複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.6 )
- 日時: 2017/09/19 17:11
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: eK41k92p)
「アンタも来たんだ?」
エフォールに案内されるまま部屋に入ると最初に聞こえたのは子供の皮肉。声の主は同然ユウだ。
ユウの向かい側には、だいぶ待たせたしまった事が癪に障ったのか、ザンクが苛立ちを露わにして今にも暴れ出しそうな勢いだ。
「待たせてすまない」
対面上謝っておく。詫びの言葉一つとってもいれるか、いれないかで大きな違いがでてくるからな。
そもそも他人なぞに興味がないユウは「あっそ」と軽く受け流す。短期で血の気の多いザンクは
「オレ様は待つのが嫌いなんだ。次遅れたらどうなるかわかってんだろうなぁ?」
と喧嘩を売ってくる。そんなもの買う愚か者が何処にいる。
「なにそれ? 自慢?」
「あぁ?」
此処にいた。案外すぐ傍に居た者だ。愚か者が二人も。
こうなることが解っていた方エフォールも我を呼んだのだ。やめろと愚かな二人に言う。ちっと舌打ちをして二人は背中合わせにし真逆の方向を向き合った。……まったくお子様の相手は疲れるだけだ。
ザンクとユウの二人は顔を合わせるとすぐに喧嘩を始めてしまうところがある。
荒くれ者と皮肉屋。正反対で似た者同士の二人では馬が合わないのだろう。放っておけば勝手に潰し合だろう。だがそれは王の望むところではない。
だから仕方なく我が仲裁する羽目になるのだ。とても面倒くさいことだが、王の為ならば致し方無い。
はぁ…とため息をつき下を向くと、メシアの生き残り寝顔が…綺麗だ。雄に対してこの言葉を使うのはあまり適切ではないのだろうか……でも、とても綺麗な寝顔だ。
「殺?」
「い、いや、なんでもないっ」
い、いかん。エフォールに様子をがおかしい事を勘づかれてしまった。
綺麗な寝顔と言えど、奴は敵! メシアの生き残りは殺す対象!
緊縛とした雰囲気でよからぬことを考えているなど、緊張感が足りぬ証拠だ。我も精進せねばな。
「ギャハハハッ!まさか、こんなに簡単に捕まえられるとわなぁ!!」
嘲るザンク。奴の笑い声は頭の中がキーンとしてとても耳障りな声だ。
「黙れ、ザンク。起きたらどうするつもりだ?」
そうだ、ユウの言う通りだ。こんなに綺麗で素敵な寝顔が見られなくなったらどうしてくれよう……ではなくて、だっ!
メシアの生き残りが起きて、今の我の姿を見られたらどうしてくれようか。正体がばれるようなことになれば、本当に殺さなければいけないことになってしまうではないかっ!
いやいや…そうではなくって王の計画が台無しになってしまうではないか! そう。そうゆことなのだっ。
「あぁ? 起きたなら殺せばいいだけだろぉ!?」
ザンクは高らかに笑う。確かにそうだな。いつもならザンクと同意見だ。だが今回は駄目だ。
メシアの生き残りに限ってはそれは許されないのだ。
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.7 )
- 日時: 2017/09/16 13:56
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: yrys6jLW)
「…殺殺殺殺殺」
繰り返し同じ言葉を言うエフォール。我には分かる怒っている。隠す気のない殺気だだだ漏れだ。
もちろんその殺気の矛先は
「あ゛?」
血が足りず喉が渇いた獣。ザンクに対してだ。
イライラとした表情でエフォールを睨み付ける。それに同調しユウもまた
「ホントッ、愚か者が一人いるダケで困るんダケど」
「なんだと…ユウ」
見下したように睨み付け人を小馬鹿にしたような口調でザンクに喧嘩を売った。
短期で単純な奴らだ。喧嘩を売られれば簡単に買い。
場所も時も関係なく喧嘩、いやただの殺し合いを始め潰し合う。
「王に言われているダロ。メシアの生き残りはまだ殺すなと」
「知らねえなー! オレさまはオレの殺したい奴を殺したい殺すだけだぜっギャハハハハッ!!」
愚か者が。
我らの肉体もそれに流れる血も魂も全ては王のもの。バーナード様に捧げた、王に使える駒だ。
それが王の命に背き己の意思で行動するなど笑止千万。
「殺殺殺殺殺殺殺…」
「つーか、エフォール!殺殺うるせぇ!!」
「…殺」
緊迫とした空気、一触即発。誰かが動けば、試合のごんぐが鳴らされるだろう。
我、そして眠るメシアの生き残り、椿の牢獄で働く従業員もろとも塵となるだろう。
「………やめろ」
「「「ッ」」」
貴様らが勝手に潰し合い、殺し合い。誰が巻き込まれ、誰が負け死のうが興味ない。
だがメシアの生き残り。ルシアを巻き込んで行うと言うのならば、我も参戦しよう。主ら全員、天へも地へも行けず永遠に現世を彷徨う生き地獄を味合わせてくれよう。
殺気に満ちた狂気で威圧すると、三人は大人しくなってくれた。そうか、分かればいいのだ。我とて無駄な動力を使いたくはないからな。
空気も鎮まった。ならばここはひとつ話の内容を変えるべきか。昔このようなことが起こった時、紫龍様は話題を変えることで指揮をとられていた。
話題…か。闘いしかしてこなかった我に、この場に適した話題など振れるのか…?
こむ、そうだ。コロシアムの話はどうだろう。ドルファが経営二大娯楽施設のカジノとコロシアム。コロシアムはユウの管理下。そしてザンク、エフォールのお気に入りの場所。うむ、きっとこれが一番の話題と言えよう。
「ユウ」
「ナニ?」
せっかくの殺し合いを邪魔されたことに不機嫌な表情のユウに
「コロシアムの景品はどうなった」
に景品の話を振ってみたのだが
「ちゃんと用意しましたケド」
不機嫌なままだった。なにか間違えたのか。
いや間違えてはいないはずだ。ザンクとエフォールの瞳が輝いている。
景品がなにに決まったのか興味深々と言った顔だ。
「殺殺殺殺殺殺殺」
「誰だって? あの競馬大会で荒稼ぎしてた雌豚だよ」
競馬大会で荒稼ぎしていた雌豚だと……?
なぜ馬のれーす会場で豚が優勝する。いや出来たのだ? 馬ではなく豚のれーすでも行われていたのか? それの優勝者が雌の豚?
もうひとつ気になるのは何故わざわざ雌豚と呼かということだ。豚は豚だろう。雌も雄もいるが所詮豚は豚。
雄でも雌でも食用肉であることに変わりはない。肉に何故一々雄だの雌だのつけて呼ぶのか我には全く理解できないことだった。
「あーーー!! 殺したりねぇーー!! オレ様もコロシアムで殺しまくりたいぜぇ! ギャハハハッ!」
豚のことを考えていると、突然ザンクとが発狂した。
気持ちは分からないでもない。この症状はドラゴンネレイドなら皆起こるもの、無性に血を浴びたくなる時があり、喉が無性に乾いてしかなのない夜が訪れるのだ。。
我はバーナード様が用意してくださった、血液をパックしたものを飲むことで衝動を抑えるようにしている。が、見る限りザンクは欲望のまま狩りとった新鮮な血で喉を潤しているようだがな。
「ふんっ、ボクはアンタみたいに遊びでやっているわけじゃないんだケド」
「殺殺殺」
「あぁ゛? オレ様に命令する気かぁ? 雑魚ふぜいがぁぁぁ!!」
「ボクと殺ろうっての」
「殺!」
またこうなるのか、これで何回目だ貴様ら!
一触即発の空気、三人共いつでも戦闘出来るように身を構えて、今か今かと待ち構えている。
本当に手間のかかる同僚たちだ。血の気が多いことはいいことだと思う。が、多すぎて他人に迷惑をかけるのは好かん。
どうしても戦いたいと言うのならば、我がいつだって相手をしてやると言っているのに……何故誰も我には仕掛けて来ないのだっ!!
と、いかんっ、放しがずれてしまった。まずはこの場を納めなければ…
「…やめろ」
「「「…叢」」」
三人は武器から手を離した。ひと段落か。これで少しは大人しくしておくだろう。
それにしても……と寝具の上に眠るメシアの生き残り、ルシアに視線を向ける。
綺麗な寝顔。見ているだけでこれまでの苦労がすべて水に流されていくような癒され感。こやつの寝顔を見ていると、胸の中にあるざわざわがなくなり心地良い気分になる。
「殺?」
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.8 )
- 日時: 2017/09/19 16:57
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: eK41k92p)
「殺?」
「ああ゛」
「エフォールがナニカを気にするなんて珍しい」
…確かに。いや一緒になって納得している場合ではないっ。
この場に居る誰よりも勘が鋭いエフォールのことだ。我が脱線しているのを見抜いているのだろう。
自分自身でも何を考えているのかよく分からん。仕事に支障をきたすのはよくないと、人に言える立場でないのは我の方であったか。
軽く首を振り頭の中を整理する。
我の仕事はなんだ? 目の前に横たわるメシアの生き残りが逃げないように見張る事。
王にあだなす若葉なら早急に摘み取らねばならぬ。気持ち? 意思など我には存在せぬ。我は叢。
—般若の面をつけた紅き鎧の騎士、叢なのだから。
「…ふぅ」
「殺殺殺殺」
礼を言うぞ、エフォール。貴様のおかげて整理がついた。これでもう大丈夫だ。
三人に顔を向け解散するときに言ういつもの台詞をはく。
「休憩は終わりだ。王の為にその身を粉にして働け」
舌打ちし睨み付け不機嫌極まりないザンクを見てさらに不機嫌そうな顔をするユウとエフォール。
我らの仲は最悪。仲良しこよしなどありえない。だが、戦場の上では背中を任せられる心強き見方だと我は思う。やつらはそうは思っていないようだが…な。
「これで…この部屋にはいる者は……」
我と横たわるメシアの生き残りだけ。
自然と視線は下に向く。
「スー」
何度見ても、見惚れてしまいそうな美しく綺麗な寝顔だ。
「………ッ我は何をしているのだ!?
自分でもはっとする。
気づけばルシアの……いや、メシアの生き残りの頬に手を添えていたのだ。
「……」
よかった…まだ寝ている。起きてはいないようだ。
もし起きていて我の姿を見られていたら……考えただけで不快な気持ちになる。
敵相手に変な感情を起こすなど、何を考えているのだ……やはり変な病気にかかってしまったのだろうか……頭痛がするようだ。
「少し外に出て新鮮な空気でも吸うとするか」
重く痛い頭を抱え、頑丈そうに見えるが経費の都合で張りぼてで作られたドアを開らき、新鮮な空気を求めて部屋の外に出て行った。
—この時、我は知らなかった。まさか、メシアの生き残りがもう目覚めていて我らの会話を盗み聞きしていたとは。