複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.9 )
- 日時: 2017/09/26 14:48
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: 6/JY12oM)
メシアの生き残りであるルシアを監禁した部屋から出た後、廊下に長椅子が均等に置かれた空間、休憩室とでも言うのか。
そこで腰を下ろし少し休憩していると、懐に入れた手のひらサイズの四角い機械が振動し始めた。
「な、なんだっ!?」
バーナード様から遠くいる相手と音声で連絡が取れる小型の機械だと言われ渡されたこの機械……嫌いだ。
何故連絡を取り合うためだけにこんなものを使わねばならない。連絡を取りたいのなら、伝書鳩で十分ではないかっと昔抗議したことがあったがバッサリと切られたな。
使い方がよく分からないため我がこれを使って連絡をとることはない。いつも特定の人物が嫌がらせの意味を込めてかけてくるのだ。
かけてきた通信相手の名前が表示されているでぃすぷれいにはロザリンドの五文字が。
「明日世界が滅ぶのか」
「なによっ、それーー! !叢笑えない冗談はやめてちょうだいっ!!」
通信に出てみれば、案の定甲高い声が頭の中に鳴り響き痛い。こいつと話すときはいつも頭痛に悩まされるのだ。
五月蠅い蠅だ。
「それで用はなんだ」
「あっ。そうよ、用があって通信したんだった」
「……切るぞ」
「ま、待ちなさいよ!」
本当にこいつは何がしたいのだ。全く理解できない。謎の生命体Rだ。
さっさとこんな不毛な会話切り上げて終いたいのだが、切るなと五月蠅いので仕方なく繋げたままにしておくとする。
「アナタ最近調子に乗ってるでしょっ!?」
「はぁ?」
また何を言い出すのだこのお子様は。
いつ、いかなる時に我が調子に乗ったと言うのだ。ただバーナード様の命に従い任務を着実にこなしているだけだ。それを奴は調子に乗っているとでも言いたいのか。
「とぼけんじゃないわよっ!!」
「どぼけてなどいない。貴様の勘違いだ」
「勘違いなんかじゃないわよ! アナタ。メシアの生き残りっての捕まえて調子に乗ってんのよっ!
だってメシアの生き残りと言えばバーナード様が何百年もかけて探し続けていたものなんだからっ
さてはそれを捉えて、バーナード様の正室になろうって魂胆ね!?」
……こやつの妄想能力は目を見張るものがあるな。
どうしたらそこまで話を大きくすることが出来るのだ。何故我がバーナード様の妻にならなければならない。
あのお方は使えるべき主であり、我のような若輩者がお傍で使えるなどなんで勿体ないことか。
と、いうことをロザリンドに伝えたところ
「そ、そうよね…。そんな姑息なマネを今更しなくても、もうすでにアナタはバーナード様の側室ポジをゲットしている」
まだ何か大きな勘違いをしているように見えるのは我の気のせいだろうか…。嫌な予感しかしないのだが。
通信端末の向こう側から聞こえるロザリンドの声はどんどん小さくなっていき、声が聞こえなくなってきている故障でもしたのか?
五月蠅いからと耳から離していた通信端末を耳へ近づけようとしたその時、
「ムラクモさーん」
不意に誰に後ろから肩を叩かれたのだ。
これは後から気づいたことだが、何かを察したロザリンドがこの時、通信遮断したようだ。本当に勘だけは良い女だ。
「ひゃぁぁぁ!!?」
「わぁっ!?」
不覚にも後ろにいる人物を幽霊だと勘違い…げふんげふんっ。怖がってなどいない。ただもう死んでいる幽霊とやらとはどう戦えばいいのか分からないから警戒していただけだ。
だから後ろにいる幽霊を殺そうと……。あっいや幽霊はもう死んでいるのだった。
ええい八つ裂きにしてくれるわぁぁっ、と驚いたふりをして際に出た二がこの声なのだ。
決して怖がってなどいないのだ、って我は誰に対して弁解しているのだ…?
「…ぁ、あぁ…ルシア様」
良かった…幽霊じゃなかった……って一安心している場合ではなかないっ!?
何故監禁し薬で眠らせていたはずのメシアの生き残りが、今我の目の前に立っているのだっ!!!? しかもちょっと頬を赤らめ嬉しそうな顔でっ。
そんな顔を我に向ける出ないっ馬鹿者がっ!!
「ご、ごめんなさい! 驚かせるつまりはなかったんです。ムラクモさんを見つけたからつい…」
奴の言動を見る限り、どうやら我が叢であるとゆうことはまだ気づかれていないようだ。良かった。本当に純粋で疑う事を知らぬ、愚か者なのだな。敵の領地に捕まっておきながら我を敵だと一切疑わないなど…。
何故だろう。こやつの純粋な瞳を見ていると胸の奥がきゅ〜うと締め付けられるように痛い。やはり何か悪い病気にでもなってしまったのだろうか…。
「…ってまたですねっ」
えへへと照れ笑うルシア。
なんの話だ、と最初はよく分からなかったが思い出した。あの美しい満月の夜の事を言っているのだろう。
あの夜の月は本当に綺麗だった。今まで見た月の中でも一番の月だった。
そしてあの月を見てからだ、我の調子が可笑しくなり始めたのは。
「そ、そうですね。たしか前にもこんなやり取りを…」
ここは相手に合わし適当に受け流しておくとしよう。
頃合いを見てまた気絶なり眠らせるなりして、監禁部屋に連れ戻すとしよう。
「あっ、こんなところで笑っている場合じゃ、なかったんだ!ムラクモさんっ」
「は、はいっ!」
と、考えていたのにこやつはな、なななななっなんなのだぁぁぁ!!!?
いっいきなり我の手をがっちり両手で包み握りしめ、真っ直ぐな瞳がすぐち、近くにっ!!
ま、まままままっ、まさかこのまませ、接吻をしようとでもいうのではないだろうなっ!!
まだ誰ともしたことのない、初めての接吻が……
「ここは危険です。一緒に逃げましょう!」
「へっ?」
思考が一時停止した。
「とにかく、一刻も早くここから逃げましょう!」
今起きているこの状況を理解しようと、何度も思考を巡らせるが一向に理解できそうにない。と、いうより無理だ。我には難問過ぎた。
メシアの生き残りは我の手を固く握りしめたまま、強引に引っ張りどんどん通路の奥へと進んで行く。
あぁ…待て…そっちは貴様を監禁していた部屋ではない。反対だ、戻れ、引き返せと心の中でつぶやくがその声はルシアには届かない。
どうして我は高揚しているのだろう。
何故、ルシアがここから連れ出してくれると思うとこんなにも 胸が高鳴るのだ 何故_?