうするのさ
  そんなのキミには関係ないね。
  キミはキミのくだらない、シアワセに満ちた毎日でも送ってればいいんじゃないの?
  あーあ。ホント くだらない なにもかも ]