複雑・ファジー小説

選択肢 『憎い! でも…僕は…』 ( No.12 )
日時: 2017/02/04 17:17
名前: 姫凛 (ID: /JJVWoad)







-憎い! でも…僕は… -


ああ…確かにユウの言う通りかもしれない。


「そうだね。僕は君が憎い」

「ご主人様!?」

[それは、そうだろうねっ。ヒトってのは、自分の大切なモノを傷つけられたら 怒り 怒り 激情する生き物だものねぇ!!?]

アハハッとユウは狂った 乾いた 笑い声をあげる。

僕は腰に下げた剣。父さんの遺品 宝剣 リリースを抜いて剣先をユウに向けて

[…?]

カラン。剣を足元へ落とした。

[何の真似だよ。それは…?]

「確かに僕はお前が憎いし嫌いだよ? でもだからと言ってお前を殺したりしない。
 僕はお前たちとは違う」

「それでこその、私が愛するご主人様でっす♪」

「ぱ、パピコさんっ」

こんな状況でも相変わらずな人だな…あの人は。…でもそんなところが彼女のいいところなんだと思う。

[なにが…]

ユウの体が震える。

[なにが…愛だっ!! くだらないっ!!]

一瞬、パピコさんの首元からユウの刀が離れたっ。パピコさんはそのスキを突いて僕の方へ逃げてくる。

[あ…待てっ]

僕はパピコさんの手を取ってその場から逃げ出した。


***

「逃げて来たのはいいけど、どこへ逃げよう!?」

「何故か、プリンセシナからの脱出は不可能でござます!」

プリンセシナからの脱出もダメ。逃げる場所もない。どうすれば…。

【こっち ルシア!】

誰かに名前を呼ばれたような気がする。

【こっちよ ルシア!!】

いや気のせいじゃないっ! 誰かが僕を呼んでいる。

「パピコさんっ あっちへ!」

「はっい」

僕たちは声が聞こえてくる方向へ走る。すると光輝くナニカが

【入って!!】

あったけど、考えるよりも先にナニカに向かって飛び込んだ!








***




[っち。取り逃がしたか…。
 まぁ…いい。アイツら息つく先はわかってる。そこへ先回りすればいいだけだ]

ユウは赤く燃える空を見上げ

[オワリの時はもうすぐだ…]

彼の瞳からは一滴の雫が流れ落ちた。





***