複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.1 )
- 日時: 2017/09/04 10:37
- 名前: 姫凛 (ID: I4LRt51s)
=主な登場人物紹介=
「君のことは僕が守る!」
名前:ルシア
年齢:18歳
性別:男
種族:メシア
職業:剣士
容姿:銀白色のウルフヘア。前髪は少しトサカのようになっている。
色白で瞳の色は灰色。背丈は平均的だが食料不足のせいで痩せ衰えている。
腰に亡き父から譲り受けたメシアの家宝『リリース』方見放さず常に下げている。
武器:剣(リリース)
出身国:山の国
詳細:寂れた誰も寄り付かない小さな村に妹と二人だけで住んでいる。
性格は温厚で病弱な妹を一刻でも早く病から救いたいと一人狩りに出かけ魔物達と闘い素材を剥ぎ取りそれを売って薬を買うお金を貯めている心優しき妹思い。
彼の瞳には妹のためだったら何でもする、してあげたいという覚悟の炎が燃えている。
「貴方といると…不思議な気持ちになります。この想いはいったい?」
名前:ムラクモ
年齢:23歳
性別:女
種族:ドラゴンネレイド
職業:ボディーガード
容姿:紅い髪色でサイドテール。瞳の色は空色。色白でもちのようにモチモチ肌。
フリルのついた紅いドレスを着ているが、基本的には赤いポンチョを上からはおい顔と一緒に隠している。
武器:体術
出身国:仮面の国
詳細:ドルファに雇われているボディーガード。
口下手な上に極度の恥ずかしがり屋で、いつも客を傍で守らなくてはいけないのに物陰に隠れてしまう。
実は心優しい性格で、野花咲いていると涙を流してしまうほどだ。
「わし、ムラクモちゃんの彼氏やねん」
名前:ロックス
年齢:37歳
性別:男
種族:壊楽族
職業:監守
容姿:黒髪でうなじのところで一つにまとめて結っている。瞳の色は黒。
海賊の様な黒い眼帯を右目にしている。アロハシャツの様な服で下は半ズボン。南国帰りの人みたい。
肌の色は黒く出っ歯でブサイク。
武器:鎖鎌
出身国:南国
詳細:南国生まれの南国育ち出身で独特の方言(関西弁)で話す男。
むらくもにベタ惚れしており、自称彼氏。
道楽好きで仕事は嫌い。わかりやすい性格で、壊楽族らしく破壊活動でしか快楽が得られない。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.2 )
- 日時: 2017/09/04 10:43
- 名前: 姫凛 (ID: I4LRt51s)
【鬼の仮面騎士】
名前:叢
読み:むらくも
年齢:23歳
性別:女
種族:ドラゴンネレイド
職業:騎士
容姿:顔には般若の面、紅蓮の鎧を着ている。
真っ赤な血の様な髪色サイドテール。
武器:包丁と槍
出身国:仮面の国
詳細:幾度となくルシア達の前に現れ襲い掛かってくる強敵。
襲ってくる目的は不明。冷静かつ明晰でまるでロボットのように的確に攻撃をし巨大な包丁による攻撃は高速で振り下ろされ、重い一撃となる。
そしてムクロの本来の姿?
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.3 )
- 日時: 2017/09/12 12:22
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: PCEaloq6)
名前:ザンク
詳細:ドルファ四天王の一人。
残虐で血に飢え戦いを好むため、悪行を快楽としている。
とにかく非人道的な男。
名前:ユウ
詳細:ドルファ四天王の一人。ドルファが経営するコロシアムの支配者。
戦う事が大好きで敵味方関係なく勝負を挑んでくる。
素朴で乱暴な性格。殺す事だけに関しては天才的だが名前を覚えるのが苦手。
名前:ナナ
詳細:ドルファ四天王の一人。
ドルファが経営する裏カジノのオーナーで裏社会のボス。
独特の方言(京都弁)で話す。のんびりまったりとした話口調の中に時折、毒を吐きグサッと相手の心臓へ一突きにする。
彼女の持つ扇子は特殊な物で振るだけで、吹雪を起こせたり氷でできた槍を投げつけたり出来る。
趣味は賭博そして、ペット兼奴隷たちをいたぶること。
名前:エフォール
詳細:無口で、マシーンのような残虐な少女。
願望はなく、戦いそのものが目的である。
名前:ロザリンド
愛称:ロザリー
詳細:元々は寂れた貴族の家の娘だったが、ある日ドルファ社長、バーナードに拾われそれ以来バーナード敬愛し尽くしている。
見た目も中身も幼女だが年齢だけは結構イッテいる。加齢臭がするのが玉に瑕。
戦闘力は全くないが…まぁ、亀の甲より年の劫と言うやつで頭の回転だけは速い。
名前:バーナード
詳細:ドルファ社長。
冷静沈着、計算高く、自身の戦闘力も非常に高い。
- prologue 常闇の海 ( No.4 )
- 日時: 2017/09/12 12:36
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: PCEaloq6)
常闇の世界
光も 音も 物も
何もない
ある物は闇と静けさ
全てが漆黒の闇に染まる
波一つたたない 静寂な海に私は沈む 何処までも
孤独の海に私は沈んでいく 何処までも
独り沈んでいく
記憶もない
名前もない
意思も感情もない
からっぽの人形
何もない私は海に沈んでいく
生きる意味などなく
ゆっくりと 時間をかけて沈み続ける
だけだと思っていた
あの方に広い救われるまでは—
闇に支配され 静寂な海に あの方は光を照らし
私に生きる意味を与え
からっぽだった器を満たしてくれた
私に名前を下さった
新たな生を下さった
だから我は戦う
あの方の盾となり 剣となって
向かってくる敵を全て皆殺しにしてくれよう
我を常闇の海から救いだしてくれたあの方
バーナード様の駒として闘い続けよう
だって我は
般若の面と紅き鎧をまとった騎士
——叢なのだから
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.5 )
- 日時: 2017/09/12 17:19
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: PCEaloq6)
ドルファフィーリング。我らの王バーナード様が作り上げた企業。
表向きには食品、不動産、旅行サービス、孤児院の経営、地域振興などを行っている総合企業という事になっている。
我もまた表舞台では、極度の人見知りで恥ずかしがりやなムラクモとして、ドルファのぼでぃーがーどなるものをやっている。
具体的には何をする仕事なのか聞かされていないが、重要人物を見張って暗殺者に横取りされないように見張り守ればいいらしい。
裏の仕事。本来の仕事では、殺し屋・暗殺者・始末屋。様々な呼ばれ方をされるが、ようは王にあだなす厄介者をこの世から消す。単純な仕事だ。
今日も新たな獲物を捕まえた。
長年王自ら探し求めていた、メシアと呼ばれる種族の最期の生き残りの一人。ルシアという名の少年だ。
ドルファ主催のぱーてぃなる茶会に誘われ、のこのこやって来たところを睡眠薬入りのじゅーすなる飲み物で眠らせ、ここ椿の牢獄に捕らえておくことになった。
我がそう王に頼んだのだ。此処ならば自身の目でじっくり吟味することが出来るから。
メシアの少年と出会ってから少し調子が悪いのだ。
無意識にため息をつき、胸がもやもやとして気持ちが悪い、食欲があまりなく普段なら十人前なぞ軽く食べれていたのに、最近は一人前を食べるのでやっとだ。こんなことは初めてだ。
…奴に可笑しな病気でもうつされてしまったか。
「起こさんよーに慎重になぁー。ん?どうしたんや、叢ちゃん?」
あまり感じていなかったがどうやら、長い時間考え事をしていたようだ。時計の針が進んでいる。
そして見たくもない眼帯親父の顔が目の前いっぱいに占領されている。相変わらずこの男の顔は、見るに堪えないな。
なんでもないと言ってロックスの横を素通り。
「少し汗をかいた。風呂に入る」
「あっ、そうか。ほんじゃ、こいつはわしらで片づけとくわ」
「あぁ。頼んだ」
メシアの生き残りことはひとまずロックスの奴に任せておくことにしておこう。
煮ても焼いてもくえない奴だが、腐っていても一応は、ここ椿の牢獄の看守長。頼りになるとき…なぞ待ってられん。今すぐにでも役に立ってもらうことにした。
椿の牢獄で用意された自室へと向かう。
そういえば、ここに来る者皆口をそろえて此処は入り組んでいるから迷子になる。嫌いだ。などどぬかしていたな。我からすれば地図を見ればいいだろう、と言いたくなるものだ。
看守長に置かれている椿の牢獄の設計図。あれを見れば一目瞭然というもの。仕組まれているからくり仕掛けも全て記載されているのだから、それを利用すればいいだけの話だ。
敵に利用されたならば終わりだがな。
「着いたか」
考え事というのはいかん。あっという間に時がすぎてしまう。
【ワシと叢ちゃんの愛の巣】などと書かれたプレートをへし折りつつ、指紋認証で鉄の扉を開き中へと入り、王から頂いた。心を鬼にすることが出来る秘密道具、般若をかたどった面を机にそっと置て、そのまま脱衣所に向かい初陣を頑張った褒美にと王から頂いた血で紅黒く染まった鎧を脱ぎすて、しゃわーるーむなどと変な名前の箱型の湯船へ入る。
「そういえば…前にロックスの奴が」
我の自室はシンプルすぎるとやんやん言ってきたのを不意に思い出した。
寝床と獲物(武器)とそれを整備する道具、そして乾かし干物にした肉や魚の携帯用食品と必要最低限着替え。それ以外に何が必要だと言うのだ。逆に聞きたいものだ。
奴の部屋は我の隠し撮り写真で部屋中埋め尽くされている。…あれはさすがに引いた。
全ての写真を無に帰し、奴も無に帰そうかと考えたほどだ。
そうえば他の奴らはどうだっただろうか…一度入った入らなかったかの他の奴らの自室風景を思い出すために施行を巡らせる。
ザンクは確か無数のナイフを置いていた。どれも血がべったりと付き、乾いて錆びていた。ちゃんと整備してない証拠だ。あれではもう使い物にならないだろう。
ユウは本が山になっていた。皮肉で少々子供っぽい性格の奴が広辞苑など分厚い本を沢山持っていて驚いたのを思い出した。あと本の山が崩れて生き埋めになっていたのを。
ナナはよくわからない骨董品などが並べられていた。どこぞの国の国宝だそうだがそういったものに一切興味のない我からすればよくわからない代物だ。
エフォールはテント暮らしだから我とそう変わりはないだろう。
ロザリーはぴんくのふりるとかおひめさまという生き物を模した部屋にしていると本人が熱く語っていた。難解すぎる内容だったため子守歌かわりに聞いていたのを思い出した。
うむ。皆の部屋と我の部屋そう変わりはなにな…と独り、流れ出る滝の如くしゃわーなるものにうたれていると
「叢ちゃ〜ん、ちょっとえぇ〜かぁ〜?」
「ッ!!?」
この気だるく腹が立つような声は…ロックスかっ!?
足音は真っ直ぐしゃわーるーむの方へ向かって来る。我が入浴していると知っていながら、あえて入って来たなっ。
奴は俗に言う変態と呼ばれる種族だ。何度我に肉体関係を迫られたことか……考えただけで吐き気がする。
ロックスを懲らしめるくらいわけない。獲物なし、素手で十分だ。…だが、さすがに今の恰好で戦うのはちょっと…たじろいでしまう。
「叢ちゃ〜ん?」
「な、なんだっ!?」
しゃわーるーむもすぐ外からロックスの声が聞こえる。もうこんな近くまでっ。
どうするっ。ここはもう開き直って、全裸で相手を…
「あ、まだ風呂やったんか?」
なにを白々しい。知ってて入って来たくせに。
まあいい。今の奴はこれ以上、入って来る様子はない。ここはひとまず様子を見る事にするか。
「そうだ。だから帰れっ」
「そない、冷たい事いわんといてな〜。昨晩は一緒に燃えたやないか」
「そんな事実ない。他の女と間違えているのではないか?」
「あっれ〜?」
あれではない。全く、どうして雄はこうも阿呆ばかりなのだ。いや同じ雄でも我が王違う。あの方は気高く高潔なお方、そしてあのルシアと言う少年もまた……
「って、我は何を考えているのだっ!?」
「あ〜? なに〜?」
メシアの生き残り敵だぞ! 今はいいがいずれは殺さなければいけない対象。
え? 殺さなければいけないの…?
「だあああああ!!」
いくらこの先、我を楽しませてくれそうな強者になりそうな逸材であったとしてもだ。我らの王。バーナード様の願いを叶える邪魔になりゆえる芽は早めに刈り取らなければならないのだっ。
「叢ちゃ〜ん?」
しまった! メシアの生き残りのことを考えていたらロックスの声が先程よりもずっと近くに聞こえるぞっ。
「ロックス、貴様それ以上こちらに入ったら殺すぞ!」
「おっと」
足音が離れていく。まったく…油断も隙もならない男だ奴は。
滝のように流れ出るしゃわーを止めて脱衣所に向かうと、ない。ないのだ。大事に脱いで置いておいたはずの、紅い鎧がないのだ。
「あっ、鎧はしまわせてまらったで」
「なにっ!?」
まるでたいみんぐを計ったかのようにロックスが答えた。まさか覗き込んではいないだろうな…?
たとしたら殺す! 二秒で殺す!!
とゆうのは後にするとして、さっきだっての問題は鎧だ。鎧がなくては裸で表に出なくてはいけない。それは……・別の意味で死ぬことになろう。
「安心し、その代わりに洋服置いてるから」
別の服だと? 改めて脱衣所内を探してみると、あった。別の籠の中に表舞台でムラクモとして活躍するときに着ている衣装が綺麗に折りたためられていた。
分からぬ。なぜロックスの奴は鎧を盗み、代わりにこの衣装を置いたのだ? 解せぬ。
「叢ちゃん、イカンよ?」
本当にたいみんぐのいい男だな。
「ずっと重たい、鎧着て気をパッツンパッツンに張っとたら疲れるやろ?
たまにはラフな格好してラクにせな」
鎧を着て疲れたことなど一度もない。むしろ今こうして貴様の相手をしている方が何百倍も疲れる。
逆にそのことについてはどうしてくれようか…。と怒りに震える拳をおさえ、用意された衣装着替え脱衣所を出ると、待ってましたと言わんばかりに縞々とらんくす一丁のロックスが手をわきわきさせながら嬉しそうに
「よしゃ、綺麗になったとこで、ベットイコか!」
と飛び上がり襲い掛かって来たのでここは、先ほどの怒りを思い出し
「行くかーーー!!」
「ムギャーーー!!」
奴の股間をふぐり蹴り飛ばしてやった。股間を抑え、悶え苦しむロックスを部屋に捨て置き後にする。自業自得だ。
自室を出るとすぐにエフォールに呼び止められた。
「……殺殺殺殺」
ザンクとユウとあのメシアの生き残りが運ばれた部屋へ様子を見に行くらしい。きっと話の論点がずれにずれ、最終的に殺し合いに発展するだろうからその審判兼仲裁係りに我も参加しろとの事だ。
いつから我はお子様の世話係となったのだ。今は何も仕事が入っていないことだし、久々お子様たちの顔を見るのも悪くはないだろう。
「わかった。行こう」
「殺殺殺殺殺殺殺殺」
着いて来てというエフォールの後をついて行く。
このままついて行けば、メシアの生き残りが眠っている部屋へ辿り着く。眠っている…寝ているのか…奴の寝顔はどんな顔をしているのだろか。
可愛い系? それとも癒し系だろうか……
「って、だからなにを考えているんだっ我はーーー!!」
「殺?」
メシアの生き残りと出会ってから調子が本当に悪い。特にあの美しい満月の夜を共に過ごした辺りから拍車をかけて……悪くなって……顔が熱い。
やはり一度、医者に診てもらった方がよいのかもしれぬ。可笑しな病気、特に注射針を刺すような事にだけはなりませんように……心から祈ろう。本気で。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.6 )
- 日時: 2017/09/19 17:11
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: eK41k92p)
「アンタも来たんだ?」
エフォールに案内されるまま部屋に入ると最初に聞こえたのは子供の皮肉。声の主は同然ユウだ。
ユウの向かい側には、だいぶ待たせたしまった事が癪に障ったのか、ザンクが苛立ちを露わにして今にも暴れ出しそうな勢いだ。
「待たせてすまない」
対面上謝っておく。詫びの言葉一つとってもいれるか、いれないかで大きな違いがでてくるからな。
そもそも他人なぞに興味がないユウは「あっそ」と軽く受け流す。短期で血の気の多いザンクは
「オレ様は待つのが嫌いなんだ。次遅れたらどうなるかわかってんだろうなぁ?」
と喧嘩を売ってくる。そんなもの買う愚か者が何処にいる。
「なにそれ? 自慢?」
「あぁ?」
此処にいた。案外すぐ傍に居た者だ。愚か者が二人も。
こうなることが解っていた方エフォールも我を呼んだのだ。やめろと愚かな二人に言う。ちっと舌打ちをして二人は背中合わせにし真逆の方向を向き合った。……まったくお子様の相手は疲れるだけだ。
ザンクとユウの二人は顔を合わせるとすぐに喧嘩を始めてしまうところがある。
荒くれ者と皮肉屋。正反対で似た者同士の二人では馬が合わないのだろう。放っておけば勝手に潰し合だろう。だがそれは王の望むところではない。
だから仕方なく我が仲裁する羽目になるのだ。とても面倒くさいことだが、王の為ならば致し方無い。
はぁ…とため息をつき下を向くと、メシアの生き残り寝顔が…綺麗だ。雄に対してこの言葉を使うのはあまり適切ではないのだろうか……でも、とても綺麗な寝顔だ。
「殺?」
「い、いや、なんでもないっ」
い、いかん。エフォールに様子をがおかしい事を勘づかれてしまった。
綺麗な寝顔と言えど、奴は敵! メシアの生き残りは殺す対象!
緊縛とした雰囲気でよからぬことを考えているなど、緊張感が足りぬ証拠だ。我も精進せねばな。
「ギャハハハッ!まさか、こんなに簡単に捕まえられるとわなぁ!!」
嘲るザンク。奴の笑い声は頭の中がキーンとしてとても耳障りな声だ。
「黙れ、ザンク。起きたらどうするつもりだ?」
そうだ、ユウの言う通りだ。こんなに綺麗で素敵な寝顔が見られなくなったらどうしてくれよう……ではなくて、だっ!
メシアの生き残りが起きて、今の我の姿を見られたらどうしてくれようか。正体がばれるようなことになれば、本当に殺さなければいけないことになってしまうではないかっ!
いやいや…そうではなくって王の計画が台無しになってしまうではないか! そう。そうゆことなのだっ。
「あぁ? 起きたなら殺せばいいだけだろぉ!?」
ザンクは高らかに笑う。確かにそうだな。いつもならザンクと同意見だ。だが今回は駄目だ。
メシアの生き残りに限ってはそれは許されないのだ。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.7 )
- 日時: 2017/09/16 13:56
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: yrys6jLW)
「…殺殺殺殺殺」
繰り返し同じ言葉を言うエフォール。我には分かる怒っている。隠す気のない殺気だだだ漏れだ。
もちろんその殺気の矛先は
「あ゛?」
血が足りず喉が渇いた獣。ザンクに対してだ。
イライラとした表情でエフォールを睨み付ける。それに同調しユウもまた
「ホントッ、愚か者が一人いるダケで困るんダケど」
「なんだと…ユウ」
見下したように睨み付け人を小馬鹿にしたような口調でザンクに喧嘩を売った。
短期で単純な奴らだ。喧嘩を売られれば簡単に買い。
場所も時も関係なく喧嘩、いやただの殺し合いを始め潰し合う。
「王に言われているダロ。メシアの生き残りはまだ殺すなと」
「知らねえなー! オレさまはオレの殺したい奴を殺したい殺すだけだぜっギャハハハハッ!!」
愚か者が。
我らの肉体もそれに流れる血も魂も全ては王のもの。バーナード様に捧げた、王に使える駒だ。
それが王の命に背き己の意思で行動するなど笑止千万。
「殺殺殺殺殺殺殺…」
「つーか、エフォール!殺殺うるせぇ!!」
「…殺」
緊迫とした空気、一触即発。誰かが動けば、試合のごんぐが鳴らされるだろう。
我、そして眠るメシアの生き残り、椿の牢獄で働く従業員もろとも塵となるだろう。
「………やめろ」
「「「ッ」」」
貴様らが勝手に潰し合い、殺し合い。誰が巻き込まれ、誰が負け死のうが興味ない。
だがメシアの生き残り。ルシアを巻き込んで行うと言うのならば、我も参戦しよう。主ら全員、天へも地へも行けず永遠に現世を彷徨う生き地獄を味合わせてくれよう。
殺気に満ちた狂気で威圧すると、三人は大人しくなってくれた。そうか、分かればいいのだ。我とて無駄な動力を使いたくはないからな。
空気も鎮まった。ならばここはひとつ話の内容を変えるべきか。昔このようなことが起こった時、紫龍様は話題を変えることで指揮をとられていた。
話題…か。闘いしかしてこなかった我に、この場に適した話題など振れるのか…?
こむ、そうだ。コロシアムの話はどうだろう。ドルファが経営二大娯楽施設のカジノとコロシアム。コロシアムはユウの管理下。そしてザンク、エフォールのお気に入りの場所。うむ、きっとこれが一番の話題と言えよう。
「ユウ」
「ナニ?」
せっかくの殺し合いを邪魔されたことに不機嫌な表情のユウに
「コロシアムの景品はどうなった」
に景品の話を振ってみたのだが
「ちゃんと用意しましたケド」
不機嫌なままだった。なにか間違えたのか。
いや間違えてはいないはずだ。ザンクとエフォールの瞳が輝いている。
景品がなにに決まったのか興味深々と言った顔だ。
「殺殺殺殺殺殺殺」
「誰だって? あの競馬大会で荒稼ぎしてた雌豚だよ」
競馬大会で荒稼ぎしていた雌豚だと……?
なぜ馬のれーす会場で豚が優勝する。いや出来たのだ? 馬ではなく豚のれーすでも行われていたのか? それの優勝者が雌の豚?
もうひとつ気になるのは何故わざわざ雌豚と呼かということだ。豚は豚だろう。雌も雄もいるが所詮豚は豚。
雄でも雌でも食用肉であることに変わりはない。肉に何故一々雄だの雌だのつけて呼ぶのか我には全く理解できないことだった。
「あーーー!! 殺したりねぇーー!! オレ様もコロシアムで殺しまくりたいぜぇ! ギャハハハッ!」
豚のことを考えていると、突然ザンクとが発狂した。
気持ちは分からないでもない。この症状はドラゴンネレイドなら皆起こるもの、無性に血を浴びたくなる時があり、喉が無性に乾いてしかなのない夜が訪れるのだ。。
我はバーナード様が用意してくださった、血液をパックしたものを飲むことで衝動を抑えるようにしている。が、見る限りザンクは欲望のまま狩りとった新鮮な血で喉を潤しているようだがな。
「ふんっ、ボクはアンタみたいに遊びでやっているわけじゃないんだケド」
「殺殺殺」
「あぁ゛? オレ様に命令する気かぁ? 雑魚ふぜいがぁぁぁ!!」
「ボクと殺ろうっての」
「殺!」
またこうなるのか、これで何回目だ貴様ら!
一触即発の空気、三人共いつでも戦闘出来るように身を構えて、今か今かと待ち構えている。
本当に手間のかかる同僚たちだ。血の気が多いことはいいことだと思う。が、多すぎて他人に迷惑をかけるのは好かん。
どうしても戦いたいと言うのならば、我がいつだって相手をしてやると言っているのに……何故誰も我には仕掛けて来ないのだっ!!
と、いかんっ、放しがずれてしまった。まずはこの場を納めなければ…
「…やめろ」
「「「…叢」」」
三人は武器から手を離した。ひと段落か。これで少しは大人しくしておくだろう。
それにしても……と寝具の上に眠るメシアの生き残り、ルシアに視線を向ける。
綺麗な寝顔。見ているだけでこれまでの苦労がすべて水に流されていくような癒され感。こやつの寝顔を見ていると、胸の中にあるざわざわがなくなり心地良い気分になる。
「殺?」
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.8 )
- 日時: 2017/09/19 16:57
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: eK41k92p)
「殺?」
「ああ゛」
「エフォールがナニカを気にするなんて珍しい」
…確かに。いや一緒になって納得している場合ではないっ。
この場に居る誰よりも勘が鋭いエフォールのことだ。我が脱線しているのを見抜いているのだろう。
自分自身でも何を考えているのかよく分からん。仕事に支障をきたすのはよくないと、人に言える立場でないのは我の方であったか。
軽く首を振り頭の中を整理する。
我の仕事はなんだ? 目の前に横たわるメシアの生き残りが逃げないように見張る事。
王にあだなす若葉なら早急に摘み取らねばならぬ。気持ち? 意思など我には存在せぬ。我は叢。
—般若の面をつけた紅き鎧の騎士、叢なのだから。
「…ふぅ」
「殺殺殺殺」
礼を言うぞ、エフォール。貴様のおかげて整理がついた。これでもう大丈夫だ。
三人に顔を向け解散するときに言ういつもの台詞をはく。
「休憩は終わりだ。王の為にその身を粉にして働け」
舌打ちし睨み付け不機嫌極まりないザンクを見てさらに不機嫌そうな顔をするユウとエフォール。
我らの仲は最悪。仲良しこよしなどありえない。だが、戦場の上では背中を任せられる心強き見方だと我は思う。やつらはそうは思っていないようだが…な。
「これで…この部屋にはいる者は……」
我と横たわるメシアの生き残りだけ。
自然と視線は下に向く。
「スー」
何度見ても、見惚れてしまいそうな美しく綺麗な寝顔だ。
「………ッ我は何をしているのだ!?
自分でもはっとする。
気づけばルシアの……いや、メシアの生き残りの頬に手を添えていたのだ。
「……」
よかった…まだ寝ている。起きてはいないようだ。
もし起きていて我の姿を見られていたら……考えただけで不快な気持ちになる。
敵相手に変な感情を起こすなど、何を考えているのだ……やはり変な病気にかかってしまったのだろうか……頭痛がするようだ。
「少し外に出て新鮮な空気でも吸うとするか」
重く痛い頭を抱え、頑丈そうに見えるが経費の都合で張りぼてで作られたドアを開らき、新鮮な空気を求めて部屋の外に出て行った。
—この時、我は知らなかった。まさか、メシアの生き残りがもう目覚めていて我らの会話を盗み聞きしていたとは。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.9 )
- 日時: 2017/09/26 14:48
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: 6/JY12oM)
メシアの生き残りであるルシアを監禁した部屋から出た後、廊下に長椅子が均等に置かれた空間、休憩室とでも言うのか。
そこで腰を下ろし少し休憩していると、懐に入れた手のひらサイズの四角い機械が振動し始めた。
「な、なんだっ!?」
バーナード様から遠くいる相手と音声で連絡が取れる小型の機械だと言われ渡されたこの機械……嫌いだ。
何故連絡を取り合うためだけにこんなものを使わねばならない。連絡を取りたいのなら、伝書鳩で十分ではないかっと昔抗議したことがあったがバッサリと切られたな。
使い方がよく分からないため我がこれを使って連絡をとることはない。いつも特定の人物が嫌がらせの意味を込めてかけてくるのだ。
かけてきた通信相手の名前が表示されているでぃすぷれいにはロザリンドの五文字が。
「明日世界が滅ぶのか」
「なによっ、それーー! !叢笑えない冗談はやめてちょうだいっ!!」
通信に出てみれば、案の定甲高い声が頭の中に鳴り響き痛い。こいつと話すときはいつも頭痛に悩まされるのだ。
五月蠅い蠅だ。
「それで用はなんだ」
「あっ。そうよ、用があって通信したんだった」
「……切るぞ」
「ま、待ちなさいよ!」
本当にこいつは何がしたいのだ。全く理解できない。謎の生命体Rだ。
さっさとこんな不毛な会話切り上げて終いたいのだが、切るなと五月蠅いので仕方なく繋げたままにしておくとする。
「アナタ最近調子に乗ってるでしょっ!?」
「はぁ?」
また何を言い出すのだこのお子様は。
いつ、いかなる時に我が調子に乗ったと言うのだ。ただバーナード様の命に従い任務を着実にこなしているだけだ。それを奴は調子に乗っているとでも言いたいのか。
「とぼけんじゃないわよっ!!」
「どぼけてなどいない。貴様の勘違いだ」
「勘違いなんかじゃないわよ! アナタ。メシアの生き残りっての捕まえて調子に乗ってんのよっ!
だってメシアの生き残りと言えばバーナード様が何百年もかけて探し続けていたものなんだからっ
さてはそれを捉えて、バーナード様の正室になろうって魂胆ね!?」
……こやつの妄想能力は目を見張るものがあるな。
どうしたらそこまで話を大きくすることが出来るのだ。何故我がバーナード様の妻にならなければならない。
あのお方は使えるべき主であり、我のような若輩者がお傍で使えるなどなんで勿体ないことか。
と、いうことをロザリンドに伝えたところ
「そ、そうよね…。そんな姑息なマネを今更しなくても、もうすでにアナタはバーナード様の側室ポジをゲットしている」
まだ何か大きな勘違いをしているように見えるのは我の気のせいだろうか…。嫌な予感しかしないのだが。
通信端末の向こう側から聞こえるロザリンドの声はどんどん小さくなっていき、声が聞こえなくなってきている故障でもしたのか?
五月蠅いからと耳から離していた通信端末を耳へ近づけようとしたその時、
「ムラクモさーん」
不意に誰に後ろから肩を叩かれたのだ。
これは後から気づいたことだが、何かを察したロザリンドがこの時、通信遮断したようだ。本当に勘だけは良い女だ。
「ひゃぁぁぁ!!?」
「わぁっ!?」
不覚にも後ろにいる人物を幽霊だと勘違い…げふんげふんっ。怖がってなどいない。ただもう死んでいる幽霊とやらとはどう戦えばいいのか分からないから警戒していただけだ。
だから後ろにいる幽霊を殺そうと……。あっいや幽霊はもう死んでいるのだった。
ええい八つ裂きにしてくれるわぁぁっ、と驚いたふりをして際に出た二がこの声なのだ。
決して怖がってなどいないのだ、って我は誰に対して弁解しているのだ…?
「…ぁ、あぁ…ルシア様」
良かった…幽霊じゃなかった……って一安心している場合ではなかないっ!?
何故監禁し薬で眠らせていたはずのメシアの生き残りが、今我の目の前に立っているのだっ!!!? しかもちょっと頬を赤らめ嬉しそうな顔でっ。
そんな顔を我に向ける出ないっ馬鹿者がっ!!
「ご、ごめんなさい! 驚かせるつまりはなかったんです。ムラクモさんを見つけたからつい…」
奴の言動を見る限り、どうやら我が叢であるとゆうことはまだ気づかれていないようだ。良かった。本当に純粋で疑う事を知らぬ、愚か者なのだな。敵の領地に捕まっておきながら我を敵だと一切疑わないなど…。
何故だろう。こやつの純粋な瞳を見ていると胸の奥がきゅ〜うと締め付けられるように痛い。やはり何か悪い病気にでもなってしまったのだろうか…。
「…ってまたですねっ」
えへへと照れ笑うルシア。
なんの話だ、と最初はよく分からなかったが思い出した。あの美しい満月の夜の事を言っているのだろう。
あの夜の月は本当に綺麗だった。今まで見た月の中でも一番の月だった。
そしてあの月を見てからだ、我の調子が可笑しくなり始めたのは。
「そ、そうですね。たしか前にもこんなやり取りを…」
ここは相手に合わし適当に受け流しておくとしよう。
頃合いを見てまた気絶なり眠らせるなりして、監禁部屋に連れ戻すとしよう。
「あっ、こんなところで笑っている場合じゃ、なかったんだ!ムラクモさんっ」
「は、はいっ!」
と、考えていたのにこやつはな、なななななっなんなのだぁぁぁ!!!?
いっいきなり我の手をがっちり両手で包み握りしめ、真っ直ぐな瞳がすぐち、近くにっ!!
ま、まままままっ、まさかこのまませ、接吻をしようとでもいうのではないだろうなっ!!
まだ誰ともしたことのない、初めての接吻が……
「ここは危険です。一緒に逃げましょう!」
「へっ?」
思考が一時停止した。
「とにかく、一刻も早くここから逃げましょう!」
今起きているこの状況を理解しようと、何度も思考を巡らせるが一向に理解できそうにない。と、いうより無理だ。我には難問過ぎた。
メシアの生き残りは我の手を固く握りしめたまま、強引に引っ張りどんどん通路の奥へと進んで行く。
あぁ…待て…そっちは貴様を監禁していた部屋ではない。反対だ、戻れ、引き返せと心の中でつぶやくがその声はルシアには届かない。
どうして我は高揚しているのだろう。
何故、ルシアがここから連れ出してくれると思うとこんなにも 胸が高鳴るのだ 何故_?
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.10 )
- 日時: 2017/09/30 18:48
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: 7ZQQ1CTj)
我らの敵であるメシアの生き残り、ルシアに固く手を握りしめられあちらこちらへと椿のろうごくないを引っ張りまわされること数刻。
「この造り…まるで迷路だよ」
ぼそりとルシアが独り言をつぶやいた。壁に片手をついて大きく溜息をつく。その寂しげな背中を見ていると何故か胸の奥がきゅうぅと締め付けられるように痛くなる。
我はいったい何をしているのだろう_。
何が悲しくて敵に片手を掴まれ通路を走り回らなければいけないのだ。
こんな間抜けな姿、他の者に見られでもしたら……口封じしなければいけないではないか。
ただでさえ王が手駒が日に日に少なくなってきていると嘆いていらっしゃるというのに……。
だがこのまま奴の物憂げな背を見つめているだけでは駄目か_。
「そ、そうですね。敵からの侵入も脱出も困難な構造になっていますから……」
「そうなんですかっ!? このまま…進んでいたらいつか見張りの人に見つかっちゃいそうだな…」
「……」
あぁそうだな。このまま闇雲に走り続けるだけでは確実に誰かに見られるだろう。
そして我は貴様と見た者を口封じに殺さなければならないだろう。
殺るか。殺らないか。考えていた悶々と考えていたところ
「ッチ」
こやつはある意味勘が鋭いとでも言うのか、ただ闇雲に我を連れまわしているだけだと思っていたのに、椿の牢獄に勤める監守共が寝起きする部屋へとたどり着いたのだ。
「………」
「………」
部屋の中からは音が二人。話し声が聞こえてくる。
今は全員勤務時間のはず。そうかさぼり組と言うわけか。我を目の前にし、堂々とさぼるとは良い度胸。
その堕落した精神叩き直してくれよう! と腰に手をかけたところではっと気が付くそうだ、今の我はムタクモ。獲物(武器)を持たない丸腰の状態だった。
そしれ隣にはメシアの生き残りがいる。今は鎮まり耐える時か……後で覚えておれよ。お主ら。
出入り口の隅から隠れて、タバコを吸い楽しそうに雑談するあやつらの話に耳を傾ける。
「はぁー。やになっちゃうなー」
「だよなー。少ない給料しかくれないくせに、仕事は一日二十時間もさせられるんだもんなー」
「寝る事しかできねーよなー」
なんなのだ、こやつらの会話は! 聞いていれば先程から王への不満ばかりっ。休む時間があるだけでもありがたいと思わないか! 我になど気をゆっくり休める時間など早々ない。あればそれは奇跡、王の為になることで浪費するもの。
ドルファに入社したのなら己の持つ全てを王へ捧げるのは当然の事だろう。
「………」
「なぁ逃げ出さないか?」
「ばっ、お前そんなの誰かに聞かれたらどうするっ!? 即刻討ちきりだぞっ!!」
「大丈夫だって、今ここには俺たちしかいねぇーって」
残念だが此処にいるのは貴様らだけではないぞ。と言えるものなら言いたい。言ってしまったら最後、部屋が真っ赤な血で染まってしまうがな。
ほう逃げ出す算段か。我の前で堂々と、な。
ならば聞いてやろう。そしてその逃げ道を封じた上で貴様らの命を狩り取るとしようか。
入社したあの日、王の前で見せた忠義の証、あれは真っ赤の嘘だったその罪の花、我が摘み取ってくれよう。
……ふふふふふふふふふふふふふ。
「おれっあいつらから聞いたんだ。この椿の牢獄の何処かに隠し階段があってその先が外の世界につながってるって…」
「お、お前。あんな奴らの戯言を信じるのかよ!?」
なにっ隠し通路だとっ!? 何故あれの存在を貴様ら下っ端が知っているのだ! あれの存在は我とロックスの奴しか知らぬはずっ。
まさか、ロックスの奴が酒に酔って口を滑らせてたっ!? いや…我の前ではちゃらんぽらんだがやる時はやる男? だ、多分、きっと…な。
だからそれはあり得ない。それに看守長から聞いたというなら「あいつ」とは呼ばないだろう。そして「あいつら」と複数形で呼んでいることから犯人は複数人。
ふふっまさか脱走犯を捕まえるだけではなく裏切り者、密告者の情報を手に入れることができるとはな、めっけもんとはこのことか。
「………」
「っ!?」
驚愕の表情だ。すぐ近く隣にあったメシアの生き残りの瞳がやる気の炎が燃えているのだ。
こやつ隠し階段を見つけ出し、我を連れて此処から逃げ出すつもりだ。奴の瞳がそう語っている。
だがあそこへはそう簡単には辿り着けないだろう、だって隠し階段がある場所は……。
「…行くのですか?」
社交辞令というものだ。一応聞いておいてやろうというせめてもの慈悲というものだ。
だ、そう。ただの慈悲で聞いてやっただけだというのに何故だ。何故、口から出た声は震えか細い声になっている。
どうしてこんなにも胸が締め付けられる、どうしてこんなにも腕が震える。
震えをおさめようとルシアの手を離し腕を掴むが一向に震えはおさまらない。何故だ。何故なんだ。
自分が分からない。
どうして体の震えがおさまさらないのか。
どうしてメシアの生き残りのことを考えると こんなにも胸が苦しくなるのか。
全くわからなった。どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして_どうしてなんだ?
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.11 )
- 日時: 2017/10/08 08:33
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: IkQo2inh)
「…うん。みんなを探しに行かないと.
それにムラクモさんをこんな所に置いてなんていけないよ!」
「ッ!?」
真剣な瞳。純粋瞳。穢れを知らない瞳が我を真っ直ぐ見つめる。
やめろ。やめろ。やめてくれ。そんな綺麗な瞳で我を見るな。見ないでくれ。返り血で汚れ穢れてしまった我を見ないで。
身体が震える生まれたての小鹿のように小刻みに震え治まらない。何故だ。何故こんなにもこやつといると狂わされる。
嗚呼。顔が熱い。火照っているのか? それとも怒りで頭に血が上り思考が上手く働かないのか?
我は我が分からない。メシアの生き残りである貴様のことが分からない。
ぼぅと奴の瞳を見つめていると真剣な瞳が少し困惑した表情となる。
困った顔もまた可愛いのだな……っと、和んでいる場合ではなかった。
「ぁ…隠し階段は…あっちです」
なんでもいいとにかく誤魔化さなければと出した言葉がこれだった。捻り出した声も蚊でも飛んでいるのかと思うくらい小さなものだった。
驚愕だった。まさかここまで動揺させられていたとは。
「えぇっ!? ムラクモさん知ってるの!?」
余計な気でも使っているのか、はたまたただの阿呆なのか、メシア生き残りは間抜けな顔をし驚いている。
この状況で気がつかぬのはよほどの阿呆だ。それにこやつはそうとうのお人好し、ならば答えは前者であろうな。
だがしかし、せっかくの気遣い。ならば我も一応社交辞令としてひとつなにか言っておくとするか。
「ですがあそこは魔物の巣窟となっています。それでも…」
「それでもだよっ! 大丈夫、君のことは僕が護るから!!」
「ッ!?」
メシアの生き残りに「君のことは僕が護るから」と言われた瞬間、我の中にある何かが最高潮へ達した。自分では分からないがもしかしたら、頭から湯気が出ているかもしれない。そして顔はきっとゆでだこのように真っ赤なのであろうな。
敵に背を向けるとはなんてことだ、といつもなら言う所だが今回は仕方ない。メシアの生き残りに背を向け大きく深呼吸をし邪心を払い精神を正す。
「わっ、わかりました。……ですが私の仕事は人を守る事。貴方を守る事なんです。
互いを守るって事でいいですか?」
この言葉に嘘偽りなどない。真実。本当の気持ちだ。何故なら今ここでメシアの生き残りに死なれるのは非常によろしくない。王の野望を叶える為にはまだこやつには死なれては困る。だから我は命懸けでこやつを護る、護りたいそれだけだ。
「うんっ! よろしくねムラクモさん」
何も知らぬメシアの生き残りは我に対し眩しく、溢れんばかりの太陽のような笑顔を向ける。
幼子の頃からずっと日の当たらない日陰で生活していた我にとってその笑顔は眩しすぎた。もし我が陽の光に弱い吸血鬼として生を受けていたら、こやつの純真無垢な笑顔で灰となっていただろう。
「は、はいっ」
噛んだ。しかも裏返った。酷い声。返事だ。でもこれが捻り出せた精一杯の返答だった。
もう我の身も心もずたぼろだ。ぼろ雑巾のようだと言っても過言ではないだろう。まさか一度も戦闘せずにここまで我の体力を消耗させるとは可愛い顔をして恐ろしい奴だ。
こちらです。とメシアの生き残りを誘導する。隠し通路ある部屋まで。
椿牢獄最深部に位置する部屋。部屋の中には日本刀や昔の武将が着ていたとされる鎧兜や椿の掛け軸がかけられた特別仕様の部屋。
げすとるーむとも呼ばれ。この部屋は主に我らの王、バーナード様が此処へ視察に来られた時などに寝室として使われている。
バーナード様以外この部屋の立ち入りを禁止されている。王にだってぷらいべーとはある。独りでゆったりしたいときや、隠し事などもあるのだろう。我はまだそこまで王からの信頼を得ているわけではないからな。
「………」
部屋に入り込み書類などを片付ける時に使う机の後ろにかけられている椿の掛け軸をめくりあげる。
「…隠し階段だ」
ふとメシアの生き残りがそうつぶやいた。掛け軸の後ろにあるのは冷たい鉄の壁ではなく、暗闇で先の見えない深淵へと続く階段が隠れているのだ。
普段誰も近寄らない深淵から獣達の雄叫びが聞こえてくる。獣だけで人がいないのだから当然電機なども通っていない。暗闇の世界だ。
懐中電灯を忘れないようしなければな。あと替えの電池も。こんな暗闇我としては日常風景そのものだから別にどうということもない。だが後ろにはメシアの生き残りもいる。もしかすると奴は暗いのが苦手かもしれない。暗いと目が見えず事故死してしまうかもしれない。
…だから仕方なく、仕方なく我は懐中電灯と替えの電池を忘れずに持って行くことにするのだ。決して幽霊がいるかもしれないからなどという間抜けな理由ではないのだからな!
そういえば今日はいつも以上に、化け物達の声が五月蠅い。
どうやら相当腹を空かせているみたいだな。数百年ぶりに飯にありつけるちゃんすに嬉々としているということか、嘆かわしい。
「此処の魔物は今まで貴方が戦ってきた魔物とは比べ物にならないくらいに強いですよ。
気を引き締めて」
「うん。ムラクモさんもね」
「…はい」
やはりメシアの生き残りの意思は相変わらずのようだ。愚かだ。そのように先急いではいつか死ぬぞ。
ろくに戦場に立ったことのない若人。早死にする者が多い。
貴様の事は我が死んでも護る だから安心して後ろをついて来くるのだ ルシア。
深淵へと続く階段を下りてゆく。これは我も知らなかったこと、どうやら我らは何者かに後を付けられていたようだ。
我としたことが何をやっていたのだ。鼠一匹気がつかぬとは……そうだった、メシアの生き残りの言動に一喜一憂していたせいで周りのことなど気に留める余裕がなかったからだ。
「へぇ〜、おもろそうやったから後付けてみたら、なんや楽しそうな事になっとるなないの。くひひひっ」
我らを付けていたという黒い眼帯に出っ歯な男はニタニタと気色の悪い笑みを浮かべすきっぷるんるんと幼児の遠足のように階段を下りて行ったそうだ。
なんとふざけた男だろうか……地下で出くわしたらその身体に我を舐めるとどうなるか思い知らせてやろうではないか。
……ふふふ。そう考えるとある意味の所では楽しみではあるかもしれない。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.12 )
- 日時: 2017/10/12 11:48
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: nCjVBvXr)
それは地下の深淵と続く階段を下りてすぐの事だ。
「はぁぁぁぁ!!」
「ふんっ!」
—ゲシャァァァァ!!
躊躇なく地下に住まう化け物達が我らに襲い掛かって来たのは。ならば我も躊躇なく斬り裂くとしようか化け物達を真っ二つに。
知識のない。食欲しかない獣達は学習などしない。先陣を切った者がどんどん斬り殺されているというのに、数だけで押し襲い掛かってくる。愚かな。それでも我が王の僕だとでも言うのか。なんと愚かで無駄な物たちだ。ならばせめてその命。我が鉈の錆にしてくれよう。
「はぁっ!」
—ブシャァァ!!
バッサバッサと目の前に、左右に、後ろに、同時に、現れる化け物達を鉈で斬下し槍で貫く。あぁつまらぬ。こやつら相手では童の遊戯でしかない。退屈過ぎて退屈しのぎにもならない。目の前は一撃で血の海となり、一瞬で辺りは肉塊の山となる。
「はぁ…はぁ…」
我に背中を預ける形で戦っていたメシアの生き残りの息が荒い。もうばてたか。この程度の準備運動にもならない、戦い程度で。
「大丈夫ですかっ?」
「うっ、うん」
振り返り一応聞いてみると奴の顔は全然大丈夫そうではなかった。疲労困ぱいといった表情で苦笑い。我に心配をかけまいとでもしているのか? それは馬鹿にされたものだな。貴様にとって我という存在は——
「こちらにっ!」
ムカつきメシアの生き残りの腕を掴んでいた。そして三字に横へ進み壁に紛れて隠してあったすいっちを起動させ、隣の壁を横へ動かせ隠し通路を出現させる。
化け物達がまた襲い掛かってくる前にメシアの生き残りを連れ中へ入り、壁を移動させ通路を塞ぐ。壁の向こう側からは化け物達の悔しそうな鳴き声が木霊している。
地下も上同様にからくりだらけだ。来たことはあまりなくとも、何処にどんなものがあるのか把握している。設計図を見れば誰だって一目瞭然のことであるがな。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.13 )
- 日時: 2017/10/13 08:27
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: nj0cflBm)
「隠し階段の次は…隠し壁……」
メシアの生き残りは今只の壁へと戻った隠し扉をまるで隣人の邸へ訪ねて来た客のようにこつこつとのっくし材質を確かめているようだ。こつこつと叩くたびに首を左右に傾げながら。そんな不思議な物なのか、ずっとからくりがある生活をしていた我には分からない感覚だった。不思議そうな顔で首を傾げるメシアの生き残りに「はい。此処は最高技術を持ったからくり職人達に造らせた、からくり牢獄なんです」とからくりのことを説明してやった。メシアの生き残りから出てきた言葉は「へぇ…」となんとも素っ気ない物。初めて見る物だ。それも致し方ない物か。—少々つまらなくも感じるが。
いや今はそんなくだらない事に現を抜かしている場合ではない。一刻も早く此処ここから逃げ出さねば……知識のない化け物達だげ、食欲は旺盛だ。どんな姑息な手段を使って襲いかかってくるか知れたものではない。メシアの生き残りの腕を掴み「こちらですっ」と次のからくりの仕掛けがある場所へ移動しようとしたときだった——腹部に強烈な重い一撃、まるで鉄球を当てられたかのような激痛を感じたのは。
「ごふっ」と喉の奥から腹の奥の方から血が溢れ吐血した。横にいるメシアの生き残りの「ムラクモさんっ!?」我を心配する声が聞こえる。敵に同情をかけられるなどなんと惨めな。ふがいなき事だ。吐血し膝までついてしまうとは……こんな醜態バーナード様へとても見せられたものではない。汚名は返上するもの。足元に落ちているのは腐りに繋がれた分銅か……ならば敵は一人しかいぬ——ロックス。「ヒドイやないか〜、ムラクモちゃ〜ん」鎖の先を持つものに鋭い眼光を向ける。けたけた嘲り左手で鎌を持ち右手で繋がれた鎖をくるくると手持ち無沙汰のように振り回している。
「わしという男が居ながら、他の男に浮気するやなんて」
浮気だとなんの話だ、と奴の視線の先を見つめればそれはメシアの生き残りの事だった。そうか他の男と駆け落ちしようとしていることが気に食わないのか。……ふふ。なんと幼稚で独占欲の強い男だ。我の心などとうの昔に王へ捧げたというのに。ぺっと唾を吐き捨てたつもりがそれは赤黒い血だった。この体は我が思っている以上に先の一撃でだめーじを受けていたようだ。——瞼を閉じた。そして無理やり抑え込んでいるもの殺意の奔流。臓腑を丸ごと支配するが如きそれらを一時的に解き放った。
心地よい感覚だ。瞼の裏側で微かに見える、轟々とした流れとうねり。毛細血管の幻が脳に見せつけてくるのは、血流のいめーじ。肉塊の夢想。次々に思い浮かぶいめーじが、指を、脳を、心臓を、全身全てを震わせて——あぁ——殺したくなってくる。
「貴方…何者ですか?」
「はぁ?わしはお前なんかに用はないっちゅーねん」
「奴の名はロックス。此処の監守だ」
「そしてムラクモちゃんの彼氏やなっ」
「えぇぇぇ!!」
なにか聞こえる。瞼を閉じた向こう側の世界でなにか聞こえる。話し声、男が二人。驚くメシアの生き残りの声といやらしく笑うロックスの声だ。人を疑うという事を知らないメシアの生き残りがまた何か変な勘違いをしているような気がするがそんな事我には関係のない話。我のすることなんていつの時代もどんな時でも変わらない。
「そこをどいてください」
「いややと、ゆうたら?」
「……殺す」
「くひひっ、ムラクモちゃんはせっかちやの〜」
鉈の切っ先をロックスに向ける。我が獲物は欲しているのだ、奴の生き血を。ならばそれを用意してやるのが持ち主の役目。メシアの生き残りにも剣を構え直す様に伝え、殺る気になったロックスも右手に掴んでいた鎖を手持ち無沙汰な感じから八の字に回し、いつでもその先に下げられている重い文堂から重い一撃を放てるように。「まぁ、ええわ。わしも最近体がなまってきとったから、ええ運動になるわ。死んでも恨まんといてなぁ!!」躊躇なく襲いかかってくる奴に向かって我はあくまでもムラクモとして答えた「それはこちらのセリフです!」—と。
やっと始まる。血沸き踊る闘いが。やっと潤すことが出来る毎年ずっと乾き続け砂漠のようになってしまった我が喉を——我が獲物を—潤すことが出来る。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.14 )
- 日時: 2017/10/13 09:09
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: nj0cflBm)
「ほらほら、どないでっか!?」不規則に乱暴に鎖を振り回すロックス。「うわっ!?」飛んでくる分銅をかわすのでやっとのメシアの生き残りと「くっ」やはりあの一撃が尾を引いているのか、脳髄からの指令を受け取った体が指令通りに動くのにこんま二秒遅れる。それが致命的たった。本来ならばかわすなど当たり前、三分もあればこんなロックス程度すぐにでも一片の欠片も残さず粉砕してくれるものだというのに……こんま二秒体の動きが遅れるだけでかわせるものがかわせず攻撃を受けてしまいそのだめーじが蓄積され疲労となる。悪循環だ。
メシアの生き残りも分銅をよけるだけで精一杯といったところか。青ざめた顔から大量の冷や汗が流れている。本調子ではない我と役立たずのメシアの生き残り、絶好調であり我らを甚振ることを楽しんでいる。気に食わない。あぁ胸くそ悪い吐きそうだ。このような塵屑に弄ばれるなど憤懣やる方ない思いとはこのことをいうのだろうな。「スキありやっ!」大幅な体力を消耗し、疲れ切った我らを見て勝機を感じたのだろう。ロックスは右腕を大きく振り上げ鎖で繋がられた分銅も大きく飛び上がり「「…あれっ?」」絡まった。天井を覆いつくすようにいくつも配管された鉄ぱいぷに上手い事くるくると絡みほどけなくなったようだ。「ちょっ、ちょっと待ってな…今取るさかいに」ロックス両手で力いっぱい鎖を引っ張り鉄ぱいぷごと絡まった鎖を解こうと悪戦苦闘しているようだが、複雑に絡み合ったそれはもうそう簡単には解けない。
溜息が出るほどに阿呆な男だ。そっと静かにロックスも背後に立ち「え…? ムラクモちゃんそれはないわ〜。さすがに…卑怯やで? な? な?」とうぃんくをしてくるロックスに苛立ちを感じ「…待つわけないだろっ!!」鉈で奴の背を真っ二つに切り裂いた。「ムギャーー!!!」と響き渡るロックスの断末魔。あぁ——なんて耳障りな声なんだ。
「む、叢ちゃん……」まだ息が合ったか本当に黒光りする虫並みの生命力と気持ち悪さを持った男だな。蔑む視線を足元にすがり這いつくばる死にぞこないの屍に向ける。
「な、なぁ……このままじゃアカン」
「……なにがだ」
こんな死にぞこないの屍の話など聞いてやる必要性もなにもないのだが、なぜかその時我は止めを刺せなかった。話を聞いてやることにしたのだ。どうゆう風の吹き回しなのか自分でも分からなかった。只なんとなく、まだこやつの話を聞いていたかったのだ。
「ドルファフィーリング……はな……バーナード……は……叢ちゃんが思っとる……ような凄い男やない」
なにを—なにを言っているのだ、この屍は。我らの王。バーナード様を愚弄する言葉を吐くなどっ。槍を振り上げる。狙いは死にぞこないの屍の頭上。「——思い出すんや! 自分が何者だったのかを」ぐちゃり。元同僚だった男の最期はぐちゃり。頭部を槍で串刺しにされ悲鳴も断末魔も上げる間もなく一瞬の死。痛みも苦しみもない死。—即死。
ぐちゃり。ぐちゃり。ぐちゃり。なんども奴の体に槍を突き刺した。最初の一撃で死んでいたことは知っている。手ごたえがあったから、妄言しか吐かぬ口がやっと閉じたから、いやらしいものを見る瞳から生の光が消えたから——もうこと切れているのはわかっていた。それでも我は槍を突き刺し続けた。骨が砕け肉が途切れない贓物が破裂する。生臭い匂い。鉄の臭い。嫌な音。我の中に眠る黒き獣がドラゴンネレイドとしての本能が満足するまでこの無意味な虐殺は続けられた。椿の牢獄看守長ロックスと呼ばれた男が只の肉塊となるまで続けられた。
我は叢。この世界を支配する王 バーナード様の手駒 紅き鎧の騎士と呼ばれる者。それ以外の何物でもない。
-fan-