複雑・ファジー小説
- 第四階層 機械仕掛けの街 ( No.6 )
- 日時: 2017/02/03 11:46
- 名前: 姫凛 (ID: 13XN7dsw)
第四階層…。
第三階層でシルさんを救えなかった僕たちは、次の階層へとやってきた。
「エッホ、ケッホッ」
ここは。ひとことでいうと、鋼鉄の街って感じ。あと咳が止まらなくなる場所だった。
黒くて大きい工場みたいな建物が沢山あって、モクモクと黒い煙が煙突からいっぱいでている。
あっちこっちからカンカン トントン って機械音が聞こえてくる。
空は分厚い黒い雲に覆われて真っ暗だ…。今が朝なのか昼なのか夜なのか、全然わからない。
「…なんだか、すごいハイテク? なところだね」
「そうですね…。産業革命っ! って感じですね、ご主人様っ」
「…すごく都会的ってこと?」
「もぅっカワイイ♪」
???
***
バチンッ!!
(ムチのような) なにかで叩く音と
『ほらっ。まだ汚いかエ。ちゃんと綺麗に拭きなエ!!』
バチンッ!!
すごく怒っている女の人の声が聞こえてくる。
「あちらからの建物からです」
パピコさんが指さす方向には、大きくて巨大で金ぴかで ちょっとしたお城みたいな建物だった。
僕たちは庭に生えている木の物陰に隠れながら、声のする方へ近づいて行ことにしたんだ。
そうしたら……見えたのは…
『………』
無言で渡り廊下を拭き続ける女の子の姿が…。
「あれは…シルさん?」
「ここはシルさまが買われた先でしたのですね」
シルさんが四つん這いになって、廊下を拭いていた。
着ている服はボロボロで薄汚れてて一度も洗濯されてないのがわかる。
髪もクシが通されてないボサボサ。顔や手足は傷だらけ。
遠くから少し見ただけでも、わかる。シルさんがどんな状況でどんな酷いことをされていたのか…。
『ちょいと、返事はないのかエ?』
シルさんの傍に仁王立ちしている女の人。
トマト色の髪を後頭部でお花みたいに 四つ葉のクローバーのような形の髪型で真っ赤な深紅の薔薇が装飾されたドレスを着てる女の人。
不満そうな顔でシルさんを見下げてる。
『へ・ん・じはエ?』
『…はい』
『小さいかエ!!』
バチンッ!!
『ッ!!』
トマトさんが持っていたムチが振り上げられて、ムチの先がシルさんの体に振り落とされる。
バチンッ!! バチンッ!! バチンッ!!
何度も 何度も
シルさんにムチが振り下ろされる。
さっき僕が聞いた音はこの音だったんだ。
『返事が小さいかエ!?』
『はいっ!』
『うるさいエッ!! 静にしないエ』
『すみませんっ……すみませんっ!』
泣きながらシルさんは謝る。 でもムチは振り下ろされ続ける。
何度も 何度も 何度も 何度も!!
「もう止めてあげてよっ!「ご主人様駄目ですっ」
止めに入ろうとする僕をパピコさんが止める。
酷いよ…こんなの…酷すぎるよ!! シルさんが…いったい…なにをしたって言うんだよっ!!
『ほらっ拭きなかエ!? まだ全然っ、汚れが落ちてないかエ』
ビチャッ ポタポタ…
汚れ。
そうだね。貴方からみたらそう、見えるんだね。…あの赤い液体が。
何度もムチで叩かれて、シルさんの体のあちこっちから血が流れ落ちている。
その血は廊下を汚す? 違う。 貴方がシルさんをムチで!!
『……ぅ』
『泣いてる暇があるのかエ?』
バチンッ!! バチンッ!! バチンッ!! バチンッ!!
ムチは容赦なく振り下ろされ続ける。
『お姉さま……ってまだ掃除してましたノ? メスブタさん』
「あの人は?」
トマトさんと同じ髪型で、オレンジパプリカのような髪色で、山吹色のタンポポを装飾されたドレスを着た女の人が、シルさんの掃除している廊下の反対側からやってきた。
「お姉さま…。同じ髪型で同じような見た目だから姉妹かな?」
「きっとそうでしょうね。 性格腐ってそうですし」
「うん」
トマトさんはパプリカさんの方を振り向くと
『あら、メリアントさん。メスブタ、だなんてお下品ですエ?
この子は、"シル"よエ』
「シル!?」
そうか…ここで この瞬間 シルさんはシルさんになったんだ…。
『まぁ。ワタクシとなしたコトがなんとはしたない。
オマエのせいよ、シル!』
『………ぁがっ!!』
「っ!!?」
懸命に自分の血を拭き続けるシルさんの頭をパプリカさんは、かかとが鋭利な刃物くらいに尖ったヒールの先で踏みつけtた。
何度も 何度も 何度も 何度も 何度も!
シルさんの頭を踏みつける。
「……なんなんだよ。 …なんだよ、これ!!?」
「ご主人様…」
僕はただ叫ぶ事しか出来なかった。
なにも出来ない自分が腹立たしくて…
「どうして!? シルさんがこんな目に合わないといけないんだよ!!
どうして!? なにも悪い事なんてしてないのに!!
どうしてなんだよ!? 答えてよパピコさん!!」
ただ叫ぶ事しか出来なかった…。
パピコさんに八つ当たりすることしか出来なかった…。
[コワレロ。
コワレテしまえ。
なにもかも 全部 コワレテちゃえ
この世界はザンコクだ
ボク達にイバショなんてない
ワタシ達はコワレテ 処分されるだけの ソンザイ
コワレロ。
コワレテしまえばいい
なにもかも 全て 全部 全部巻き込んで
愛も憎しみも 希望も絶望も 全部 コワレテしまえ]